
最近歯ぎしりを指摘されて・・。顎もだるい気がする。原因は何なんだろう?自分では自覚はないんだけどな…。
夜中に歯ぎしりをしている。顎が痛い。原因は思い当たらない・・。
このようなこと、お感じになられている方も多いのではないのでしょうか。
実は最近、普段から強くかみしめているわけではなくても、上下の歯が接触しているという癖、
専門用語で歯の接触癖(Tooth contact habitant)
という癖が歯や顎の筋肉、顎関節に影響を及ぼし、歯ぎしり食いしばりや、顎関節症の原因になることがある、という事が研究結果から分かってきました。
今回は、この歯の接触癖(Tooth contact habitant TCHと略されます)とはどのような癖か、歯やお口周りにどのような影響を与えるのか、治療方法、自分がTCHかどうかのチェックポイントについてご紹介していきたいと思います。
歯の接触癖(Tooth contact habitant:TCH)とは?

「歯の接触癖(Tooth contact habitant 略してTCH)」という言葉は歯科業界でも比較的新しい概念です。
元東京医科歯科大学准教授で顎関節治療部長もされていた木野孔司先生が2003~2004年ごろに提唱されたのが始まりです。
先生は、大学病院で顎関節症の治療に来られる方に数千人にアンケートを取り、今まで顎関節症の要因ではないかと思われていた事柄と顎関節症との関連を調査したところ、この、TCHという癖が唯一顎関節症を慢性化する要因であると発見したのです。

要するに多くの顎関節症の人を調査したら、「かみしめてないけど上下の歯が触れている」だけで顎の調子が悪くなっていた、という事が分かったんですね。
あなたの思っている「かみしめ、食いしばり」よりもっと気づかないくらいの「上下の歯の接触」が歯や顎に影響をおよぼす。それがTCH
では歯の接触癖(TCH)とはどのような癖なのでしょうか?
顎関節症とは顎の関節が痛くなったり、そのために口が開きにくくなったりする病気です。
顎が開きにくくなるくらいだから、ぐっとかみしめるような癖なのかな‥と思うかもしれませんが、実はそうではないのです。ただ、上下の歯が軽く接触している時間が通常より長いという本当に気付かないような癖なのです。
本来の上下の歯が接触している時間なんと「20分」TCHがあるとその何倍も上下の歯が接触している時間が増える
みなさん上下の歯が接触している時間って、通常はどのくらいだと思われますか?
実は、お喋りしたり、食事で物を噛む、飲み込むなどの瞬間的な動作以外は接触していないのが通常の状態なんです。

実は一日のうちのたったの20分なんですよ!
ただお口を閉じているだけの状態では実は上下の歯は接触していません。
顎関節や筋肉も何もしていないときは上下の歯が接触しない位置にあるのが通常のポジションなんです。この通常のポジションにある場合、関節や筋肉には余計な負荷はかかっていません。
しかし、上下の歯を少しでもかみ合わせる、この、TCHの癖があると通常の数倍もの時間上下の歯を接触させていることになります。
上下の歯を接触させると、それは自分では力がかかっていないと思っていても、かみ合っている上下の歯にかみ合わせの力がかかったり、また、顎関節や顎の噛むための筋肉(咀嚼筋)に過度な負担がかかってしまいます。
そうすると、この余分な力が歯や顎関節をはじめとしたお口周りに悪い影響を及ぼし始めるのです。

咀嚼筋の力は想像以上に強いです。意識して噛みあわせて居なくても影響するんですね。
どうしてTCHになるの?

TCHは原因は一つでなくさまざまな要因で起こると考えられています。
ストレスや精神の緊張があると自分でも気が付かないうちに歯を接触させていたり、パソコン作業やスマートフォン閲覧などうつむき加減の姿勢、枕の高さなど長くとる姿勢にも関係すると言われています。
歯の接触癖(TCH)がお口に与える影響
通常はかからないはずのかみ合わせた時の力が継続的に歯や顎にかかってくると、以下の様な悪い影響がお口に出てきます。

以下にどのような症状が出るのか挙げていきますね。
歯の表面(エナメル質)が欠けることにより引き起こされる症状
歯の表面はエナメル質と言って体の中で最も固い材質で出来ているのですが、この材質は衝撃に弱いという特徴を持っています。ですので、一日に通常の何倍もの力がかかってくると、表面に細かな傷がはいってきます。
知覚過敏
細かな傷が入ると、エナメル質の下の象牙質というところまで水などの物質が届きやすくなります。象牙質という材質は痛みなどを歯の中の神経に届きやすくするので、水や甘いものなどがしみやすくなり、いわゆる、知覚過敏と言われる症状が出てくることがあります。
歯の破折
細かな傷が入り、そのまま力も掛かったままになると、その部分から歯が割れてきます。歯が割れると、そこに細菌などが侵入してきて、歯を健康なまま保てなくなる可能性が高く、抜歯せざるを得ない状況になることもあります。
くさび状欠損
かみ合わせの力によってかけやすい部分の代表的な部分としてエナメル質と象牙質の境目があります。丁度歯と歯ぐきの境目くらいのところです。ここに力がかかって欠けてくる場合、くさびを打ったようにえぐれてきます。このえぐれた状態を歯科ではくさび状欠損と呼んでいます。
筋肉・顎関節への影響
顎関節症
TCHがあると、筋肉や顎関節に持続的に負担がかかることから、顎の関節を動かす度に音が鳴ったり(クリック音)顎を開けるたびに痛い、口が開かないなどといった症状を持つ「顎関節症」という病気に移行する場合がよく見られます。また、すでに顎関節症を持った患者さんは70~80%がTCHを持っている、という事もわかってきています。
歯ぎしり、食いしばり(ブラキシズム、クレンチング)
歯ぎしり、食いしばりの理由はまだ不明な点が多いのですが、このTCHが影響していると言われています。

歯の痛み、歯が割れる、歯のかけ(くさび状欠損)、顎関節症、歯ぎしり、食いしばり・・色々な症状に関係してきます。
歯の接触癖(TCH)の治療方法
TCHは何とかして上下の歯牙が接触しないようにする日々を過ごせば、10日、平均して2か月ほどで改善してきます。

改善するためには以下の方法が効果的です。
環境の見直し
うつむきがちな姿勢での長時間の作業
現代はパソコンやスマートフォンでの作業などうつむく姿勢で長時間保っていることが多くなります。うつむく姿勢はどうしても上下の歯が接触しやすい状態になります。このような状態が長時間続かないように途中で休憩をはさむ等の工夫をしましょう。
枕の高さ
枕があまり大きいと寝ている間中頭が前傾した姿勢のままになってしまいますので、枕は首に添えるくらい、顎先が上がるくらいの高さにしてください
認知療法
まずは意識すること
TCHの改善の基本はまず意識することです。TCHがあっても自分はしていないと思っていらっしゃる方が大半です。なので、しばらくは良く思い出してください。根を詰めて作業をしているときなど、実は歯を合わせていると思いますので、そのような時に口を開けてリラックスするなどして歯を合わせる瞬間に出来るだけ思い出すようにしましょう。
いたるところに付箋などを貼っておく
気付きに効果的な方法が、「自分の生活する場の目につく所いたるところに付箋を貼っておく」ということです。デスク回りやテレビの横やいつも目をところに「歯をはなす」など気が付くメッセージを書きます。これを見たら全身の力を抜き深呼吸しましょう。
マウスピースは?
マウスピースはTCHの観点から言うと「対処療法」に当たります。マウスピースは歯のかみしめのコントロールが難しくなる夜に強く歯が当たり、これ以上歯に負担がかかるのを防ぐ為にあるものなので、根本的に治すには上記に記載したように環境の整備や気付きによる治療が中心になります。
歯の接触癖(TCH)のチェック項目
自分もそうかも…と思っていらっしゃる方も多いかと思います。

下記に歯の接触癖(TCH)かどうかチェックする項目がありますので、ぜひ気になる人は一度チェックしてみてください。
- 唇を軽く閉じてみてください。
- 唇を閉じたら、自然と上下の歯が触れるようでしたら、TCHがあります。
- 唇は閉じた状態で、上下の歯を軽く当てて(触れて)みて下さい。咬むのではありません、触れるだけです。
- 軽く当てた状態で、数分間違和感なく維持できるようでしたら、 TCHという癖があります。
(次世代の顎関節治療を考える会ホームページより)
いかがですか?思いのほかあてはまる方も多いのではないでしょうか。

TCHのあるなしで歯の寿命も大きく変化すると言われています。
もし気付かれた方はこれを機に普段のかみ合わせる癖を見直してみてるのもいいのでは良いのではないでしょうか。
いかがでしたか?歯の接触癖について知りたいことが分かりましたでしょうか?
少しでもお役に立てたら幸いです!
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