
「歯周病は菌が原因です」って聞くけど、だったら菌を殺す抗生物質があるんだから、それを使ったら別に歯医者さんに通わなくっても歯周病は治るってことじゃないの?
歯周病は菌が原因ですし、確かに歯周病菌に効果の高い抗生物質があるのは事実です。
しかし、では抗生物質の投与だけで治るか、といったらそれはNo。 きちんと歯科医院に通って受ける歯周病の治療をしないと治らないんです。
今回は、歯周病はなぜ抗生物質だけだと治らないのかを解説していきますね〜!
- そもそも歯周病とは?
- 歯周病は菌が原因 代表的な菌も分かっているんだけど、代表的な菌そのものはとっても弱い。
- 菌はお互いの弱い所を補い合いながら塊になる(プラーク)
- プラークが歯と歯ぐきの間に蓄積すると、歯ぐきの奥の酸素が減り歯周病原菌の住みやすい環境になる
- 歯周病の原因除去は、菌の除去=プラークや歯石を取り除くこと
- 抗生物質は「菌」は退治できても、塊になったプラークや歯石の除去はできないので抗生物質のみの治療は片手落ち
- 歯周病の原因は物理的に取り除く処置(歯周治療)が必要
- 歯と歯茎の境目のプラークを取り除き、空気に触れさすためにも普段のホームケア(ハミガキ)はとっても重要!
- 結論:歯周病は抗生物質だけでは治りません。プラーク、歯石を取る歯周治療と普段のハミガキが必須です。
そもそも歯周病とは?
皆さんは歯周病、と聞いてどんな状態を想像するでしょうか?
昔使われていた「歯槽膿漏」みたいに膿が出たり、腫れたりをしょっちゅう繰り返す病気だというイメージを持っている人が多いかと思います。
でも、実は歯周病はそのような、膿が出たり腫れたりという症状が出る前から罹っている場合が大半です。

実は、歯周病にかかっている期間のうちの大半か無自覚、もしくは歯ぐきから出血するなどの軽い症状しかないのです。
しかし、この無自覚、および軽い症状の期間に着実に進行しています。何が進行しているかというと、

歯ぐきの骨が溶けていく、という現象です。
実は、歯周病は長い間何が原因で起こるのかは分かっていませんでしたが、近年(1960年代)に菌が原因で起こる、という事が解明されてきました。
なんでこのように無自覚、あっても軽微な症状しかないのか?という事なんですが‥
実はこの菌は身体にとってメチャメチャ有害という認識がされないため、身体が敵だと認めず積極的に追い出す(=いわゆる腫れたり膿が出たりという炎症反応)ことはしません。
そのためにいつまでも同じ所(歯周ポケットの奥の方)にずーっと定着しています。
でもゆるーく追い出す反応は起こっています。
起こっている当人にとってはほとんど認識できないくらいの無自覚な反応なのですが、この反応の影響の一つとして、「じわじわと菌の周りにある骨を溶かす」というものがあるために骨が溶けて行ってしまうのです。
歯周病は菌が原因 代表的な菌も分かっているんだけど、代表的な菌そのものはとっても弱い。
歯周病は、はるか昔4万年前の人類の化石から見つかるくらい昔から存在する疾患なのですが、実は長らく原因が分かっていませんでした。
どうやら細菌が歯周病の発症と関係があると分かってきたのは1960年代に入ってからのことです。
歯周病の原因である歯周病原菌は現在800種ほど分かってきており、その中で一番代表的なものがポリフィロモナス ジンジバリス(p.gingivalis)と言われる菌です。
この菌は実はとても弱弱しく空気(酸素)がない所でしか生きることが出来ません。
血液を餌にして細々と生きていて、歯周病を引き起こすくらい増殖するには菌にとって整った環境がないとすぐに死んでしまいます。
でも実際は歯周病は実際存在するし、菌も生きていますよね。どうして存在できるのでしょう?
菌はお互いの弱い所を補い合いながら塊になる(プラーク)
お口の中には本当にたくさんの種類の菌が存在しているのですが、それぞれの菌が全く独立して存在しているわけではなく、それぞれの菌が助け合いながら生きています。
また、身を寄せ合って生きていくことが出来るように、それぞれの菌が、例えば、菌の表面にくっつきやすくなるたんぱく質を出していたり、粘着性多糖体というねばねばした周りにくっつきやすくなる構造物を分泌したり、とかく菌が寄り集まりやすい物質を分泌しています。
そういうものを利用しながら、まずは歯にくっつきやすい菌が歯にくっついて、足場を作り、その表面に空気が好きな菌がねばねばを出して、くっつき、そしてその下に空気の嫌いな菌がくっつき…という事を繰り返して菌の集合体を作ります。
これがいわゆるプラーク(歯垢)と言われるもので、歯についている白いねばねばとした物体です。
プラークという集合体は、菌を色々なものから守ってくれます。例えばプラークの表面に殺菌、消毒剤をかけても内部までは浸透しません。また、本当に成熟したプラークになると歯ブラシをしても取りにくいです。このような、菌にとって過酷な環境からプラークは守ってくれます。
通常の環境では酸素があって生きられない、という菌もこのようなプラークから守ってもらえます。プラークのどこかに酸素濃度の低い場所があるので、そこを利用して生き延びることが出来るからです。
プラークが歯と歯ぐきの間に蓄積すると、歯ぐきの奥の酸素が減り歯周病原菌の住みやすい環境になる
プラークはそのままにしておくと、どんどん増殖していきます。
歯の面や歯と歯ぐきの間、くまなく増えていくのですが、特に、歯と歯ぐきの間に蓄積していくと、この部分がどんどん酸素の少ない状態になり、酸素を嫌う菌が住みやすい状態になります。
特に、歯周病原菌は空気を嫌い、血液を餌とするタイプの菌なので、絶好の環境です。今までは息も絶え絶えで生きてきた歯周病原菌もとても活発に増殖し始めます。
歯と歯ぐきの境目の隙間のことを歯周ポケットというのですが、この歯周ポケットが4㎜以上になってくると、歯周病原菌が活発に増殖できる環境になってきます。
こうなると歯周病原菌は力が増し、歯周ポケットの奥の方で弱いながらも炎症を起こし、じわじわと歯周ポケットが深くなるような影響を及ぼしながら増殖していきます。
歯周ポケットが4mm以上になると歯ブラシだけでは歯周病原菌を除去することが不可能に
このように歯周ポケットが4㎜以上になると、歯ブラシなどのプラーク除去ではポケットの奥の部分までは到達できません。
歯科医院で専門的な器具を使い、歯周病原菌のいる深さまで直接アプローチしなければ歯周病原菌を取り除くことは不可能です。
プラークにカルシウムが沈着すると「歯石」になりより強固に歯面にくっつく
また、プラークは長時間同じ場所にとどまっていると、唾液の中に含まれているカルシウムがプラークの中に沈着し、「歯石」になります。
歯石はプラークより硬く、強固に歯に接着するので、これもまた歯科医院で専門の器具を使用しないと取れない、ということになります。
また歯石は歯周ポケットより上についているものと歯周ポケットより下についているもので性質が異なっています。
歯周ポケットより下についているものは「縁下歯石」と言われ、血液や歯周病原菌が混在し、歯周ポケットより上部についている「縁上歯石」と比べてとても病原性の高いものになっています。
歯周ポケットの中に少しでも残っていると歯周病が治らないので、歯周病治療においては取り残しのないよう除去すべきものとされています。
歯周病の原因除去は、菌の除去=プラークや歯石を取り除くこと
このように、歯周病においては、原因は菌ではあるのですが、この菌が住処としているプラークや歯石そのものをを物理的に取り除かないといけません。
抗生物質は「菌」は退治できても、塊になったプラークや歯石の除去はできないので抗生物質のみの治療は片手落ち
なぜなら、抗生物質は「菌」一匹一匹は退治できても塊になっているプラークや歯石の内部まで浸透して退治できるといった作用は期待できないからです。
確かに、中にはプラークの内部まで作用することを謳った抗生物質や殺菌剤はあります。
しかし、そのような抗生物質や殺菌剤を使用したとしても、プラークをや歯石を取り除けません。
歯周病菌が増殖しやすい環境は残ったまま。結局そこから再発することとなるでしょう。
もちろん歯肉の中に入り込んでいる歯周病原菌には抗生物質が効果があるとは思いますし、実際にジスロマックなど歯周治療のオプションとして抗生物質が使われることもあります。
しかし、抗生物質のみの治療は真の原因を取り除く治療とはなっていないので、あくまで併用と考えたほうが良いでしょう。
歯周病の原因は物理的に取り除く処置(歯周治療)が必要
このように、歯周病の原因である、プラークや歯石を取り除く治療が歯周病を効果的に治すのに一番の近道であり、本道です。
歯科医院では主にこの治療、いわゆる歯周治療を行っています。
スケーラーという機械を用いてプラークを除去したり、歯周ポケットの深い部分や歯ぐきの下についている歯石は手で使う器具を用いて除去します。
歯周治療の一番の目的は器具で直接プラークを掻き出し、中の歯周病菌を減らすことです。
それに加えてプラークを取り除き、歯周ポケットの内部を空気に触れさせるという狙いもあります。
抗生物質だけ使用しても、菌が暮らしやすい環境が残っていたら結局また増えてしまいます。ですので、歯周治療は歯周病を治すためには必須の治療です。
歯と歯茎の境目のプラークを取り除き、空気に触れさすためにも普段のホームケア(ハミガキ)はとっても重要!
また、歯周治療を行った後も、「歯周ポケットに酸素がない状態」を作らないことがとても大事になってきます。
こうならないようにするためには「普段のハミガキ」がとても重要になってきます。
普段のハミガキで歯と歯ぐきの間にプラークがたまらないように日々除去することで再び歯周病になることを抑制できます。
結論:歯周病は抗生物質だけでは治りません。プラーク、歯石を取る歯周治療と普段のハミガキが必須です。
このように、歯周病はその病気の元がプラークであるために、抗生物質だけでは根本的な治療ができません。
ぜひ、気になる方は歯科医院に行って歯周治療を受けてみてください。
少しややこしいお話でしたが、お役に立てれば幸いです!
★★オーラルケアまめ知識★★
◎歯周病で歯ぐきが痛くて歯磨きするのが辛いときは柔らかめの歯ブラシで歯ブラシの先がしならない程度の優しい力で。
◎歯ブラシだけではプラークの蓄積しやすい歯と歯の間の汚れはなかなか取れません。ぜひフロスも使用してみてください。
フロスは、だいたいひじの長さで切り、両方の中指にくるくると巻き付け、指と指の間のフロスの長さは10~15cmほどにします。
この10~15cmの長さのフロスの端を人差し指と親指で掴むようにして持つと、扱いやすく使えます。上から入れて、歯と歯の間と、歯ぐきにも少し入れ込むようにして使用してください。
最近はこのフロスが気に入っており使用しています。歯と歯の間に入れやすく、適度に膨らみプラークをからめとってくれます。
◎泡立ってしまって磨けているのかよく分からない・・という方は液体歯磨きをつかってみるのもいいかもしれません。液体歯磨きは泡立ちがなく磨きのこしが分かりやすいです。また、液体歯磨きはペースト状の歯磨きより薬効効果が高い傾向にあります。
私は香味と抗菌成分の効果の高さのバランスが良い、このリンスを好んで使っています。
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