「お口が乾く」と最近思っていたんだけど、、、
実はお口が乾く症状の裏に、全身的な病気が潜んでいる場合があります。女性で多い自己免疫疾患の「シェーグレン症候群」という疾患は、実はその病気が起きた人の70%にドライマウス(口腔乾燥症)が起こるんです。今日はそんなシェーグレン症候群とドライマウスの関係についてお伝えいたします。
シェーグレン症候群とは
シェーグレン症候群とは、自分の身体の免疫が自分の身体を攻撃してしまうという「自己免疫疾患」と言われる病気の一種です。
この病気が生じると、自分の身体の免疫が特に涙を出す「涙腺」や唾液を出す「唾液腺」、そして関節を攻撃し、炎症を起こします。
そのため、乾性角膜炎(ドライアイ)、口腔内乾燥症(ドライマウス)、慢性関節性リュウマチを引き起こしてしまうというのかこの病気の特徴となります。
この病気は女性に多く(男性は女性の10分の1)、40代から60代で多くみられ、患者さんは約2万人いると言われています。
アメリカでは日本より発症している人が多く、人口の1%に及ぶと言われています。
また、そのうちの70%はドライアイ、ドライマウスの症状があると言われています。
シェーグレン症候群の診断基準
ではシェーグレン症候群かどうかはどのように診断するのでしょうか?以下のような検査結果を総合して判断します。
涙腺や唾液腺の細胞で免疫反応が起きているかどうか確認する
シェーグレン症候群は免疫が唾液腺や涙腺を攻撃しますので、唾液腺や涙腺に免疫反応が起きています。シェーグレン症候群かどうかを診断する時は、免疫反応(リンパ球浸潤)が唾液腺や涙腺で起きているかどうかを検査します。
血液検査で抗体(身体を攻撃している免疫)があるかどうかを確認する
自己免疫反応がおこっているときは血液にも身体を攻撃している免疫である「抗体」が増加します。ですので、採血を行い、血液中に抗体があるかどうかを検査します。
この疾患で関連する抗体は
抗RO/ss-A抗体 抗La/ss-B抗体
などです。
口腔の検査
口腔、特に唾液腺に関係する検査、唾液腺造影や唾液量の検査を行い、唾液腺に変化が生じているか、実際にドライマウスになっているかどうかを検査します。
目の検査
シルマー試験と言われる涙の量を測定する検査を行い、ドライアイになっているかどうかを検査します。
シェーグレン症候群の際のドライマウス治療
シェーグレン症候群だった際のドライマウス治療は、根本的な治療というのが難しく、対処療法になります。
薬物療法
塩酸ピロカルピン(販売名:サラジェン)
唾液腺の唾液分泌を促進させるスイッチに作用して(M3ムスカリン受容体)唾液分泌を促進します。
塩酸セビメリン(販売名:エポザック、サリグレン)
唾液腺の唾液分泌を促進させるスイッチに作用して(ムスカリンM3受容体)唾液分泌を促進します。
塩酸ピロカルピンも塩酸セビメリンも副作用があり、(胃腸症状、発汗など)継続が難しい場合があります。胃腸症状はH2ブロッカーなどで軽減させることが出来ます。
また、内服薬を水に溶かし口を漱ぐという「口内リンス法」という使用法もあります。
アネトールトリチオン(販売名:フェルビテン)
もともと胆汁の流れを良くする薬として使用されてきた薬ですが、1969年に口渇にも効果があることが分かり、口腔乾燥症でも使用されるようになりました。唾液分泌を促進します。
漢方
麦門冬湯
効果効能としては
体力中等度以下で、たんが切れにくく、ときに強くせきこみ、又は咽頭の乾燥感があるものの次の諸症:
からぜき、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声
と、痰が切れにくさやせき込み、咽頭の乾燥に効果があるという事ですが、以前から口腔乾燥にも効果があるという研究結果が報告されており、ドライマウスにも使用されています。
人口唾液(販売名:サリベート)の利用
ドライマウスが重度の方の中には、飲み込みも難しいという方もしばしばいらっしゃいます。
そのような場合は人口唾液を使用します。
口腔粘膜の保護
シェーグレンではお口が乾いてしまうので、粘膜が切れたり、痛んだりしてしまいます。(口内炎)予防のためにもお口の中を湿潤剤などを用いて潤しておきます。
口内炎の状態になったらそこから細菌が入り炎症がひどくなる場合もあるので、抗菌性のあるうがい薬(含漱剤)を使用します。
うがい薬(含漱剤)
イソジンガーグル
抗菌性は高いですが刺激が強いので頻回利用は少し難しいかもしれません。無理せず出来る範囲の含漱剤と組み合わせて使用するほうが良いかと思います。
アズノール
消炎作用がありお口の中の傷を治癒促進する効果があります。口腔乾燥症ではよく使用されているうがい薬です。
保湿剤
バイオティーン
これは、スプレータイプの保湿剤になっています。保湿成分としてトウモロコシやタピオカ由来の保湿成分「Tornare®」を配合しています。
口腔清掃
そして、唾液が少なくなっていると、口腔内にプラークがたまりやすくなったり、虫歯が頻発したりします。ですので、歯科医院でのブラッシング指導、プロによる汚れの除去、そして自宅でのケアが重要になってきます。
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いかがでしたか?シェーグレンとドライマウスとの関係がお分かりいただけたでしょうか?
すこしでもお役に立てれば幸いです!
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