歯科の麻酔でも中毒になるの?歯科で使用される局所麻酔と全身の作用、症状について

歯科医院で局所麻酔をしている子供 歯科麻酔

「歯科で使用する麻酔でも中毒になるの!?」

歯科で使用されている麻酔は多くが「局所麻酔」という注射した部分のみで効果が現れる麻酔なのですが、まれにある分量以上が血中に混入すると「中毒」と言われる全身に影響する状態を呈することがあります。今回は、歯科の麻酔薬で起こりえる中毒の仕組みと症状についてお伝えしたいと思います。

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一般的な歯科治療で使用する麻酔は「局所麻酔」

「麻酔」というと、ぼんやりと「痛くない」「意識がなくなる」など、ぼんやりとしたイメージを持たれている方が大半かと思いますが、実際の麻酔には使用用途によって色々な作用を持つ麻酔があり、使い分けています。

例えば、意識が消失させ痛みを感じさせなくする麻酔である「全身麻酔」、意識を薬物でリラックスした状態にコントロールして、苦痛や恐怖心を感じさせなくなる「静脈鎮静法」、治療をする部位のみの痛みを感じなくさせる「局所麻酔」などです。

大学病院での口腔外科なども含めた歯科医療ではこれらの麻酔すべてがそれぞれ適切に選択され使用されています。

しかし、開業医さんなど、一般的な虫歯や歯周病の治療を行う時は、概ね「局所麻酔」が使用されています。

局所麻酔とはどのような麻酔?

では局所麻酔とはどのような麻酔でしょうか?

↓過去記事でも一度ご紹介しましたが、

 

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この記事で書いている「浸潤麻酔」のことで、注射で効果をもたらしたい部分に薬液を注射し、薬液がもつ「神経の信号を伝えないようにする効果」を使って、例えば歯を削ったり、神経を抜いたりする時の痛みを脳に伝えないようにすることで、痛みを感じさせなくしているのです。

ちなみにこの麻酔薬の種類としては、リドカイン(一番多く使用されています)、プリロカイン、メピバカインなどです。

注入した部位以外に液が拡散しないように血管収縮剤が配合されている

上にも書いた通り、局所麻酔薬は「神経の信号を伝えないようにする作用」を持っています。ですので、治療をする部位以外に作用してしまうと、身体に必要不可欠な神経の出している信号までストップさせてしまう可能性があります。

ですので、通常の歯科で使用する麻酔薬にはあらかじめ血管収縮剤が配合されています。麻酔をされた周囲の血管を収縮させ、麻酔の効果を持たせたい部分以外の場所に血流にのって麻酔が運ばれないようにするためにです。

リドカインの場合はエピネフリン、プリロカインの場合はフェリプレシンが配合されています。(メピバカインは血管収縮作用があり、単味です。商品名:スキャンドネスト)

局所麻酔を注射する時に少しどきどきと脈が速くなるのを感じる場合がありますが、それは、この血管収縮剤が関連している可能性が高いです。

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局所麻酔薬の投与量が大量であったり、血管内に誤って注入されると血中濃度が増加し全身症状(中毒)が現れる

このように安全に配慮されて設計されている歯科の局所麻酔ですが、例えば局所麻酔薬の投与量が大量であったり、血管の中に注入されたりして、血液の中の濃度が上昇すると、作用させたい部位以外の神経にも作用してしまい、結果として全身症状があらわれてしまいます。

この全身症状というのは、身体の正常な機能を阻害してしまう症状ですので、いわゆる「中毒」に当てはまる訳です。

 

どのような症状が現れるの?

症状としては、脳に作用して生じる、中枢神経症状、心臓や抹消血管に作用して起こる循環器系の症状です。おおよそ5μg/mL以上になると症状が現れます

ここで記載されている濃度は、血中の局所麻酔薬の濃度です。ここでは代表的なリドカインの濃度を記載しています。

ちなみに、どれくらいの分量を静脈注射したらどれくらいの血中濃度になるのか、という事ですが、リドカイン1㎎/kg(体重1㎏あたり、という意味です)を静脈内投与すると、最高血中濃度で4.5μg/mLになります。

通常の使用方法でしたら、エピネフリン添加のリドカインで最大500㎎までとされています。カートリッジ(1.8mL)1本あたりには36㎎リドカインが入っています。

通常の歯科の治療でカートリッジを10本以上使用することはまずありませんから、普段の歯科治療に使用する麻酔は血中に入らなければ問題になる量ではないと思います。

ただし、循環器系の疾患を持っている方や小児の方は麻酔の効き方も変わってくるので注意が必要です。

局所麻酔で生じる中枢神経症状

初期症状

初期症状としては、

  • 多弁、興奮、会話が不明瞭でろれつが回らない
  • 顔や四肢の指の震え
  • 眠気、不安感、頭のしびれ、頭重感、めまい、耳鳴り、悪寒、視力障害、見当識障害

などです

痙攣

血中濃度が4.5μg/mLを超えてくると、突然に筋肉がこわばった状態(強直性)、あるいは筋肉がこわばった状態と緩んだ状態が交互に起こる状態(間代性)の痙攣が生じます。意識も消失し、チアノーゼもみられるようになります。

無呼吸、心停止

さらに進行した場合、中枢機能が抑制されてしまい、痙攣が停止します、呼吸や心臓をはじめとした循環機能も抑制されてしまうので、呼吸停止、心停止になります。

循環系(心臓、血行)に影響する作用

心臓への作用としては、血中濃度が大きくなると、心筋の収縮力が弱まり、心臓が押し助け血液の量(心拍出量)が減少します。また、末梢血管が拡張するため、血圧も低下します。

進行すると徐脈(脈が少なくなる)房室ブロックが起きます。

小児の場合は?

歯科麻酔で安全な分量等はおおむね定められているのですが、小児の場合はただ単に重量を小さくしただけとして考えて当てはまる訳ではありません。一般に小児における麻酔の安全域は狭いと考えられています。

小児が成人と異なる点としては

  • 成長発育のためにエネルギーを必要とする
  • 体重に比べ体表面積が大きく放散による熱の喪失が大きい
  • 体重の割に代謝が極めて盛ん

などが挙げられ、成人と比較しても慎重に投与することが必要になります。

では慎重な投与というものに何か決まっている用法容量があるのでしょうか

代表的な局所麻酔薬(販売名:オーラ注)の添付文書で分量の増減に対してどのような扱いを推奨しているのかを確認しましたが

・浸潤麻酔又は伝達麻酔には,通常成人0.3~1.8mLを使用する。口腔外科領域の麻酔には3~5mLを使用する。なお,年齢,麻酔領域,部位,組織,症状,体質により適宜増減するが,増量する場合には注意すること。

 

と記載されており、これが正解だ、という投与方法は示されていませんでした。

 

これを見ると「そんな怖いものを‥使用したくない」と思われるかもしれませんが、治療で「麻酔を使いましょう」という時は、麻酔を使用しないで被る不利益(痛み)が麻酔を使用した時に生じるリスク(確率は低いが起こるかもしれない中毒などの合併症)よりも上回るので、「使用しましょう」と、歯科医師も腹を括っていっている訳ですので、そこはお任せして処置に臨む方がベターかと思います。

 

術者側としては常日頃から安全な投与量に対しての意識や、中毒をはじめとした合併症などの症状に対してのアンテナを敏感にしておき、まずは大事が起きないようにすること、起きた時に早期に対処できるように次の対処の方法を確認しておくことが肝要です。

 

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いかがでしたか?歯科の麻酔と中毒について、少しでもお役に立てましたら幸いです!

 

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