
虫歯かな?って思って歯医者に行ったら勝手にたくさん削られた!!たいして痛くもなかったのに。ひどい!削り過ぎ!!
と、治療の後にびっくりしたり怒りを感じたりしている方、いらっしゃるかと思います。
しかし、

歯医者は決してわざと大きく削っている訳ではありません。削るときは理由があるのです。
今回は、「歯医者で歯を削られすぎた問題」についてです。
なぜ歯医者は大して痛くもない歯を大きく削らなければならないのかわかりやすくお伝えいたします!
虫歯の原因は細菌!歯の表面の虫歯と進んだ虫歯では違いがある!

まずは、そもそも歯医者はどういう目的で歯を削るのか、そこのところを少し詳しく説明しますね~!
ちょっと難しくなりますが、まずは、歯や虫歯(う蝕)のそもそものお話を少し。
「歯」とは?「虫歯」とは?

そもそも「歯」ってどんな作りをしているのでしょう?
歯は、エナメル質と象牙質という2種類のパーツ(組織)から構成されています。
エナメル質は、歯の表面をコーティングするように存在しています。歯は「噛む」、という強い力に耐えるため体の中で最も硬い作りになっています
成分は、ほとんどがリン酸カルシウムなどのミネラルでほぼ構成されています。
象牙質はエナメル質より内部にあります。
エナメル質より柔らかく、ミネラル以外の成分も(コラーゲンやたんぱく、水分)20%ほど含まれています。

虫歯(う蝕)というのは細菌が酸を出して歯のミネラル成分を溶かす現象のことを指します。
虫歯はストレプトコッカスミュータンス、という細菌が砂糖(スクロース)を材料にして酸をだし、これがミネラルを溶かす事によって生じます。
虫歯に溶かされた歯は柔らかくボロボロとしており、その中にたくさん虫歯菌が繁殖しています。

エナメル質でとどまった虫歯と象牙質まで進んだ虫歯では、虫歯への対応法が変わってきます。
①エナメル質の虫歯(う蝕)
虫歯が表面のエナメル質にとどまっていて象牙質まで到達していない段階の虫歯は初期う蝕といいます。

初期う蝕の場合は削らなくても済む場合があります。
エナメル質はほぼミネラルだけで構成されているので、エナメル質部分のミネラルが溶けだしてしまっても、虫歯菌を歯磨きなどである程度取り除き、そしてそこに唾液などを介して新しいミネラルが供給されればまた復活する場合が多いからです。

これを再石灰化といいます。
このように、実はエナメル質の層で虫歯がとどまっていればまだ戻る可能性があるのです。

エナメル質の層の虫歯でも大きい場合は象牙質まで進んだ虫歯と同様に処置が必要になってくることもあります。
しかし、、悲しいかなそのまま虫歯菌が奥まで進行してしまうと象牙質に到達してしまうと、虫歯はまた新たな進み方をします。
②象牙質の虫歯(う蝕)

象牙質はエナメル質と異なって、コラーゲンやたんぱく質などがあるために、エナメル質と比較して虫歯菌の酸の攻撃に対して弱くなっています。
虫歯菌によってミネラルが出て行ってしまったら、コラーゲンやたんぱく質の部分はそのまま保たれないので柔らかく崩れてしまい、もう元に戻らない状態になります。
象牙質部分のミネラルが抜けてしまって柔らかく、ボロボロに崩れてしまった状態になった象牙質を軟化象牙質といいます。
軟化象牙質は硬さや色にいろいろなバリエーションがあって、白っぽくお豆腐のように柔らかいものもあれば、黒く硬い(といっても元あった象牙質よりはやわらかい)状態のものもあります。

虫歯に侵され、軟化象牙質のある歯の中は更に虫歯菌が増殖しやすい温床となっています。
大きく削られると感じられる理由その1:入口(エナメル質)のところの虫歯が小さくても中で虫歯が大きく広がってる!!

この、象牙質まで広がっている虫歯は、「入り口は小さいけれど中で広がっている」ように見えるものが多いです。これが、「小さく見える虫歯なのに大きく削られた」という印象を与える一因のように思います。
象牙質はエナメル質と比較して虫歯菌の酸の攻撃に弱いため、エナメル質を通ってきた虫歯菌の空けた穴がほんのちょっとだったとしても、虫歯菌が象牙質に届いたとたん、バーッと虫歯菌が広がっている場合があります。

見た目には歯の形を保っているのに、エナメル質の下は虫歯が広がっていて、中ががらんどうになっていることも虫歯治療をしていたらよく見かけます。
(というかほぼすべてそんな感じ。)
虫歯はぱっと見た目ではわからないのです。

でも、ボロボロの象牙質?の虫歯になっているところだけ取ったらいいんじゃないの?明らか硬い所削っているような気がするんだけど。
柔らかい、実はそれだけでは済まないんです…。
実は、この「軟化象牙質」だけ取り除いても虫歯を治療したとは言えないんです。
大きく削られたと感じる理由その②:軟化象牙質のところだけを取り除いたら虫歯治療は完了?-答えはNo。虫歯菌はまだボロボロになっていない部分にも浸蝕している!

虫歯菌は柔らかくボロボロになっている軟化象牙質のところにしかいないのか?と言ったら答えはNoです。
虫歯菌は奥へ奥へと進んでいきます。
今は硬い象牙質のところにも付着し、象牙細管という象牙質の奥の神経のほうまでつながっている管の隙間伝いに少しずつ奥へと進んでいきます。
なので、硬い象牙質でも、柔らかい軟化象牙質と接している所は菌が感染していたら、その部分までしっかり取り除いてあげないと結局また虫歯が進行してしまうのです。
歯を削る削らないの見極めは?虫歯の染色液を使用して決めていることが多いです。

削らないといけないのはわかった。けど、どうやって虫歯菌がいている、いていないを判断して歯の部分を取り除くの?

以前は手の感覚で柔らかいところと柔らかくないところを察知しながら取り除いたりしていましたが、今は虫歯検知液、という虫歯を染め出す液を使って取り除くことが多いです。
虫歯検知液は、虫歯が感染している象牙質は構造が壊れており健全と比べて染色液で染まりやすい性質を利用して、虫歯菌のいる感染象牙質だけを染め出すように調節された液体です。
このように、虫歯の部位にかけると虫歯に侵食された部分だけが赤く染まります。(青い検知液もあります。)

現在はこういうう蝕検知液を使いながら虫歯菌のいる部分を取り除いている歯医者さんが大半です。不必要に削っているわけではありませんのでご安心ください!
このように、虫歯は「思ったより大きく削られちゃった!」と思っていても、削る理由があって削ることが大半なのです。
痛くなってから行くと、このように大きく削らないと行けない場合も出てきますし、神経の治療も必要になると、回数もかかります。
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できるだけ削る量が少なくて済むようになるためにも、何もないときでも検診に行ったり、お家での虫歯ケアをしっかりと行いましょう!
少しでもこの情報がお役に立てれば幸いです!!