
1歳6ヶ月健診でお口を見てもらったんだけど、「むし歯の罹患型」って何?一体どういう項目をどういう視点で見ているのかしら…。
歩いたり、言葉が出始めたりと発達が著しい1歳6ヶ月。
この時期に市町村から健診のお知らせが届きます。
この健診の中には歯科の項目も含まれているのですが、一体どのような項目がチェックされているのでしょうか?
今回は1歳6ヶ月でチェックされる歯科の健診項目と、この健診で得られた都道府県別の健診結果データ(虫歯にかかっている幼児の割合)についてもお伝えいたします。
1歳6ヶ月健診ってなぜ行われているの?
そもそもなぜ1歳6ヶ月健診は行われているのでしょう?

それは、母子保健法、という法律で市町村で検診を行うよう決められているためです。
この法律で記載されている
母親および乳幼児の口腔の疾患・異常の発生を予防し、母親の健康保持と胎児および乳幼児の発育をはかる
という文言に則って、満1歳6ヶ月を超え満2歳に達しない幼児に対して市町村が実施機関となって健診を行うことが定められているために、市町村の保健センターが主体となって実施しているのです。
1歳6ヶ月健診の歯科の診察項目
1歳6ヶ月健診で実施される歯科の健診項目は以下のものがあります。
問診
まずは問診を行います。
問診の項目は
- 家族構成
- 発育状況
- 運動状況、
- 虫歯ができるリスクの高い生活習慣がないか(砂糖の含まれた間食、間食の時間が決められていない、仕上げ磨きをしているか、フッ素入りの歯磨きをしているか、など)
- その他
です。
それと同時に母子手帳を確認し、虫歯のリスクが高くないか、その他歯の健康にかかわることはないかなどをチェックします。
お口の中のチェック
次にお口の中をチェックします
乳歯が何本生えているか
乳歯が何本生えているかをチェックします。
この時期に乳歯の生えている本数は個人差があるので、人より早い、遅いというのは気にしなくても大丈夫です。
しかし、明らかに認められる異常、たとえば
- 全く生えていない、などの萌出遅延
- 生まれた直後から生えている先天性歯、
- 通常生える場所とは全く異なったところに生えている異所萌出
などがないかチェックします。
う蝕(虫歯)
虫歯についてチェックします。
評価は下のような5段階に分かれています。
母子手帳にかいてある〝むし歯の罹患型”がこれに当たります。
それぞれどのような意味合いなのでしょう?
この5段階は、
- 虫歯のない状態をO型、
- O型の中でもプラークの付着が多いか少ないかの2段階、
- 虫歯がある状態はA,B,Cの3段階、
と評価しているのです。
それぞれの評価の詳細とそれに対しての指導方法を型別に以下に記します。
O1型 (虫歯がなくてプラークが少ない)
虫歯がなくプラークが少ない場合はO1型に分類されます。比較的虫歯にかかりにくいとされる分類です。現在は良い状態にお口の中が保たれているので、現状を維持するようにとお伝えされるのと、一般的な、お口の健康を守るためで気を付ける項目を守るように、と指導されます。
O2型(虫歯がなくてプラークが多い)
虫歯がなくプラークが多い場合はO2型に分類されます。今は虫歯はありませんが虫歯の発生の可能性が高いと思われる分類です。一般的な、お口の健康を守るためで気を付ける項目を守るように、と指導されることに重ねて、必要に応じては歯ブラシの方法の指導、半年以内に検査やフッ素塗布を受けるようにと指導されます。(市町村によっては半年後の2歳健診もおこなっているのでそこでフォローするところもあります)
A型(上前歯もしくは奥歯に虫歯がある)
上前歯もしくは奥歯に虫歯があるときにA型に分類されます。このままではう蝕が広がる可能性があるとされる分類です。サホライドなどのう蝕進行を抑える処置、治療を受けるようにすすめます。一般的な、お口の健康を守るためで気を付ける項目や歯ブラシの仕方は徹底的に指導されます。また、う蝕が起こる大きいリスクファクターである哺乳瓶で清涼飲料水などを飲む習慣があったらやめるように指導されます。
B型(上前歯および奥歯に虫歯がある)
上前歯および奥歯に虫歯がある場合をB型と分類しています。虫歯が広がる可能性が高いとされる分類です。虫歯治療をすすめられます。A型と同じく、一般的な、お口の健康を守るためで気を付ける項目や歯ブラシの仕方は徹底的に指導されます。また、哺乳瓶で清涼飲料水などを飲む習慣があったらやめるように指導され、甘いものを食べる習慣があったら十分注意するように指導されます。
C型(全体にわたって虫歯がある、全体になくても下前歯に虫歯がある)
全体、もしくは下前歯に虫歯がある場合をC型と分類しています。虫歯が徐々に広がる可能性が極めて高い分類です。歯科医院で可能な限り虫歯の治療をしてもらうよう指導されます。また、虫歯が出来る全身的な何かがあるのであれば小児科医にも相談することをすすめられます。一般的な、お口の健康を守るためで気を付ける項目や歯ブラシの仕方は徹底的に指導されます。また、哺乳瓶で清涼飲料水などを飲む習慣があったらやめるように指導され、甘いものを食べる習慣があったら十分注意するように指導されます。
歯の並びやかみ合わせ
歯の並びやかみ合わせについては、早めに専門の歯科医師に診察を受けたほうが良いような場合はチェックされます。
指しゃぶりなどの口腔習癖に関してもチェックされることがありますが、おおくの口腔習癖は3歳ごろまで様子見のことが多いのでこの時期はまだやめさせたりする必要はないことが大半です。
おしゃぶりは様子見ですが、2歳半までにやめさせるように指導することが多いです。
お口がポカンと空いている口唇閉鎖不全の場合は、お鼻で呼吸できない原因があるときは耳鼻科の受診をすすめられたり、ラッパを吹くなどお口の筋肉を鍛える方法を教えてもらったりすることがあります。
粘膜などの柔らかい組織の異常
歯ぐきや粘膜などの歯以外の柔らかい組織に異常がないか見ます。
歯肉炎や口の端がただれている口角びらん、ウイルスが原因の口唇ヘルペスなど・治療や経過観察が必要な異常や、明らかに異常がある場合をチェックします。
その他
例えば、
- 怪我をしている
- 口腔粘膜の創傷
- ひどい 口臭
- 必要な治療を受けさせず放置されている
など常識的に見て説明のつかない症状があった場合などは、例えば虐待の可能性など、なんらかのフォローが必要な場合があるのではないかとおもわれますので、そういう点もチェックします。
都道府県別の1歳6ヶ月で虫歯がある幼児の割合(罹患率)
1歳6ヶ月の歯科健診結果は実は一箇所で集計されています。
国立保健医療科学院という国の機関でまとめられており、
都道府県別でどのような傾向があるのか、歯科口腔保健の情報提供サイト、通称歯っとサイトで見ることが出来ます。
一例としてそのサイトに出ている平成26年のデータをもとに、都道府県別の1歳6ヶ月で虫歯のある幼児の割合をグラフに示してみました。
(平成26年全国乳幼児歯科健診結果)
横軸は都道府県、縦軸は虫歯を持っている幼児の割合(%)です。細かくなるので各都道府県の値は記載していませんが、元ページに行くと確認できます。
ちなみに全国平均は1.78%となっています。
これは割合が虫歯になっている「人」になっていますが、元のデータでは虫歯の総本数や他の検査結果についてもあらわされていますので、見てみたら面白いかもしれません。

1歳6ヶ月健診で疑問に思っていたことが解消されたでしょうか?お役に立てましたら幸いです!
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