
困ったなあ。。初めて入れ歯を入れたはいいものの、あまり説明を聞いていなくって、どうやって洗うのかとか普段の手入れがいまいちよく分からない‥。普通に歯磨きすればいいのかな?
初めて入れ歯を作られた方、お疲れさまでした。
初めて装着する日はつけ外しに精いっぱいで、色々と説明を聞いたものの普段のお手入れについて聞き逃してしまう事、あると思います。
治療に関係することは歯科医院で聞けても普段のお手入れに関しては、先生も忙しそうだしどうしても質問するのをためらいがちです。
入れ歯を使っていても、入れ歯のお手入れの仕方に関してはあまり分からないまま今まで来ている方も多いと思いのではないでしょうか。
そんなあなたのために今回は、入れ歯の手入れに関してお伝えします。
筆者である私は入れ歯が大好きな歯科医なので、入れ歯をお手入れする道具についてはかなりこだわっていると自負しています。
今回、このこだわり抜いたセレクションご披露したいと思いますので、ぜひ参考にしてください!
また、2018年10月に市販品として小林製薬から「超音波タフデント」という、「超音波」を使用した入れ歯の洗浄器も発売されて、気になっている方も多いかと思います。
そもそも「超音波タフデント」をはじめとした入れ歯洗浄器とはどのようなものなのか、原理、性能などについて解説していきたいと思います!
どんなタイミングで洗ったらいいの?
そもそも入れ歯って、「どのようなタイミングで、どのように入れ歯を洗ったらいいの?」
今までの歯磨きとことなるお口のお手入れですので、装着し始めの頃は、そこから迷うのではないのでしょうか?

まずは、どんなタイミングでどのように洗ったらいいの?というところから説明します。
私のおススメは
①食後に水洗い(使えれば義歯ブラシを使う)
②寝る前に入れ歯水洗いした後入れ歯洗浄剤。そして液体につけた状態で置いておく
③超音波洗浄器の使用
という洗い方です。
①、②は必須デイリーケアとしてぜひ取り入れてもらいたいお手入れです。
③に関しては、どうしてもデイリーケアだけでは取れにくい汚れが出てくるので、その汚れを落とすためは追加するとより良いケアになっています。
日々のお食事の後にさっと洗い、寝る前に丁寧なケアをすることにより入れ歯にもお口の中にも汚れがつきにくくなるはずです。
その① 食後は義歯ブラシを使って水洗い
まずは食後です。

食べた後は入れ歯に食べかすが付きます。
食べかすを落とすためにもブラシと水を使って水洗いしましょう。
水洗いだけでも、食べかすが目に見えないくらいまで落とせれていたら、お口の中をある程度清潔に保つための洗浄の効果はあります。

面倒だし・・・、食後の水洗いとブラシ洗いなしで、夜に入れ歯洗浄剤につければそれでいいんじゃないか?
と思う人もいるかもしれません。
しかし、

汚れが付いたまま長時間置いてしまうと、入れ歯の汚れの主要なものである、たんぱく質の汚れが固まってしまったりして、いざ夜にしっかり洗浄しようと思っても汚れが落ちず洗浄効果が得られません。
ですので、普段からしっかりブラシを使った水洗いで汚れを落としましょう。
外出などしてブラシがないときもできれば水ですすぐようにしてください。
(なかなかはずしにくいですが、その時はうがいだけでも‥。)

では、食後の歯磨きの時に普通の歯ブラシを使ってそのまま磨いたらいいのかな‥?
と思う人もいるかと思いますが、

普通の歯ブラシは入れ歯にとって硬すぎて、磨いたら小さな傷ができてしまい取れにくい汚れが付着したり、臭いの原因となります。
入れ歯の臭いの原因についての関連記事です↓

ですので、入れ歯をお手入れする時は専用の入れ歯(義歯)ブラシを用意しましょう。
ちなみに、バトラー 義歯用ハブラシを医院での義歯の洗浄時にも愛用しています。
また、クラスプという針金の部分は形状がこのブラシで磨くのは難しいので義歯の針金専用のブラシを使用すると洗いやすいです。
また、

残っている歯は普段の歯磨きをすることになるのですが、どうしても抜けた部位の隣の歯や針金が掛かっている歯の部分は磨きにくく、汚れやすいです。
そんな歯のお手入れにはワンタフトブラシ(シングルタフトブラシ)と言われる一本一本歯が磨ける先の細い形状のブラシを用いて磨いてください。
その② 寝る前は入れ歯洗浄剤につける

寝る前は、一日の汚れを落とすために入れ歯洗浄剤に漬けて、つけおき洗いをしましょう。
※入れ歯はその大きさによって、そのまま外したまま就寝する場合と、また付けて寝る場合とがありますので、ご自身がどちらかは入れ歯を入れた歯科医院で聞いてみてください。
※外して寝る場合は、入れ歯はレジンというプラスチック出来ていて、水に触れている状態で形が安定するようにできていますので、朝まで液体に漬けておいてください。

食べたあと水洗いしているのになぜ入れ歯洗浄剤につけなければならないの?

付けてください。なぜなら入れ歯にはタンパク汚れをはじめとして水では落ちにくい汚れがたくさんついているからなんです。
入れ歯を水洗いするとある程度の汚れは落ちます。
しかし、入れ歯は食べ物や飲み物、それによって繁殖したばい菌、唾液からでた歯石など一日使用すると、水洗いだけでは取れにくい汚れが付着していますので、
入れ歯洗浄剤にはどんな成分が含まれているの?
入れ歯についた水洗いだけでは取れない汚れを取るために、入れ歯洗浄剤にはどのような成分が含まれているのでしょうか?

洗浄成分として下に挙げたような成分が配合されています。
(もっと詳しい事が知りたい人は関連記事に詳細をまとめています↓)

- 酵素系 酵素が作用し、主にたんぱく汚れを溶解します。
- 過酸化物 水に溶解して出てくる活性酸素(過酸化水素)の発泡作用により洗浄が行われます
- 次亜塩素酸 次亜塩素酸の作用により漂白と殺菌が行われます。
- 生薬 除菌作用や爽快感をもたらす香味がありますが洗浄作用は期待できません。
落ちにくい入れ歯汚れの主となるものはタンパク質汚れです。
タンパク質汚れを落とすのは、2、の酵素系の成分です。
着色などが気になる人は3、の次亜塩素酸が配合されているかどうかを確認して選ぶといいでしょう。
しかし3の次亜塩素酸は使用方法によっては金属の変色をもたらしてしまいますので、毎回の洗浄には向きません。
また、入れ歯の洗浄で大切なのは、カンジダ菌の除去です。
カンジダ菌は口腔内の常在菌(かび)です。
増殖すると、口腔内が赤くはれてしまう義歯性口内炎を引き起こす原因にもなります。
義歯はその材質上カンジダ菌が付着、増殖しやすいのです。
そのため、きちんと洗浄、除菌が出来ていないとカンジダ菌の温床となってしまうのです。
関連記事

入れ歯洗浄剤 私のおすすめ
これらのことを考慮すると、今現在販売されている義歯洗浄剤は、以下の3品がおすすめです
ピカ (ロート製薬)
この入れ歯洗浄剤は2種類の成分の入れ歯洗浄剤が入っていて、一つは一週間に6回使用する酵素系の洗浄剤、もう一つは一週間に1回使用する次亜塩素酸系の洗浄剤です。
この酵素系の洗浄剤はなかなかの優れもので、カンジダ菌の溶菌酵素が配合されており、カンジダ菌を溶菌することにより除去することができます。
また、週に一回の次亜塩素酸系の洗浄剤も極めて高い漂白、殺菌効果があり、義歯が着色で汚れやすい人には最適です。
一つ難を言えば週に一回使用するほうの洗浄剤は取り扱いに注意が必要なので、認知症など、判断能力の低い人が扱うには危険というところでしょうか。ご家族の方が洗浄を行うか違う入れ歯洗浄剤のほうが無難です。
クリネ(コンフォート)
これは、酵素系の洗浄剤です。
5種類の酵素を配合することでカンジダ菌の除去99%という効果を出しています。
義歯にやさしい成分なので、軟性裏層材など、柔らかい材質の裏打ちをしている入れ歯にも使用できます。
ラバラックムース
この洗浄剤は次亜塩素酸系で、次亜塩素酸を3%安定配合させた上に界面活性剤が入っています。
そのため短時間で洗浄が完成します。
ムース状になっており全体に泡を付けて5分で完成です。漬け置きをする時間のない方に。
漬けておくケースは汚れ落ちや安定性を考えたらガラスのものがおすすめです。
③入れ歯の超音波洗浄器
入れ歯の洗浄になぜ超音波洗浄が向いているの?
このようにお手入れしていてもどうしても積年の汚れがついてきます。
そんなときに役に立つのが超音波洗浄です。

「眼鏡や貴金属なんかでは聞くけど超音波洗浄って入れ歯でもするものなの?」と思うかもしれませんが、医療の分野、特に歯科の分野では超音波洗浄は器具の洗浄や、もちろん入れ歯の洗浄にもよく使用します。
入れ歯は形が複雑で、手洗いをしたり、入れ歯洗浄剤で洗浄しても、どうしても汚れに届かない部分が出てきます。
汚れに届かない部分はそのままにしておくと、菌が増えたり、悪臭がしたりとトラブルの原因になります。
そのような届きにくい汚れを落とすのが、超音波洗浄は得意です。
どういう仕組みかというと、
超音波によってキャビテーションという細かい泡が入れ歯の周りにたくさん発生します。
この泡は、通常の入れ歯洗浄用のブラシが届かないようなところまでしっかり届きます。
この、キャビテーション、という細かい泡は入れ歯の表面について潰れます。
その時入れ歯に衝撃が伝わります。
この衝撃の力が入れ歯に付着している汚れにアタックして、浮き上がってくるのです。
このような泡の発生、衝撃の絶え間ない繰り返しにより入れ歯周囲についていた汚れがくまなく浮き上がる、という訳です。
細かな泡による洗浄なので、入れ歯ブラシを使用した時と比較して入れ歯の表面に細かな傷をつくことも防ぎます。

入れ歯の表面の傷はカンジダ菌など菌の温床になるので、入れ歯には大敵です。
入れ歯の形状や、傷つき易い材質であるということを考えたら、超音波洗浄器は入れ歯の洗浄に非常に向いています。
超音波洗浄器を選ぶときのポイント
超音波洗浄は泡の大きさで汚れの落ちやすさが変わってきます。
泡の大きさは超音波の周波数で変わってきます。
周波数が小さいと大きい泡、周波数が大きいと小さい泡となり、うが衝撃が大きく、汚れが落ちやすいです。
しかし、汚れが落ちやすい、ということは逆に入れ歯を傷つけやすい、ということになるので、闇雲に小さい周波数のほうがいい、というわけではなく、入れ歯の材質を考慮した設定がされている超音波洗浄器を使用するのがいいと思います。
そうなると、入れ歯専用の超音波洗浄器のほうが安心なのかな、と思います。
また、入れ歯超音波洗浄を行うときは洗浄液も洗浄力を高くするのに大事です。
洗浄液はそれぞれの超音波洗浄器の特徴に合わせて開発されるので、洗浄液と洗浄器は同じメーカーのものを購入するほうが良いでしょう。
各メーカー超音波洗浄器の特徴
それでは、ここから現在市販されている超音波洗浄器と特徴を挙げていきます。
超音波タフデント
2018年の10月24日に発売され、ドラックストアの店の目立つところにも置かれるようになったために、入れ歯の超音波洗浄器が一躍有名になったのに一役買っているのではないかと思います。
こちらの商品は入れ歯洗浄剤で大きいシェアを持つ小林製薬さんが開発したものです。
周波数は40000ヘルツで、入れ歯の超音波洗浄器として販売されている物の平均的な周波数になっています。
「キャビテーションの泡が大きすぎると入れ歯が痛むし、小さすぎると洗浄力が低い」ので、検討を重ねた結果この周波数になりました、ということでした。
コンパクトな作りで洗面所に置きやすいスタイルになっています。
専用の除菌洗浄剤は上のようなものになっています。有効成分としてはタフデントと同様のようですが、洗浄器を傷めなかったり、泡の発泡性を考慮している商品設計になっているはずですので、合わせて使用するのが妥当かと思います。
ロート製薬 洗力

この商品は私が好きな超音波洗浄器です。
この超音波洗浄器は歯科専売品(ドラックストアなどで取り扱っておらず歯科医院で取り扱っている商品)なので、あまり普段目につかないかもしれませんが私の好きな商品です。
ロート製薬さんは昔から入れ歯に力を入れていて、
他のメーカーには配合されていないカンジダ菌溶解酵素などが配合された入れ歯洗浄剤の「ピカ」など、
結構凝った商品を出している用に思います。
超音波の周波数は38000ヘルツでやや強めです。
やや大ぶりですが、容器をとりはずし洗いやすい、蓋が付いているので飛沫がすくない、など色々と配慮されています。
がこの超音波洗浄器に使用する入れ歯洗浄剤として推奨されています。
この入れ歯洗浄剤は超音波洗浄器を使用しなくても使用できる入れ歯洗浄剤です。酵素を5種類配合しており、カンジダ菌の除去率も高いのが特徴です。
デントヘルスデンチャーケア
ライオンさんも入れ歯の超音波洗浄器を販売しています。
周波数は42000ヘルツとやや弱めです。
小ぶりで置きやすそうですが、場合によっては大きい入れ歯は入らないのではないかな・・・という懸念があります。
この商品にも専用の入れ歯洗浄剤があります。液体なので均一に溶解しやすそうでいいですね。
入れ歯の超音波洗浄器を使用する際の注意事項
どの入れ歯の超音波洗浄器も5分間使用します。それぞれのメーカーの使用方法に準じて使用してください。
また、入れ歯に柔らかい裏打ち(軟性裏層剤、ティッシュコンディショナー)などを使用しているときは入れ歯の超音波洗浄器を使用できない場合があります。そのような場合はかかりつけの歯科医に聞いて指示をもらってください。
==
いかがでしたか?
入れ歯のお手入れをきちんとすると、入れ歯も長持ちしますし、入れ歯に付着した菌による体への悪影響も格段に減りますので、これを機にぜひとも入れ歯の洗い方をより良いものにしてみてください。

かなり盛り沢山でしたが、普段なかなか患者さんにここまで説明できない反省の意味も込めて、私の思いのたけを書きました。
正しく入れ歯を洗浄して快適な生活が出来るようにお祈りいたします!
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