歯周病は塗り薬を塗ったら治るのか?市販薬の歯槽膿漏薬の真実を現役歯科医がバッサリ!

歯周病薬が売っているドラッグストア歯周病

よく薬局とかで歯槽膿漏の薬って置いてるし、宣伝もされてるんだから歯槽膿漏って薬で治るんだよね!わざわざ時間作って痛い思いして歯科医院いくより自分で治すわ。

本当に、最近の薬の開発は目覚ましい進歩を遂げています。昔治らない病気も新薬の開発で治るようになってきました。

では歯周病もそうなのかな、と思ったアナタ、ちょーっと待った!!

実は薬の世界は広いんです。。

目覚ましい新薬開発の世界がある一方、「??」と思ってしまうような薬もあるんです。実は私にとって歯槽膿漏薬は「??」と思ってしまう薬の一つ‥。

特に、勉強熱心な歯周病の患者さんほど、薬だから安心と信じて、ひどい状態になってしまっている人がいて本当に心の痛む思いです…。

歯槽膿漏薬の存在を糾弾するつもりはありませんが、イメージ先行の今の状態に警鐘をならすべく、正しい知識、正しい使い方は広まってほしいと切に思います。

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「〇〇に効きますよ!」といえる市販の歯周病・歯槽膿漏薬のカラクリ

テレビを付けたら色々なコマーシャルが流れてきます。

特に健康関連のものは本当に見ない日がないくらいたくさん。

でも、よくよくそのコマーシャルを見てみると、「スッキリ!」「毎日がハツラツ!」など、うっすら効果を匂わすだけのものもあれば、「体脂肪を減らします!」とがっつり効果を口に出しちゃっているものまで、商品によって効果を謳うトーンが随分違います。

そんな中で、歯周病に効く!

と言い切っちゃってる歯周病・歯槽膿漏治療薬。

はっきり言い切っちゃってると効果も期待しちゃいますよね。ほかの歯磨き、洗口液とはどう違うの?ほかのは劣っているから?

 

どうしてだとおもいますか?

 

それは、日本では、医薬品をはじめとした健康や医療に関与する商品を販売する時に宣伝として使用される文言に厳しい規制があるためです。

日本では、販売されている薬品や食品など、人の体に影響を及ぼすものに関して、政府の該当する各省庁が効果や効能を表示するのにそれはそれは厳しい規制を敷いています。

たとえば「これを飲んだらがんが治る!」という食品を発見して、それが本当に効くものであったとしても、しかるべき手続きを踏まずそれを大っぴらに言って販売すると逮捕されます。薬機法という法律に規制されているからです。

この国では病気を治したり、体を健康な状態にする薬品や食品を、その効果があることを明示して販売するためには、国が指定した証明する方法できちんと証明して手続きを踏む、という手順が必要なんです。

そして、それぞれの手順をクリアした後、その身体への影響の与え具合とクリアしたグレードによって、医薬品になったり、特定保健用食品(トクホ)になったり、栄養機能食品という名称を国から認められる訳です。

これも、認められたら何でも言える!という訳でなく、効果や効能についての言い方は国が認められた言い回ししか認められません。

それと、この「認められる」部分はその製品ではなくて、その製品の中に入っている「成分」が認められて、その「成分」が入っているからその製品は〇〇(医薬・特定保健用食・栄養機能食)品だというテイになる訳です。ややこしい…。

例えば

〇〇茶→難消化性デキストリン配合→脂肪の吸収を抑える、食後の血糖値を抑える

だから、脂肪の吸収を抑える〇〇茶、となる訳です。

トクホだと、例えば”脂肪の吸収を抑える”といったやんわりとした表現になります。

これが医薬部外品だと、ちょっと医療よりですが医療まではいかない”〇〇の予防に”くらいまでは言える。

医薬品になると、例えば ”かゆみを抑える、痛みに効く” など、ちょっと医療的な、治療の範疇に入ったこともいえるようになります。

ということで、はっきりした物言いがしたい場合、すでに〝そのことが言える医薬品成分”として使用することを国から許可された成分に配合して、しかるべき手続きを経て、医薬品として販売したら公明正大に言えるようになります。

ですので、コマーシャルなどで歯ぐきへの効果を明らかに言っているものは、歯周病・歯槽膿漏薬というジャンルの医薬品なのです。

医薬品だと、例えばコマーシャルなんかで医薬部外品や化粧品の歯磨き粉のCMがなんだか効くのか効かないのか、何かぼんやりしたものの言い方してるのにたいして、歯周病・歯槽膿漏薬は「腫れ、出血に効く!」と、効果に対してはっきりとした物言いになります。

 

そうなると、それをみた消費者の人たちは「ほー、それなら効くほうを使ってみようか」、となることが多くなる訳です。が…。

本当に歯周病が治ってくれるんだったらそれで構わないんだけど…。実際の歯周病・歯槽膿漏薬が訴求している効果は…?

ハードルの高い手続きを踏んで、医薬品である歯周病・歯槽膿漏薬が開発、販売されて、それが本当に使用した人の歯周病の改善につながってくれているんだったら歯科医師の私としても全然かまわないしむしろ広まってほしいと思うのです

 

が、、

 

ちょっと待ってください。よく歯周病・歯槽膿漏薬の添付文書を読んでみると、多くの歯槽膿漏薬が

歯肉炎・歯槽膿漏の諸症状(出血・はれ・口臭・発赤・口のねばり・歯ぐきのむずがゆさ・歯ぐきからのうみ)の緩和

なんです。あくまで”緩和”なんです。いうなれば、症状を和らげているだけで、根本的な解決を講じているわけではないんです。

歯周病・歯槽膿漏薬に入っている成分って??

先ほどの項目でも触れされてもらいましたが、医薬品には、効果が認められた成分が配合されていることが必須です。

でも逆に言ったら効果が認められた成分さえ配合していたら医薬品だと認められる、という事になっています。そして、歯槽膿漏薬として認められている成分はこちらなんですが…。

  1. 抗炎症成分

    塩化リゾチーム グリチルリチン酸

  2. 生薬類

    カミツレチンキ、ラタニアチンキ、ミルラチンキ、チョウジ由

  3. その他の成分

    アラントイン、パンテノール、ビタミンE、塩化ナトリウム、カルバゾクロム

 

正直、症状の中に書いている腫れや出血は炎症なので、抗炎症効果のある薬剤に頑張ってほしいところですが、塩化リゾチームやグリチルリチン酸は作用がそれほど強いとはいえず、せいぜいこれ以上悪化するのを防ぐぐらいですし、

生薬類に関しては、有効性が認められているから成分として認められた、という訳ではなく、昔から伝統的に使用実績があったから、というふんわりした理由ではるか昔に認められて、それ以降取り消されることもなく存在している、といった立ち位置です。。

実は、生薬などの古くからある医薬品の有効成分などに多いのですが、伝統的に薬の位置づけで使用・販売されていたのでそれがそのまま認められて販売されている、というものが多いです。そういった薬は今認められている薬のように厳しい有効性の試験をパスしたわけではありません。

そういったことを考えると、生薬の役割は炎症の効果というよりは香味と爽快感なのかな。と思います。

 

歯槽膿漏、という言い方も今はしないのに何で残っているのか?というと、結局はるか昔に制定された言い方がいまだに使われているからなんですよね。色々と変更するのが難しい世界なのです。

近年は医薬品に求められるハードルがどんどん高くなっているので、新しく認められるよりも古い成分を使うほうにどうしても流れて行ってしまうのかな・・。

(追記:そんな中で2017年にロート製薬さんが ハレス口内薬  という「アラントイン」・「カルバゾクロム」の組み合わせ処方で歯槽膿漏薬を出しました!またいつか記事にします!→2017.12.13に記事にしました!

※追記(2017.12.13)

ハレス口内薬について、掘り下げて記事にしてみました!興味のある方はこちらへ

 

ロート製薬「ハレス口内薬(dr.ハレス)」について大考察!新規の有効成分のアラントイン&カルバゾクロムとは?メカニズム、効果について。
2017年3月に新発売されたロート製薬の「ハレス口内薬」。新規の有効成分のアラントインとカルバゾクロムはどのような効果効能があるのでしょうか?現役歯科医師が分かりやすく解説します。

 

 

もちろんいろんなメーカーさんが出している歯周病歯槽膿漏薬にはここに記載している成分以外にも殺菌成分を配合して、根本的な部分にもアプローチしようとしているところもありますが、ホント、生薬3種類だけの成分で売っているものとか、本当に効果があるのか??です。

 

”歯槽膿漏における諸症状の緩和”=歯周病を治しているわけではない

本当に効果があるかどうかは私が効果について臨床試験をした訳でないのでこれ以上言及するのはやめますが、どちらにしても言いたいのは

歯槽膿漏における諸症状の緩和を一生懸命しても歯周病は治らないよ、ということです。

諸症状の緩和はいわば対症療法です。歯周病から由来している腫れ、出血、痛みには明らかな原因があります。それは、歯周ポケットにいる歯周病菌です。

確かに市販薬は歯茎の腫れに効くかもしれません。

しかし、いくら腫れや出血が市販薬で治った(ようにみえた)としても結局原因がとり切れてないので、結局また悪化の一途をたどってしまうのです。

気を付けて!歯槽膿漏薬は決して”歯周病が治ります”とは言っていませんよ!

大事なことなのでもう一回言います。

本当、おそらく目に触れるのは短い時間で印象的な言葉でつづられるコマーシャルくらいなので、歯槽膿漏は薬で治る、という印象操作がされてしまっているかもしれませんが、

あくまで歯槽膿漏薬は今の症状を「和らげて」くれるだけのものです

薬という名前でつい治すもの、と思ってしまっているかもしれませんが、

実は歯槽膿漏薬自体も歯周病が治ります、とは記載していません。

残念ながら歯周病は市販の塗り薬では治らないんです。

歯周病は根本的に治療ができる数少ない病気の一つです

しかし、歯周病であることに気が付いてケアをしよう!と思っている気持ちはとても大事だと思います。

そして、歯周病は病気の中では幸いなことに根本的な原因がわかっている病気なので、治療で食い止めることができるんです。

歯周病の原因は歯と歯ぐきの間に潜む歯周病菌。菌のかたまり(プラーク・歯石)を取ることで歯ぐきの腫れ、出血、痛みは劇的に減少します。

歯周病菌の原因は、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットと呼ばれる隙間に住んでいる歯周病菌が原因である、という事が明らかになっています。

そして、この歯周病菌は歯科医院で除去ができます。世の中にはいろいろな病気がありますが、歯周病は幸いにも通院で原因を除去することができる病気の一つです。

もし長い間歯ぐきの腫れや出血に悩まされているとしたら、何とか治りたいと思って塗り薬に頼って、治った…治らない…と繰り返すのはもったいないと思います。

 

歯科医院に行くと回数は何回か掛かりますが、原因を除去できるのでずいぶんとスッキリとした生活が送れるようになると思います!

歯ぐきの腫れ、出血をなんとかしたいという強い思いをブラッシングに向けましょう!

恐らく歯槽膿漏薬に興味を持つ人は自分のお口の健康に関心が高い人が多いと思うんです。患者さんにもよく塗り薬のことを質問されますが、やはり勉強熱心な方が多いです。

 

もっといい方法はないのか探して歯槽膿漏薬という選択になったんだろうな、、と思うのですが、オーラルケアの世界、お家で出来るケアとしては、やはりまだ日々のブラッシングに勝るものはありません。

 

少しいい歯ブラシに変える、歯と歯ぐきの際を磨く、フロスも使用する。それだけでだいぶお口が変わります。

私のおすすめの歯ブラシ&ブラッシングのコツ

例えば、歯周病の方に柔らかい毛先のものをお勧めする機会が多いのですが、一口に「柔らかい歯ブラシ」といっても、消費者の方の意見に偏りすぎて毛先にコシがなく、歯周病菌の原因であるプラーク除去効率が低いものが多く散見されます。

私が使用してみて良かったものはこれ、バトラーの歯ブラシです。現在販売されている歯ブラシの毛先は化学研磨と言って溶剤で溶かして先を細くして当たりを柔らかくしているものが多いのですが、その方法では毛先のコシがなく、結局プラークを掻き出せません。

バトラーの製品は機械研磨という方法で先を細く、当たりを柔らかくしているので毛先のコシは残したままあたりは柔らかい、と、両方の性質を備えています。

(↓2018.2.28追記)
上記のバトラーの歯ブラシもよかったのですが、最近使用して、こちらがとてもよかったので追記しました。
歯ブラシのブラシ部分の材質は、ナイロン、そして最近はやりのPBT(ポリブチレンテレフタレート)があります。
PBTの歯ブラシは歯科専売の会社が取り扱っていて歯科医院でもよく見かけるのですが当たりはいいがコシが少し少なくてちょっと物足りないなあ、と思っていたところ、
PTT(ポリトリメチレンテレフタレート)ブレンド毛という材質のものを見かけました。
使ってみたら、触った時の当たりが絹のように柔らかく、コシもしっかりあり清掃力も高いので、今はすっかりお気に入りになりました。
なかなか言いたくなるほど使用感に差異があるものが今までなかったので、見つけることが出来て良かったです。
時点はTEPE。これもなかなか良かったのですが、海外製なので手に入りにくいのが難点です。
さすが歯科予防先進国スゥエーデン製と納得できる毛先です。
日本製のもののように、手を器用に動かす事前提ではないので、ヘッドは大きく毛がみっちりとして歯全体に毛が当たりやすい形になっています。

 

と、ここまでおすすめブラシをあげましたが、どんなに良い歯ブラシでも、歯ブラシは一ヶ月でプラーク除去効果が半減するので交換をお忘れなく。

 

ブラッシングの方法はペングリップといって、ペンを持つような持ち方で磨く方法がおすすめです。なぜならそのほうがより精密に動かせるからです。

そして、磨く所は歯と歯ぐきの際を狙ってください。多くの人は歯の面中心で磨いていて、際の部分にブラシが当たっていないことが多いです。歯ぐきをみがく、位の気持ちでちょうどそのあたりが磨けるかと思います。

強さは歯ブラシの先がしならないくらいの強さがベターです。おそらく多くの人が思っているより弱いのではないでしょうか?歯ブラシは、実はブラシの毛先が歯に当たるだけで十分プラークは取れます。力はいりません。ですので、コソコソコソ・・・・と小さく動かく位で十分です。

時間はどれくらい?と聞かれますがはじめは心行くまで磨いてみてください。お口の中がかなりスッキリするはずです。この状態を目指して磨いてください。時間より状態が大事です。初めは時間が掛かるかもしれませんが、そのうち時間が短く、手早く磨けるようになります。

私のおすすめのフロス&フロスの使い方のコツ

ブラッシングが上手になるとかなり口の中がスッキリしてくるのですが、どうしても歯と歯ぐきの間の部分は腫れた感じが残ってくるかと思います。

実は、上手にブラッシングをしても、歯と歯の間のプラークはブラシだけだったら60%しかとり切ることが出来ないのです。

ですので、歯と歯の間には何らかの対策が必要です。

私はその対策としてフロスの使用をお勧めします。

フロスは、だいたいひじの長さで切り、両方の中指にくるくると巻き付け、指と指の間のフロスの長さは10~15cmほどにします。

 

フロスの方法

この10~15cmの長さのフロスの端を人差し指と親指で掴むようにして持つと、扱いやすく使えます。上から入れて、歯と歯の間と、歯ぐきにも少し入れ込むようにして使用してください。

 

ワックスが付いていると滑りが良くなり歯間に入りやすいという特徴があります。アンワックスは歯間に入りにくいですがプラークをかきとる力はワックスタイプのものより上がります。

フロスに慣れていない人はワックスタイプ、慣れたらワックスタイプを試すというのが良いでしょう。

フロスのおすすめはこの2点

このフロスは太さが非常に丁寧に設計されている用に思います。隣接面はかすかな抵抗感を感じますが、歯間部に入ったときに適度に膨らみ、歯間部、歯頸部全体に当たりながら優しく汚れを掻き取ってくれます。

ドラッグストア等でよく見かけるフロスですが、Gumのフロスも秀逸です。

このフロスは吸水すると膨らむ仕組みになっています。

ですので歯間部を通す時はあまり窮屈感を感じませんが、歯と歯茎の間の所まで来たら、程よく膨らみ、効率よく汚れを落としてくれます。

 

 

Dr.Den
Dr.Den

このように歯ブラシやフロスを選び、正しい磨き方をするだけで水分お口の中の様子は変わりますので、是非明日からやってみてください!

 

いかがでしたか?

今まで付いていた歯周病菌を取り除き、キチンと日々のお口の汚れが落とせる、それが1番の歯周病の治療であり、予防です。

難しいな、と思われる方は、一度歯科医院に来てください。

Dr.Den
Dr.Den

歯科医院の私達が全力でサポートしますよ!