子供の歯を強くするにはフッ素を、ってよく聞くじゃない?じゃ大人には効果ないの?私大人だけど今でも虫歯できやすいし、何とかしたいんだけど…。
フッ素=子供のイメージが強くて、大人には効果ないのかな?
と思っているそこのあなた
ちょーっと待った!そんなことないんです。
実はちゃんと大人にも虫歯(う蝕)予防に効果があるんです。
今日はそんな知っているようで知らないフッ素についてわかりやすくズバっと解説しちゃいますよー。
最新の、大人虫歯予防のための高濃度フッ素歯磨剤の今についても触れていきたいと思います。
※ここではなじみのある言葉、「フッ素」と書いていますが、正確には「フッ化物イオンが含まれている化合物」→モノフルオロリン酸ナトリウム・フッ化ナトリウム・フッ化第一スズをを意味して文中では書いています。(例えばフッ素と名前が似てますがフッ化水素酸は活性が高くて猛毒です!)
フッ素の効果
そもそも、フッ素はなんで歯を強くするのでしょうか?
それはフッ素が歯の表面のエナメル質に作用することによって起こります。
歯の表面のエナメル質は通常状態ではハイドロキシアパタイト、という名前のコーティング(結晶)になっていて、歯の表面を守っています。
ところが、フッ素(フッ化物イオン)がこの通常コーティングであるハイドロキシアパタイトに唾液などを介して接する状態で存在すると、なんとこの通常コーティング(ハイドロキシアパタイト)の中に入っていって、なんとスーパーコーティング(フルオロアパタイト、やフッ化ハイドロキシアパタイト、という名前の違う結晶)に変えるんです!!
そうすると通常コーティング(ハイドロキシアパタイト)と比べて以下のような性能がアップします。
カルシウムイオンの溶けだすのを抑制する効果(脱灰抑制効果)
虫歯(う蝕)になる、というのは、歯の主要な材料であるカルシウムイオンが溶けだすことによって起こるのですが、スーパーコーティングだと通常コーティングのものと比較して溶けだしが減ります。
カルシウムイオンの取り込みを促進する効果(再石灰化促進作用)
逆に、通常コーティングのものと比較するとカルシウムイオンを取り込みやすくする方向に働きます。
また、フッ素が存在すると、虫歯の原因となる細菌が酸を産生する能力を抑えるという働きもしてくれるんです!
子供にフッ素塗布しましょう、と言われている理由
フッ素は特に子供の歯によく使われています。子供の歯に使うことによって虫歯を抑制する効果が高いことが数多くの研究により証明されているからです。
生えている途中の歯、はえたての歯はエナメル質がとても若く、カルシウムイオンが溶けだしやすかったり、その時に近くに虫歯菌がいたらすぐに感染してしまったりします。
それだけ外部の環境に影響されやすいのです。
しかし、外部の環境に影響されやすい、という事は逆にフッ素の効果も得やすい、ということも言えます。
実際生えたての歯(乳歯、永久歯両方とも)はフッ素の反応性が高いといわれておりその時期に適切に高い濃度のフッ素に歯の表面を触れされてあげることで歯へのフッ素の取り込みが高くなり、結果虫歯に強い歯になれるのです。これが子供にフッ素塗布しましょう、という理由です。
では大人は効果がないの?答えはNo!大人の虫歯予防にもちゃんと効果があります。
では大人はフッ素取り込まないし効果がないの?と思われるかもしれませんが、
大人でもフッ素を使った虫歯予防は効果があることは研究機関でも証明されています
大人でもフッ素入りの歯磨きをはじめとするフッ素の使用は予防に効果があるといわれています。
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)という権威ある研究機関でも、唯一推奨できるう蝕予防方法としてフッ化物を用いたう蝕予防を取り上げています。
また、大人の虫歯で特徴的な根っこの部分に出来る虫歯にもフッ素が効果的だと証明されています。
また、大人には、子供の虫歯と異なった性質を持つ虫歯ができやすくなります。
「大人虫歯」ともよく言われる「根面う蝕」です。
根面う蝕 とは、歯の根の部分(象牙質)にできる虫歯で、年齢を経て歯茎が歯周病などの原因で下がる事により、歯の根っこが見えてくることによって起こりやすくなります。
歯の根っこは、表面が象牙質という材質になっており、歯の頭の部分である歯冠を覆っているエナメル質よりも柔らかく、虫歯になりやすい性質を持っています。
ですので、大人になって歯茎が下がるとそれだけ虫歯になるリスクが高くなるのです。
では、出てきてしまった歯の根っこを根面う蝕から守るためにはどのような予防をしたらいいのでしょうか?
実は根面う蝕の予防にもフッ素が大きな役割を果たします。
これも、先ほどと同じ研究機関で検証した結果ですが、フッ素を使わない歯磨き粉と使った歯磨き粉で根面う蝕のできやすさを比較した結果、67%の予防効果があったことがわかりました。
なので、大人でもフッ素を使用することに十分な効果はあるんです!
フッ素ってどんな風に使うの?
では、どんな風に生活にフッ素を取り入れていったらいいのでしょう?下に挙げたようにいくつか方法があります。
水道水にフッ素が入れる フロリデーション(日本では実施されていません)
一番効果のある方法、と言われているのが水道水にフッ素をいれちゃう方法です。
効果があると言われている1.0ppmにフッ素の濃度を調整して水道水の中に入れて、日常てきにフッ素が取り込むことによって虫歯を予防します。
もちろんこれは個人個人ができる方法でなく、国などの大きい機関が決めて、国などの大きい単位で実施される方法です。
高い虫歯予防効果が得られるものの、飲んで効果を出すタイプの使用方法なので、体への影響が懸念される場合があるからです。
フッ素の濃度の調整が適正より多い場合、歯や骨にフッ素がたまってしまい「斑状歯」と言われる、茶色く斑点のある歯になってしまう恐れがあるからです。
それもあり、日本では実施されていません。
フッ素塗布
定期的にフッ素を塗る方法です。高濃度(9000ppm)のフッ素を歯に塗ることによりフッ素を効かせます。高濃度なので家庭ではできません。
歯医者さんで定期的におこなう方法です。
歯科医院で、フッ化ナトリウムとして2%、フッ素ナトリウムとして9000ppmの濃度のフッ素をを歯に塗ります。
年2回以上塗ることで効果を発揮します。
塗った後しばらくはフッ素を定着させることで適正な効果を発揮するので、塗った後はうがいをせずに、30分ほど飲食を控えましょう。
乳幼児期にきっちり定期的に行った場合は約50%、大人の場合は20~30%ほど予防効果がアップします。
フッ素洗口
フッ素入りの洗口液でうがいをすることによって行う方法です。
中程度の濃度(250ppm)のものでぶくぶくうがい(洗口)を毎日行う方法と、高濃度のもの(9000ppm)でぶくぶくうがいを週1回行う方法があります。
週1回で行う方法は高濃度で市販はされていないので、幼稚園、保育園など公の施設で行われています。
中程度の濃度のものは歯科医院で購入して家で毎日使うという方法になります。商品としては以下のようなものがあります
左 ミラノール 右 オラブリス これらのものは歯科医院で購入して、家庭で使用します。
また、最近薬局で購入できる洗口液も登場しました。エフコートといいます。
OTC医薬品なので通販はありませんが、薬局でなら、歯科医院に行くよりは手軽に購入できますね。(歯医者さんに来てほしいのはやまやまですが・・(^^;)
フッ素配合歯磨き粉(子供)
大人のフッ素配合歯磨き粉については後ほど別途触れるとして、子供のフッ素配合歯磨き粉についても触れていきたいと思います。
フッ素の入った歯磨き粉は毎日使用することにより、虫歯を予防するといった目的で、配合されています。
大人の歯磨き粉にはおよそ1000ppmのフッ素が配合されています。実は現在販売されているおよそ9割以上には、だいたいこの濃度のフッ素が配合されています。(一部のものを除き、口述します。)
子供は体も小さく、きちんとうがいできないこともあり、歯磨き粉に含まれている 濃度は大人よりも少なめの100ppm、500ppmがあります。形状も、ペースト状、ジェル状、泡状とさまざまです。ちなみに、下の2つは歯科医院でも販売しているもので私も勧めています。
ジェル状の子供歯磨き粉
チェックアップジェル
こども用のジェル状の歯磨き粉は、多くが3歳くらいのまだぶくぶくうがいが出来ない子供でも使えるように、と考えて作られています。
歯磨きに慣れてくれるように、というのと早いうちから毎日フッ素を使用したい、というのが狙いです。
多少飲み込んでも大丈夫なように、材料は食品として使用できるものに限定し、フッ素濃度も500ppmと通常の歯磨き粉の半分に作られています。
ペースト状の子供歯磨き粉
チェックアップコドモ
ジェル状だとぶくぶくうがいができなくても使用できるという利点はありますが、やはりプラークや汚れを落とす能力には劣ります。
どちらかというと歯磨き粉になれるといった意味合いが強いです。
歯磨き粉に汚れを除去する効果を期待するのであればペースト状のほうがベターです。ぶくぶくうがいが出来るようになったらペースト状の歯磨き粉を使用するほうが良いでしょう。
では大人の虫歯予防歯磨き粉は?2017年3月にフッ素の配合濃度の上限が引き上げられてよりフッ素が高濃度に配合された歯磨き粉が販売されるようになりました!
では、本題の大人虫歯に効果的な歯磨き粉はどんなものを使ったらいいのか?ということなのですが、最近(2017年3月)ハミガキ粉業界に大きな改革が起こりました。
実は日本では歯磨き粉に配合できるフッ素濃度は1000ppmが上限と定められていたのですが、実はこの濃度は世界標準の1500ppmと比較して、低いものでした。
そのことに関して、日本歯磨工業会は上限の限定を働きかけていたのですが、ついに
ところで、一般の店頭で広く販売されている医薬部外品、化粧品の口腔衛生用品に歯磨剤と洗口液がありますが、薬用歯みがき類の承認基準でフッ化物の配合が認められているのはペースト状や粉状などの医薬部外品歯磨剤のみで、洗口液や液体歯磨剤などには認められていません。また歯磨剤のフッ化物濃度の配合上限は、薬用歯みがき類の承認基準では1000ppm(フッ素として)と定められており、諸外国で採用されている国際基準(ISO)と比べて低くなっています。歯磨剤に配合可能なフッ化物濃度の範囲を広げることは、むし歯が気になるお客様の健康増進にとって有益なことと考えられます。この度、諸外国で採用されている国際基準(ISO)と同じくフッ素が1500ppmを上限として配合された製品が、2017年3月に厚生労働大臣により承認されました。
(日本歯磨工業会ホームページより)
と、ついに世界標準であるフッ素1500ppmという高配合の歯磨き粉を製造販売することが政府に承認されるようになりました。
もともと世界基準、虫歯の先進国である諸外国はもっと高い濃度のほうが予防効果が高いので、日本より1.5倍高い濃度のフッ素入り歯磨き剤を使用していたのですが、日本は規制が厳しくハードルが高かったのでなかなか承認されませんでした。
しかし、日本歯磨工業会が安全基準を整えたためにやっとこのたび2017年3月に承認されることになり、そのために、各メーカー一斉に「大人虫歯を予防する」本気の商品設計の歯磨き粉が販売されるようになっています。
以下に代表的な各メーカーの大人虫歯向けの歯磨き粉とその特徴を挙げてみたいと思います。
各メーカーの高濃度フッ素配合歯磨き粉とその特徴
バトラーエフペーストα (サンスター)
高濃度フッ素配合以外の特徴としては
- 抗炎症効果のある薬効成分であるグリチルリチン酸2カリウムが配合されており、歯肉の腫れを抑える働きがあります。
- 露出している根っこは通常の歯の頭の部分より削れやすいという性質を考慮して、優しく磨ける研磨性の低い研磨剤が使われています
シュミテクト デイリーケア (グラクソスミスクライン)
高濃度フッ素配合以外の特徴としては、
- 薬用成分である硝酸カリウムが配合されており、知覚過敏を効果的に予防します。
クリニカアドバンテージ (ライオン)
- エナメル質に対し吸着性の高い”コーティング剤”としてヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリドが配合されており、フッ素を歯面に長く引き留めることで長時間フッ素が持続するようにしています。
- ラウロイルサルコシンNaによりが原因菌を殺菌、ムシ歯・口臭を予防。薬用成分「TPP※2」が歯への歯石の沈着を防ぎます。
- デキストラナーゼ酵素が 歯垢(プラーク)そのものを分解・除去します。
- テトラデセンスルホン酸Na(洗浄剤)が初期のプラークを落としやすくします。
などがあります。
クリアクリーン プレミアム (花王)
高濃度フッ素配合以外の特徴としては
- カルシウム補給助剤(キシリトール)の配合、これによりミネラルが補充され再石灰化が促されます。
- そして吸着促進剤(GPカルシウム)の配合、これによりフッ素が吸着されやすくなります。
- 上記2つの作用でフッ素が取り込まれやすい処方設計になっています。
と、このように各社特徴を持った商品設計になっています。
また自分に気になるポイントと照らし合わせてぴったりのものが選べたらいいですね。
高濃度フッ素歯磨き粉を使用する時のポイントは?
フッ素をはじめとした、歯磨き粉の薬効成分が効果を発揮するには、ある程度磨いた後もお口の中に残っている方がいいので、実はうがいをあまり何回もしないほうが良いんです。
お口の中の泡が無くなる程度、出来れば一回くらいのうがいのほうが効果は発揮しやすいです。
いかがでしたか?大人もちゃんとフッ素で虫歯予防できるんです!効果のあるものを正しく理解・使用して虫歯予防ができるといいですね。少しでもお役に立てたらうれしいです!