「うわっ、寒いこの季節になったら、冷たいものとかで歯がしみるんだよな‥。歯ブラシあてても痛いし。知覚過敏っていうのかな?どうやったら治るんだろう?」
油断した時に来るピリッとした歯の痛み、とても嫌ですよね。このような痛みは「知覚過敏」という症状が引き起こしている可能性があります。あなたのその痛みも知覚過敏の適切な処置を行えば痛くなくなるかもしれません。今回はそのような知覚過敏の原因、治療法、お家での対応法を今たくさん出ている知覚過敏専用の歯磨き粉などの情報も加えてお届けいたします。
知覚過敏の症状、原因にはどのようなものがあるの?
「知覚過敏」ってよく聞きますけど、どのような歯の状態のことを言うのでしょうか?今から症状、発生する原因について順にご説明していきます。
知覚、主に歯ブラシのような機械的な刺激や冷たいものでしみるようになる
知覚過敏とは、神経が生きている歯(生活歯)が色々な刺激に敏感になっている状態のことを言います。
例えばよく起こるのが冷たいものによる刺激、それ以外にも歯ブラシが当たることによる機械的な刺激、甘いものなど、歯の表面の浸透圧が変わることによる刺激により痛みが引き起こされます。
知覚過敏の痛みはピリッとした一過性の痛みが特徴。
知覚過敏が引き起こす痛みは、ピリッとした一過性の痛みが特徴となっています。痛みを引き起こす歯のトラブルに虫歯がありますが、虫歯で引きおこる痛みは、ジーン、と数十秒ほど持続するのが特徴です。知覚過敏の時とは少し異なります。
歯の内部の象牙質と言われるしみやすい部分がむき出しになり知覚過敏になる
では何で歯が刺激に敏感になってしまうのでしょうか?この原因は歯の内部の「象牙質」と言われる部分がむき出しになってしまったことによります。
上の図は歯のイラストですが、歯の頭の部分の下に黄色い根っこが見えています。この色の異なる黄色い部分は「象牙質」と言われる部分になっています。歯の頭の白い部分は「エナメル質」と呼ばれています。この「象牙質」という部分はもともと歯ぐきの中にあり、本来は身体の表面に直接出てこない部分です。
エナメル質は、主にカルシウムからできていて、結晶構造になっており、歯の表面を硬くコーティングしている役割を持つのですが、象牙質は表面がエナメル質ほど硬くはなく、また、神経に刺激を伝達しやすい構造になっています。象牙質は表面は見えていますが、知覚過敏の象牙質は虫歯などには侵されておらず、健康な状態です。
知覚過敏の起こる原因
では、なぜこのように象牙質が露出してしまうのでしょうか?その原因を考えてみましょう。
歯周病などで歯ぐきが下がる
多いのは、歯周病が進み、歯茎の骨を溶かす事によって歯ぐきが本来の位置より下がり、歯の根っこが見え、象牙質の部分まで露出してきてしまう事です。一見歯が伸びてきたように見えます。
ブラッシング圧が強く歯肉が退縮し歯ぐきが下がる
歯周病が無くても、ブラッシングのために歯肉が退縮することがあります。ブラッシングの圧が強いとその刺激で歯肉が退縮してしまい、その結果は歯ぐきが下がって象牙質が見えてしまいます。
エナメル質が欠けてくる
実は、かみ合わせの癖でいつも強く力が掛かると、歯と歯ぐきの境目くらいのエナメル質が欠けてくることがあります。そのために象牙質が露出し知覚過敏が起こることがあります。
歯が割れてきてひびからしみる(咬合性外傷)
歯と歯ぐきの間の部分でなくても、噛み合わせの癖で歯全体にひびが入り、その隙間から刺激が伝わり、中の象牙質に到達するために知覚過敏を引き起こすこともあります。
噛んでいて歯がすり減る、歯にひびが入る(咬耗)
かみ合わせの癖がなくても、噛む力(咬合力)が強い人ははのかみ合わせの面がすり減ってきたりすることがあります。長年かけて起こるので、あまり感じない人も多いですが、人によっては知覚過敏を引き起こすこともあります。
知覚過敏の治療法
知覚過敏だ、と分かったら歯科医院ではどのような治療がされるのでしょうか?知覚過敏の強弱、治りにくさなども加味して以下の治療がなされます。
レーザーを当てる
歯科で使用しているレーザーは出力を変えることで色々な用途に使うことが出来ます。知覚過敏の治療に適した出力で象牙質に充てることにより、象牙質表面の形状を変化させ、神経に刺激を伝わる入口を封鎖することが出来ます。
シミ止めを塗る
知覚過敏の原因は象牙質が歯の内側の神経に刺激を伝えてしまう事によって起こります。
実は、象牙質には神経に刺激を伝える管(象牙細管)があって、それの入り口が開いているので痛みを伝えてしまう、という事になっています。ですので、まずは第一にその入り口を封鎖するためのシミ止めの薬をぬります。
MSコート Hysブロックジェル
このようなジェル等の薬剤を象牙質に塗ることで、薬剤が象牙質の表面の痛みを伝える入り口を封鎖します。
樹脂を詰める
このようなシミ止めでも痛みが治まらない場合、もう少し物理的にしっかりと封鎖するために、コンポジットレジンという樹脂を使用して露出している面を封鎖します。
神経を抜く
上記の治療を行っても知覚過敏が改善せず、日常の生活にも支障をきたす場合は、痛みの原因になっている歯の神経を抜くこともあります。
知覚過敏は治らない?
知覚過敏は人によってかなり大きな個人差があります。一回の治療で治る人もあれば、同じ治療を数回繰り返して治る方もおり、様々です。
知覚過敏が治りにくい人は確かにいますが、神経を取ると最終的には痛みは治まります。ただ、神経を取った歯はどうしても脆くなるので、出来るだけ手を尽くしてからの最終手段という事になります。
また、見た目では知覚過敏に見えていても痛みが止まらず仕方なく神経の治療を行ったら微細に入った歯のひびが思ったより大きくそこから細菌が感染して歯髄炎になっていたり、実は見えていないところで虫歯になっていたり、という事もあります。
自宅でできる対処法は?
歯科医院で治療は出来ますが、家でのお手入れの中にも知覚過敏を少しでも良くするケア方法がありますので、次にあげていきます。
自宅でできる対処法その1:優しくブラッシングし汚れを落とす
「痛いから磨いていなくて‥」という人がいるのですが、実は磨かずにそこにプラークがたまると、そのプラークが刺激となって痛みが増す場合があります。ですので、知覚過敏があっても、できるだけその歯の汚れは落としましょう。
柔らかい歯ブラシでブラッシングを行い、ぬるま湯でうがいをするようにしてください。
自宅でできる対処法その2:知覚過敏用の歯磨き粉を使用する
次に行える対処法は歯磨き粉によるケアです。
知覚過敏の歯磨き粉が知覚過敏を抑制するのは、「硝酸カリウム」という成分イオンが歯の痛みを感じる歯の神経細胞の興奮を抑制する、という仕組みになっています。
ではその硝酸カリウムの濃度ですが、どのくらいの濃度があったら有効なのか、過去のデータを探したところ
本邦における5%硝酸カリウム配合歯磨剤の象牙質知覚過敏に対する臨床効果を調べるために, 74名の被験者を対象に37名を試験群, 37名を対照群として, 擦過刺激試験, 冷気刺激試験, 自覚評価の3種類の診査項目について二重盲検法を行なった。試験群すなわち硝酸カリウム配合歯磨剤使用群では, すべての診査項目において反応や症状の改善または消失が著明に認められた。その診査数値の減少率は使用後4週, 8週, 12週において, すべて対照群よりも有意に高かった。試験群で症状が改善した被験者数は, 2週目で44%, 4週目以降では80%を越え, 症状が消失した被験者は, 8週目で42%, 12週目で56%に達した。また, とくに問題となるような副作用は認められなかった。これらの結果から, 5%硝酸カリウム配合歯磨剤が, 象牙質知覚過敏の症状緩和に適した歯磨剤であることが明らかとなった。
(日本歯周病学会誌 34 巻 (1992) 2 号 p. 465-471)
と、硝酸カリウム5%配合しているものがどうも象牙質知覚過敏に効果があるようです。
で、その濃度の歯磨き粉がないか探したものの、日本で販売されているものはなぜか硝酸カリウムの濃度が開示されておらず…。
(日本でもシュ〇テクト、という知覚過敏予防(と言われている)の歯磨きは販売されていますが、問い合わせセンターに濃度を聞いてみた所、お答えできません、日本で配合できる範囲の濃度しか配合していませんという話でした。なぜ‥?教えてくれてもいいのに…。)
きっと日本では硝酸カリウムが効果を持つ濃度に配合できないんでしょうね。(推測)日本はゼロリスクの国ですので、安全性の観点から知覚を鈍麻させる作用を持つ硝酸カリウムを効果のある量配合するのは難しいように思います。
こういう、入っているけど効果のある濃度は入っていないっていう成分は、日本の製品には結構ありますので(クロル〇キシジンとか)皆さんご注意を。
という訳で、海外のものを探したところ、
シュミテクトの本家であるセンソダインは、どうも5%配合されているようです。これを最低一日2回使用することにより、徐々に神経の興奮伝達が抑制されていくとのことです。
いかがでしたか?辛い知覚過敏、歯科医院やホームケアをうまく活用して少しでも楽になるといいですね!
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