妊娠中でも歯の治療って受けられるの?

妊娠出産と歯の関係 マタニティ歯科

 

「妊娠中って色々と制限される事柄が多いけど…。妊娠中に歯が痛くなったら、歯科治療を受けてもいいのかな?」

妊娠中はお薬や食べ物など、おなかの赤ちゃんのためにも通常では出来ることが制限されていたり、制限されていなくても大丈夫なのかどうか心配な事柄が多いですよね。その事柄の一つに歯科治療も挙げられるのではないでしょうか?実は、歯科治療は妊娠中でも時期や治療内容によっては可能なんです。本日は妊娠中の歯科治療についてお伝えしますね!

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妊娠中に歯科治療・予防処置はこれだけ出来る!

大まかにいえば、妊娠中では、例えば親知らずの抜歯やインプラントなどの大きく体を傷つけないものであれば大概の治療は可能です。以下に詳細を書いていきます。

①虫歯の治療

虫歯の治療は、1)麻酔、2)歯を削る 3)神経の治療(場合によっては)4)詰め物、かぶせ物による修復 が大まかな流れになってくるのですが、1)2)3)は時期(妊娠中期)を選ぶと可能です。4)に関しては時期を選ばなくても可能かと思うのですが、型取りなどをする場合は通常の人でも嘔吐反射が出やすい処置ですので、妊娠初期のつわりがある時期などは避けたほうが良いかもしれません。

②歯周病の治療

歯周病の治療は1)歯ブラシ指導 2)歯の表面を専用の機械を用いてお掃除(PMTC)3)歯面と歯ぐきの浅い部分をを機械でお掃除する(スケーリング)4)歯周ポケットの中のお掃除(SRP)5)歯周外科 がありますが、1)、2)、3)はどの時期でも可能、4)は時期を選んだら(妊娠中期)可能です。5)は歯ぐきを切り開いたり、投薬もしっかりしないといけないので妊娠中は避けます。

③矯正など

矯正など、妊娠前から引き続きされている方もいらっしゃるかと思いますが継続していても大丈夫です。ただ、妊娠中はつわりや歯肉炎が起こりやすくなったりとお口を良い環境に維持するのが難しくなるので、かかりつけの歯医者さんでお口のケアの方法を聞いたりプロフェッショナルケアを受けたりするなどの工夫が必要です。

④歯科健診

これは妊娠中どの時期にでも可能です。虫歯のチェックや歯周病のチェック、お口の生活習慣のチェックなどを行い、今のお口の状態が把握できます。出産までに治療しておいた方が良い項目なども分かるのでぜひ受診していただきたい項目です。

 

番外編:避けることが多い治療

前述しましたが、抜歯や歯周外科など、体への侵襲の大きい処置が必要な場合は、応急処置に留めて、出産後に時機を見て行います。

 

妊娠中に歯科治療が出来るタイミングは?

ズバリ、個人差はあると思いますが一般的に妊娠中期は麻酔や投薬も行う歯科治療が可能です。以下に妊娠時期に分けて出来ることを書いていきます。

妊娠初期(~5か月)

妊娠初期は赤ちゃんの体の器官が形成される時期です。この時期の赤ちゃんは薬物に対する感受性が高い時期です。大変デリケートな時期であることもありますので、この時期は投薬や麻酔の使用を伴うような、積極的な歯科治療は行わず、応急処置にとどめています。もし、麻酔や投薬が必要な治療をしなければならない場合は赤ちゃんに対するリスクを説明し、お母さんから同意をもらった上で治療を行います。

妊娠中期(妊娠5ヶ月~)

妊娠中期は赤ちゃんの体の器官の形成はほぼ完成し、大きくなっていく時期です。この時期は投薬や麻酔などの歯科治療が可能になってきます。

妊娠後期(妊娠8~10ヶ月)

この時期になるとお腹がだいぶ大きくなるので、診療時の姿勢(仰臥位)が苦しくなってくる人が出てきますので個人差で治療に耐えうるかどうかが差が出てきます。また臨月は、陣痛がいつ起こってもおかしくない時期なので治療は避けたほうが良いでしょう。

お薬、レントゲン、麻酔は大丈夫なの?

治療は大丈夫でも治療に使用するお薬、レントゲン、麻酔は赤ちゃんに影響はないのでしょうか?その仕組みと影響は以下の通りです。

①お薬について

お薬の赤ちゃんに対しての影響を考えるときは、「お母さんの体から胎盤を通じてあかちゃんに届く」かどうかを考えます。その考え方からいくと、塗り薬(外用薬)、特に歯科で使用されるような塗り薬は、その塗られた部分から数ミリ下の皮膚にまでしか作用しないので、赤ちゃんには影響がないと言えます。

では飲み薬(内服薬)はどのように作用するのでしょうか?影響はないのでしょうか?歯科で用いられる飲み薬は大体「抗生物質」と「解熱鎮痛剤(痛み止め)」です。この二つに分けて説明します。

①抗生物質

「お母さんの体から胎盤を通じてあかちゃんに届く」かどうか、という事なのですが、実は赤ちゃんの胎盤はお母さんの血液をそのまま赤ちゃんに受け渡しているわけではなくて、赤ちゃんに届けるもの届けないものを分けて届けています。胎盤で選別されて届くかどうかということを「胎盤通過性」という言葉で表していています。

妊娠中のお母さんは服用しても大丈夫、とされているのは、この胎盤通過性のないお薬です。抗生物質にも胎盤通過性のないものがあって、そのようなものを産科のガイドラインでも「安全性の高いもの」ということで「ペニシリン系やセファロスポリン系抗 菌剤は安全に使用できる」と記載されています。

この産科のガイドラインに則って歯科でも妊婦さんに処方しています。

実際によく出される抗生物質としては、ケフラールやセフゾン、となっています。

②解熱鎮痛剤

解熱鎮痛剤、特にNSAIDsと言われているものは、胎盤通過性があって、種類によっては(ロキソニン)胎児動脈管を収縮されるなどの作用もも足らすので、基本的には禁忌(使用しない)か使用するほうが有用性が認められるときにのみ投与、という事が多いです。

使用するとするならば、アセトアミノフェン系(商品名ではカロナール)が比較的安全とされており,産科ガイドライン上も「鎮痛剤としては妊娠中 も比較的安全に使用できるアセトアミノフェンが勧 められる」と記載されています。

③レントゲン撮影(エックス線)

エックス線も放射線なので、心配に感じておられる方も多いかと思います。放射線の赤ちゃんに対する作用が一番影響する時期は受精後から妊娠10週の間です。この時期に放射線量が50mgy以上だと通常の奇形発生率より増加します。しかし逆に50mgy未満の場合は通常の奇形発生率より上がることはありません。すなわち放射線による奇形のリスクはありません。

歯科パノラマX線撮影は放射線被曝は0.01mGy、歯の全顎X線撮影(14枚法)でも0.15mGyとなっており、リスクの上がる50mgyと比較したらごくわずかな量ですので安全に使用できます。

ただ、とても緊急性が高い場合以外、妊娠初期はレントゲン撮影は行わないかと思います。実施する場合はお腹の周りに防護エプロンを巻いて撮影します。

④麻酔(局所麻酔)

麻酔そのものは胎盤通過性があるのですが、歯科でよく使用されているはキシロカインという麻酔薬は血管収縮剤が配合されており、麻酔が注射された部位以外に拡散するのを妨げる作用の薬も配合されていますので、浸潤麻酔(歯や歯ぐきに作用させる部位に打つ麻酔)で通常量の範囲(カートリッジ2~3本)までなら特に問題はないとされています。

歯科医院を受診したらすぐ歯科治療がはじまるの?

受診したその日に歯科治療となると心の準備が‥と心配かと思いますが、当日は問診と必要な検査を行い、今の状態や時期などを考慮して治療計画が立てられ、しかるべき時期に治療がスタートしますので、いきなりその日に治療が始まることはないことが大半ですのであんしんしてください。痛みや腫れなど緊急性を伴う症状があるときも出来る限り応急処置で留めます。

妊娠中に歯科健診を受けておくことメリット

妊娠中の歯科治療は大変そうだな‥と思ったかもしれませんが、出産前までに歯科健診を受け歯科の治療を終わらせておくことは出産や生まれてくる赤ちゃんの虫歯の感染のリスクを減らす、といった点で大きなメリットがあります。

①出産までに虫歯が発見でき、治療することでお母さんのお口の中の虫歯菌が減ると赤ちゃんにも感染するリスクが減る。

虫歯は虫歯菌、ストレプトコッカスミュータンスという名前の細菌で、実は口から口へと感染します。虫歯菌が一番移りやすいタイミングは歯がはえている最中と言われ、そのためにその時期一番近くにいるお母さんから唾液を介して移る可能性が高いと言われています。

お口の中に虫歯の穴があると、その中には虫歯がないときと比較してとても大量な虫歯菌が存在することになるので、子供への虫歯の移りやすさが格段に上がってしまいます。

ですので、生まれてくる赤ちゃんに移さないようにするためにも虫歯は治療しておくに越したことはありません。

②妊婦さんに歯周病があると早産のリスクが上がる

アメリカでの研究では、妊婦さんに歯周病があった場合、ない場合と比較して、7.5倍、初産の時は8倍も早産のリスクが上昇するという事が分かりました(J Periodontol,67:1103-1113,1996)。歯周病の原因は細菌です。歯科医院で適切な治療を受けたら歯周病は改善しますので、ぜひ出産前に歯周病の治療を行ってほしい所です。

産科のガイドラインでも「妊娠時の歯科健診」は推奨されています。

2011年に産婦人科学会が 「診療ガイドライン産科編2011」というガイドラインを刊行したのですが、その中でも、CQ505「妊婦のう歯・歯周病につ いては?」のAnswerとして

「妊娠中は歯科疾患 が進行しやすいので,う歯・歯周病について相談を 受けたら歯科医受診を勧める。(推奨レベルB:実 施することが勧められる)」

といったように、医科(産婦人科)の方面からも歯科健診の有効性は推奨されています。また、市町村によっては歯科健診への補助が出るところもありますので、是非とも活用してみては、と思います。

歯医者さんのおすすめする妊娠中の歯科医院のかかり方

私としましては、まずは、”何もなくても妊娠したら歯科健診を受診すること”をお勧めします。痛みや違和感を感じていなくても虫歯や歯周病が進行していることがあるからです。程度の軽い虫歯でしたら一ヶ所一回の治療で済む事も多いです。

また、つわりなどでお口のケアが難しい方も多いと思いますので、プロの手を借りてお口の中をきれいにしてもらうという手段を取るのもお口の中の健康を保つ一助になるかと思います。

そのような歯科健診を妊娠初期、もしくは中期のはじめ頃に受けておくと、その中期に入った頃位に治療の予約が取れるので、出産までに治療に充てられる時間も取りやすくなることが多いかと思います。

 

このように、妊婦さんでも歯科治療を受けることが出来ます。実際受けに来られている方も少なくはありませんので、どうぞ、気になる方は一度歯医者さんに行ってみてくださいね!

 

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