
いやだなあ…。なんだか最近冷たいものを食べると歯が痛くなるし、穴も開いているような…。虫歯かなあ?でもなかなか歯科医院に行きたくないな。。このまま放置してて大丈夫?
と思っているあなた。
残念ながら、、、

虫歯を放置していても、良くなることはありません。
もしかしてあなたの虫歯は今痛くない状態なのかもしれません。
しかし、それも、決して治ったわけではありません。
むしろ、歯を残すのが難しくなってしまっているのかもしれないんです。
今回は、「虫歯を放置したらどうなるの?」というテーマで、虫歯の進行具合とその時に生じる症状、進行具合に応じた必要な治療方法について詳しく解説したいと思います。
虫歯はこのように進行していく!進行別症状と治療法
虫歯はずっと同じように痛い訳ではなく、痛くない時期もあります。

歯が痛いから治療が必要、歯が痛くないから治療が必要ない、という訳ではないんですね。
でも、残念なことに、痛い痛くないに関わらず、どのような症状であれ、虫歯はなんらかの治療が必要である事が多いです。
また、虫歯は進行の度合いによって治療回数が変わってきます。
はじめの段階でしたら、虫歯は1回の治療で治る事が多いです。
でも、放置していると、虫歯が進んでしまい一本の歯につき10回ほど治療回数をかけないと、治らない、ということにもなってきます。
もっと放置して虫歯が進行しすぎて「歯を残せない、抜歯するしか無い」となったら、
「歯を抜く治療」に加えて「歯を補う治療」をしないといけないので、さらに治療回数がかかる、ということにもなりえます。
結局、虫歯の治療は

もしかして、、と虫歯を疑った時にすぐ歯医者さんに行ったほうが治療は早くすむ、ということになります。

でも、虫歯でもないのに歯医者さんに行ったら迷惑がられるんじゃないの?

そんなことはないですよ。虫歯でなくても予防方法をお伝えしたり、歯医者さんでは健康な歯にすることがたくさんあります。
どのような状態でも、歯医者さんに来ていただければ適切な対処が出来ますので、臆すること無く来ていただければと思います。
第0段階:痛くない

それではここから虫歯を放置するとどのようになるか、症状や状態など段階別にあげていきます
一番はじめは、虫歯は痛くありません。歯の表面が虫歯菌で溶けてきて、エナメル質、という歯の表面が溶けてきます。歯の表面が白く濁った状態(白濁)してきます。
この段階ではほとんど痛みはありません。
歯の表面だけの虫歯でしたら、フッ素入りの歯磨き粉やフッ素塗布などで、「再石灰化」といって歯の表面が修復することも可能です。
第1段階:虫歯が神経に近付き、しみてくる
象牙質に虫歯菌がおよぶと痛みが出てきます
さらに虫歯が進行すると、虫歯の穴ができてきます。
歯の一番表面である「エナメル質」を溶かしてさらにその奥の「象牙質」というところまで虫歯が進んでいいきます。
象牙質は痛みを歯の中に存在する神経に伝える働きを持つので痛みが発生します。
痛みの種類は「冷たいものでしみる(冷水痛)」「噛んだら痛い(咬合痛)」など
痛みに関しては個人差はあります。
本当に個人差の多い所なので神経のところまで虫歯が到達していても痛くない、なんてこともざらにあります。
虫歯の部位と神経が遠いと痛みは小さく、近付いてくるにつれ痛みは感じやすくなることが多いです。

痛みの感覚の表現でよく聞くものは「冷たいものでしみる」「噛んだときに痛い」などです。
この場合の治療は虫歯の部分の除去と虫歯で失った部分を補う処置(インレー、レジン充填)

この段階は、まだ神経は虫歯菌に侵されていませんので、虫歯のある実質(象牙質)の部分の治療で済みます。
虫歯治療の際、自分の思っていたより大きく削られてしまった…。と思うかもしれません。
でも虫歯は中で広がっていることが多いのです。

ちゃんと虫歯菌に感染している所以外取らない工夫もしているのでご安心を
象牙質の部分からすべて虫歯を取り除き、そのあとに虫歯のために失った部分を補うために、
レジン充填、という樹脂を使った即日でできる詰め物をしたり、
インレーといった金属や白い歯科材料を使った技工所など歯型を基にして作製する詰め物などを用いて治療を行います。
この場合はレジン充填のときは1回、インレーの時は2,3回の治療回数がかかります。
似た痛みに「知覚過敏」があります
虫歯ではないけれども似たような感覚を持つ痛みとして「知覚過敏」があります。

知覚過敏は冷たいもので痛みが出ることが多いです。
知覚過敏も象牙質が神経に痛みを伝えることにより生じますが、虫歯のように細菌が感染しているわけではないので、その部分は虫歯治療ではなく、知覚過敏の治療が行われます。
第2段階:虫歯が神経に到達し、激痛が起こる
神経に到達するまえでも温かいものでもしみてきたら要注意!「歯髄炎」の症状が出てきています。
象牙質の中で虫歯が大きく、神経に近くなっていくと、神経が虫歯菌が近くにいることの刺激により、炎症を起こし始めます。

これを「歯髄炎」と言います。
「歯髄炎」の初期の痛みは「冷たいものも熱いものもしみる」
歯髄炎の初期でよく感じられる痛みとしては、冷たいものだけでなく熱いものもしみる、(温水痛)といった症状があります。この状態は歯髄に炎症が起こり始めたとき(可逆性の歯髄炎)でよく見られます。
「歯髄炎」が更に進むと、神経が菌に侵され、激痛が生じる
「熱いものも冷たいものもしみるなあ」という時期を越したら、次は激痛になります。
このイラストは虫歯の断面図です。赤い管が神経です。(正確には神経と血管が合わさったものです)
虫歯菌が神経に感染すると、
- 神経が虫歯菌に攻撃されて痛みを感じる
- 免疫細胞が神経に炎症(腫れ、痛み)を起こす。
と、なり、猛烈な痛みが生じます。
また、神経は、歯の中の狭い空間(歯髄腔)の中にあります。
歯の神経が虫歯菌に感染すると、その周りにある血管が腫れ上がり、神経が圧迫されて狭い空間でぎゅうぎゅうになり、さらに激痛が増す、といったことになります。
虫歯が神経に到達していたら、神経の治療(抜髄)が必要です。
この段階の歯は、神経の治療が必要です。

これを専門用語で「抜髄」といいます。
抜髄は、
- 虫歯に感染した歯髄を取り除く
- 虫歯で汚れてしまった神経の管(歯髄腔)をきっちりと無菌にする
という目的でおこないます。
虫歯菌で汚れてしまった神経の管をきれいにするためには、治療が3~4回はかかります。
また、神経の管をきれいにして最終的な薬を詰めた後にも、歯の中を充填する処置やかぶせ物を作る処置も必要になってきます。
関連記事 神経の治療の後の「土台」について↓

ですので、一つの歯で10回くらいの治療回数が必要と思っておいてください。
虫歯は細菌です。神経に感染すると残す事が出来ません。

歯髄炎もほんの初期で、まだ虫歯が歯髄に感染していない場合は神経の治療をしなくてもいいことがありますが、まれです。
歯の中にある神経は、その中が無菌でないと、早かれ遅かれ痛みが出て神経が死んでしまいます。

痛みがなくても神経のところまで虫歯が来ていたら神経は無菌でいられないので結局痛みが出て死んでしまうのです。
そのために、残念ながら、虫歯の程度によっては痛みとは関係なく神経を取ることもあります。
第3段階:虫歯が神経を死滅させるために以前ほどは痛くなくなる。
ものすごい激痛を耐えると痛みがなくなる!?
このように、歯髄炎は直接神経に感染・炎症が起こるのでものすごい激痛を生じます。

しかし、それでも放置していたら、なんと激痛がそのうち収まってきます。

しかし、それは決して虫歯が「良くなってきた」訳ではありません。
痛みがなくなったからといって虫歯が軽くなった訳ではありません!神経が死んでしまい痛みを感じなくなっただけ。
何で痛くないかと言ったら、

今まで痛みを伝えてくれていた歯の神経が死に、痛みを伝えなくなったからにすぎません。
ここまでくると痛みはほとんど無くなってきます。

しかし虫歯菌がいなくなったわけではなく、さらに歯をむしばんでいます。
神経が死んだ、という事は歯の中に通っていた血管もなくなってしまったという事です。
歯の中の血管は神経を生かしておく作用だけではなく、歯に栄養を供給する役目もあったので、血管が無くなった歯は脆くなってしまいます。
そのような中で虫歯菌がいるのでますます活発に虫歯が進行していきます。
痛くなければ放置していてもいいの?そんなことは絶対ありません。
なので、

「痛みの山を越えたので、後回しにしよう」というのはとても危険な行為です。
虫歯はさらに進行していますので一刻も早く歯科医院に行ってしかるべき処置を受けたほうが良い状態です。
この際に行う治療は神経の管の中の菌を取り除く「感染根管治療」
このように、歯の神経が死んだ状態の歯は、歯の根っこの隅々まで菌が感染している場合が多いです。
歯の根の中も虫歯になっている、と想定しての治療になります。

これを「感染根管治療」といいます。
使用する器具はほぼ抜髄処置と一緒ですが、神経の管の入っていた根の中も感染している想定で行うので、歯の根の中も内側から虫歯治療のように削り、健全な部分だけを残します。
第4段階:虫歯が神経の根っこに感染し、炎症が起きる・膿の袋が出来る。
痛くないまま放置していると虫歯(菌)は根っこの先のほうまで及び、歯茎の骨に感染、炎症を起こす(根尖性歯周炎)
それでもまだ放置しておくと…。
虫歯菌はどんどん根の先のほうに進行していき、ついには根の先から出てきます。

そして根の先が腫れたり、膿が出たりします
根の先は歯ぐきの骨(歯槽骨)です。
歯槽骨に虫歯菌が感染して歯の根の先に炎症が起こります。これを「根尖性歯周炎」と言います。
根尖性周囲炎で見られる症状は「噛んだら痛い」「違和感がある」
歯髄炎のように直接神経がやられるわけではないので激痛ではないことが多いのです。

よく言われる症状としては、「噛んだら痛い」「違和感がある」などがあります。
また、肩こりや疲れた時などだけ出ることがあります。
なぜなら、この状態は小康状態を保つことが多く、体の免疫力が通常状態の時は症状を感じないくらい虫歯菌が抑えられているけれども、体の免疫力が通常より落ちた時に菌が元気になって症状がでるからです。
そのまま放置していたら膿の袋が出来ることがある(歯根嚢胞)
また、このように炎症を繰り返していると、根の先に膜につつまれた膿の袋が出来ることがあります。これを歯根嚢胞と言います。
この時行う治療は「感染根管治療」、膿の袋の状態によっては小手術で袋を摘出することも(歯根嚢胞摘出)
このような状態の際に行う治療もその前段階の状態と同様に「感染根管治療」を行います。
根っこの先の炎症の元は根っこの管にいる菌が原因なので、感染根管治療が奏功すると炎症も消えます。
ただ、根の先に炎症が起こると菌が治療が届かない部分まで及んでいることも多く、治療が難しかったり、再発したりする可能性も高くなります。
第5段階:虫歯は歯の根っこの深い所まで進行し歯を残せない状態になる。
さらに放置しておくと、歯の根っこが完全に虫歯で侵されてしまいます。
根の先のほうまで虫歯になってしまったら、その歯を残しておく事は他の歯や歯ぐきに悪影響を及ぼしますので「抜歯」(歯を抜く)処置が必要になってきます。
歯を抜いたところはそのままにしてしまうと、これもまた大変なことになってしまいますので
(過去記事↓)

歯が抜けた所を補う処置をすることになります。
第6段階:虫歯が顎の骨まで到達し、骨の炎症が起きる
時として顎の骨に感染が及ぶことも(顎骨骨髄炎)
根っこの先の炎症や膿はそれより先には広がらないことが多いのですが、まれに菌が顎の骨にまで及び、顎の骨で炎症が生じることがあります。

これを「顎骨骨髄炎」と言います。
顎骨骨髄炎の症状は急性や慢性のもので異なりますが、激痛や発熱を生じる事があります。
顎の骨まで感染が及んだ場合は専門科(口腔外科)での治療が必要
このような状態になったら、感染した骨の除去など、一般の歯科医院では行えない処置を行う必要があるので、専門に行っている大きい病院の口腔外科等での治療が必要になります。
神経が残せるのは無症状~少ししみるな、位の時が多い。
虫歯の治療を行う際、歯医者さんは出来るだけ「神経を残したい!」という気持ちを持って治療に臨みます。

しかし、正直なところズキズキといった痛みが出るときはもう手遅れといったときが多いです。
痛みは人によって個人差がありますが、結局無症状から少ししみるな、といった時期でないと神経が残せないときが多いのが実情です。
自覚症状がある時は出来るだけ早く受診をおすすめします

神経が残せないんだったらいつ治療しても同じなのでは・・・?

それは違いますよ。処置が早いほど歯を残せる可能性が高くなりますし、虫歯を放置しておくとお口の中全体が虫歯になりやすい環境にもなります。
早い時期で受ければ受けるほど虫歯による影響が少なくなるので、やはり、出来るだけ早く受診するほうが歯を残すためには良い選択だと思います。
予防によって「進行を遅らす」「様子を見る」事が出来るのは初期虫歯で発見できた時

出来るだけ歯みがきで進行を遅らせたい、様子を見たい
と思うかもしれませんが、

予防処置で進行を遅らす事が出来るのは「エナメル質」という歯の表面の硬い部分でゆっくりと進んでいる虫歯に限られています。
そもそも様子を見る状態でいい、ということはほぼありませんので、どっちにしても一度歯科医院で見てもらうほうが得策です。
歯科医院を受診するタイミングは…?症状が出ている人は今、症状が軽い、感じない人も一度歯科医院に行ってみては?
ということで、

歯医者さんに行くんだったら、今です。
それこそ「虫歯がないんだけど歯科医院に行ってもいいかなあ」というくらいの軽い気持ちでも歯科医院に行って一度チェックを受けたほうが良いかと思います。
虫歯は、時間が経つほど進んでいってしまうので、出来るだけ早いタイミングで受診することをお勧めします。

いかがでしたか?少しでも疑問を解決するお手伝いが出来たら幸いです!
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