「歯医者に行ったら痛くないのに歯を抜きましょうと言われた!」歯医者さんが抜歯を決断する時とその理由

歯を抜かなければならないことに悲しむ女性 抜歯

「痛くないけど歯に違和感?があるから歯医者さんに行ったのに、歯を抜きましょうって言われたよ。痛くもないのにどうして抜かれるわけ?」

と歯医者さんでの診断に怒りや動揺を持っている方も多いかと思います。

しかし、実は痛くなくても歯を残すのが難しい状態になっている、というケースが結構多いんです。

今回は歯医者さんは「どういう時に歯を抜く決断をするのか」についてお伝えしたいと思います。

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歯を抜かなければいけなくなる原因

歯医者さんはあなたの歯を痛みなどの症状の部分も色々と検査をして、判断をします。

例えば、レントゲンと撮影したり、プローブという歯と歯ぐきの隙間の深さを測る歯周ポケットを測定する器具を使用したりなどの検査を行います。

実は、痛い、痛くないといったの症状がなくても、検査結果によっては抜かないといけないと判断することがあります。

では、何を検査して、判断の基準にしているかというと、

  • 歯にどれくらい虫歯が広がっているか
  • 歯が割れていないか
  • 歯の周りに炎症がないか
  • 歯茎の骨がどれだけ溶けているか
  • 歯が虫歯になっている

という点に焦点を当ててみています。

そして、上記の検査項目を勘案し診断した結果、下の挙げたようなケースに該当すると、残念ながら「歯を残すのは難しいな」と判断します。

歯が重度の歯周病になっている

歯周病は「サイレントディジーズ(沈黙の病)」とも言われ、痛みもなく歯茎の骨が溶けていく病気です。

歯が痛くなく、なんとなくぐらぐらしてきた、血が出るようになったという症状でも歯茎の骨が溶け、歯茎の骨が全く骨を支えていない、という事もままあります。

歯周病に関しては歯周病治療といった歯茎にいる細菌や感染物質を除去して歯を溶かす元になっているものを取り除くといった治療はありますが、

  • 治療を施しても歯を支える歯茎の骨がない、少なすぎてかみ合わせに耐えられない
  • 歯を溶かす元になっているものが広範にあり取り切れない

などで処置しきれない場合は抜歯しかない、場合があります。

また、治療が完了しても、そのような歯はそのあと、腫れたり、治ったりを繰り返すようになることがあります。

このような場合、この腫れを抑えるのは対処療法でしかなく、根本的に治すには抜くしかない、というケースになります。

根のほうまで虫歯が広がっている

虫歯はほおっておくとどこまでも進行します。初めは歯の頭(歯冠)から始まる場合が多いのですが、根のほうまで、特に歯茎の骨に埋まっている部分にまで広がっていくと、歯が残せない可能性が高くなります。

歯に土台を立ててかぶせ物をするのにも、健康な部分が歯茎に埋まってしまっているとそもそも土台を立てることが出来ない、立ててもかぶせ物がうまくいかないケースが多いからです。

矯正の器具を付けて根っこの健康な部分を歯茎の上の方に引っ張り出してきて、再び使用する(矯正的挺出)歯茎の骨を削って下げて根っこの健康な部分を歯茎の上に出す(外科的挺出)という方法もありますが、これらは実費(自費診療)になります。

歯が割れている(破折歯)

歯を抜かないといけないケースの一つに「歯が割れている、ひびが入っている」というものがあります。(破折といいます)

特に、歯が歯の頭から根に向けて縦に割れている場合(垂直破折)残すのは難しくなります。

なぜなら、歯の割れている部分は、今は痛くないとしても、その割れている部分を伝って細菌が歯の頭から根の先のほうに入り込んでいき、歯と歯茎の間の間が感染し、腫れてくるからです。

このようになってしまうと、腫れを根本的に治すのは従来の治療の範囲内では抜くしかない、と判断します。

破折歯に関しては最新技術で今まで修復不可能だったものが治せるケースも

最近は治療の技術が進化して、破折歯に対して今まで修復可能だったものもアプローチできるようになってきました。

歯科マイクロスコープ治療

マイクロスコープによる治療

 そもそも歯に入った亀裂は非常に微細なものなので、今までの肉眼の治療では完全にその部分だけを治療することは困難でした。

しかし近年、マイクロスコープ(顕微鏡)を用いることにより患部が十分に見えるようになり、治療が可能になってきました。

また、接着技術も向上し、口腔内のような湿った、接着するのに向かない環境下でも耐えうる性能を持つ製品が出来たので、場合によっては歯の割れも治せるようになってきました。

しかし、最新の設備を使用して行う破折歯の修復は保険適用範囲外

しかし、これらの設備は保険診療範囲内においてはなくても十分治療可能な設備ですので、どの歯科医院でも常に揃えている訳ではなく、どちらかと言えばまだまだ設備されている歯科医院のほうが少数派です。

また、これらの治療は保険適用になっておらず、オプション的な治療になってきますので、実費の費用、すなわち自費診療になります。

なので、歯が大きく割れている際に残していく治療は、オプションで「破折歯を残す治療」が選択できる歯科医院でのみ治療が可能なものというのが現状かと思います。

歯を抜かずにそのままにしておくことにより生じる可能性のあるトラブル

「今大丈夫だったらそのまま様子を見ておくということも出来るのでは」と思うかと思います。

確かにそれが可能なケースもありますが、後々このようなトラブルが生じやすいことが想定されます。

痛みが出る、腫れる、膿が出る

虫歯や歯周病は細菌の感染症です。

歯を抜かなければいけない歯は虫歯や歯周病が歯茎の骨の部分まで及んでいることが多く、細菌が歯茎周辺に悪影響を及ぼす機会が増えます。

それが歯茎の痛み、腫れ、膿 という形になって出てきます。

歯の割れ、ひびに関しては、割れそのものははじめは細菌の感染等はなかったとしても、割れている部分は遅かれ早かれ細菌の住処となります。

そうすると、歯周病や虫歯と同様悪影響が引き起こされれ、歯茎の痛み、腫れ、膿といった症状を引き起こします。

歯茎の骨が溶ける

歯茎に細菌が常に住んでいたり、時折歯茎の痛み、腫れ、膿といった症状が出たりといった状態は、すなわち歯茎に常に炎症が起こっている状態です。

このような状態が続くと歯茎の骨が放置すればするほど溶けて行ってしまいます。

放置すればするほど歯茎の骨が溶けるので早期に抜歯して歯茎の骨を出来るだけ健康に保ちたいと思うのが歯科医師の心情。

と、上記のように、抜歯しなければいけないレベルの歯を放置しておくと、痛みの大小はあれどもいずれこのようなことが起きてきます。

そして、抜かないといけないレベルの歯は症状の進行を止めるのが難しいです。

抜きたくないという心情はよく分かるので、その願いをかなえてあげたい気持ちは十分にあるし、実際に「では様子を見ましょうか」という時もありますが、やはり心配な気持ちはあります。

心配なのは、抜かないといけない歯の「周りの歯」まで抜かないといけなくなること

何が心配なのかというと、

「その歯を残しているために起こる歯茎の骨や周りの歯に与える悪影響」

が心配なのです。

抜かないといけない歯は歯茎の骨を溶かし、そうなると周りの歯の歯茎の骨も溶かすので、周りの歯まで抜けてしまう可能性が高くなります。

ですので、抜かないといけないまま放置すればするほど歯茎の骨や周りの歯に悪影響を与えることになります。

「歯茎の骨」がないとなぜ困るのか?

周辺の歯を支える歯茎の骨も溶けて、歯を支えるのが難しくなる

上にも書きましたが抜歯しないといけないほど状態の悪い歯を残しておくと、その周囲の歯の歯茎の骨の部分まで溶けてしまい、両隣の歯がぐらぐらしたりなど、なければ健康な状態で保てたかもしれない歯まで巻き添えを食らう場合があります。

入れ歯を作成する時、歯茎の骨が少ないと安定感にかけたり痛みが出たりと難しくなる

また、抜かなければいけない歯を抜いた後に入れ歯などで歯を補わなければならないとき、早めに抜いた時よりも残っている歯茎の骨が少なくなっていることも考えられます。

入れ歯を新しく作る時、実は歯茎の骨の残りの量によって安定感が変わってきます。残っている歯茎の骨の量が多いと安定しやすい入れ歯が出来ますし、少ないと安定しにくく、作製も難しくなります。

また、下顎は顎の骨の奥に神経の束(下顎管)が走行しているのですが、歯茎の骨が少ないと、この神経の束と入れ歯の距離が近くなり、痛みが出やすいなど入れ歯にしたときのトラブルも出てきます。

このように「抜きましょう」と言われた歯には理由があります

このように、歯は痛くもないのに抜かれる、という訳ではなくて、その後の事まで考えて、「抜く」という治療法を提示されていることが大半です。

ですので、やみくもに「抜く」という選択肢を選んでいるわけでは決してありません。

 

どうしても、チェアサイドではここまでの説明が聞けず、「抜く」という現実にショックを受けたかたも多かったかと思います。

抜く、という行為は後ろ向きに思いますが、今後の事を考えての前向きな決断なのだということが少しでもお伝えできれば幸いです!

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