
歯にクラウン(かぶせ物)をすることになったんだけど、見える位置だし銀歯は嫌だなあ‥。
こう思われている方は多いのではないでしょうか?
白いかぶせ物と言ったらとても高額で、そのような治療をしている病院も美容に特化したような病院で、普通の生活をしている人には敷居が高い、というイメージが先行していますが、実は最近はとても身近になっています。
今回は、そのような身近になった白い歯について、特に最近多くの病院で行われ始めてきている、白い歯を医院内で作製することが出来る「CEREC(セレック)」治療に焦点を当てて説明していきたいと思います。
以前より簡単に「白い歯」が手に入るって本当?
以前は「白い歯のクラウン」と言ったら特別な治療で、芸能人のように外見を重視する職業の方とか、こだわりのある人しか行わないものというイメージがありましたが、最近はそうではありません。
歯科界の技術開発による白い歯の材料の機能の向上や、白い歯を製作する工程の技術革新により白い歯による治療が大幅に技術革新したためです。
以前の「白い歯」は見える部分だけ白く中は金属、というものが主流でした。
例えばこんな感じです
表側は白い歯ですが、中が金属で、裏は金属が見えています。
なんでこのように中に金属を使わなければいけなかったかというと、以前の「白い歯」の白い部分の強度が噛む力に十分に耐えることが出来なかったためです。
しかし、今は「ジルコニア」、「セラミック」、「ハイブリッドセラミック」など、歯の噛む力に十分耐えることが出来る歯に近しい白い材料がたくさん開発されました。
その上、それらの材料を使って歯を作製する技術も「CAD/CAM」という機械を用いることにより作製が自動化できるようになりました。そのため現在では
このように、金属を使わない、すべて白い、歯に似た材質を比較的簡単に使う事が出来るようになりました。
なんと、歯の位置や限定した材料を選べば保険でも白い歯が入れることが出来るようにまでなっています。


↑以前に書いた記事です。現在保険では「ハイブリットセラミック」という素材で「小臼歯(前から4番目、5番目の歯)」と「下の歯の前から6番目の奥歯」に出来るようになっています。
しかし、それ以外の歯や材料では保険は適用されません。
では保険で治せる歯以外は、白い歯はあきらめないといけないのかな‥と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
現在は多くの歯科医院で「CEREC(セレック)」という白い歯でインレーやクラウン(詰め物やかぶせ物)を作成する機械を導入しており、以前より白い歯に手が届きやすくなっています。

では、その「CEREC(セレック)」を用いた白い歯の治療はどのようなものなのでしょうか?今からご説明していきますね。
※実はCEREC以外にも院内CAD/CAMが出来るシステムはいくつかあるのですが(Planmeca FIT、Trofyなど)、まだあまり有名ではないので、ここでは最も有名なCERECの名前を使って説明させていただきます。これらのものも適用が限られる場合がありますがほぼ同じことが出来ます。
最近よく聞く、歯科医院で行われているCEREC(セレック)治療とは?
歯科医院の中で行われる「CAD/CAM」を用いたセラミッククラウン・インレーの作製が出来るようになりました。それがCEREC(セレック)治療
白い歯でかぶせ物をしたい、と思ってインターネットで検索をしたら、「当院はセレックでの治療を行っています!」という文章によく出会うかとおもいます。
では、そのCEREC(セレック)治療って何なのでしょうか?
写真で説明しますと、
歯をかぶせ物やかぶせ物が装着出来る形に整えた後‥
お口の中をこのような3Dスキャナで撮影し
パソコン上で先生や技工士さんが形を整えた後、詰め物やかぶせ物を作製するためのブロックを機械にセットし、ブロックを削るという方法で作製していきます。
(左:ブロックを機械にセットしているところ 右:詰め物の作製風景。バーでブロックを切削している)
CEREC治療は「CAD/CAM」という方法で行われている。
上記の流れを見てわかるように、歯型をコンピューターに取り込んだらコンピューター上で設計を行い、その設計内容で機械に設計データを送り、その設計データ通りに機械が切削することによってかぶせ物が出来ています。
この方法は多くの工業製品でも使用されている「CAD/CAM」という方法です。
CADとは、「computer-aided design(コンピューター支援設計)」の略で、コンピューターで設計すること意味しています。
CAMとは、「computer aided manufacturing(コンピューター支援製造)」の略で、コンピューターからのデータをもとに製品を製造することを意味しています。
作製にかかる時間は一時間ほど
歯科におけるCAD/CAMは近年非常に進化しています。
精密に口腔内の3D映像を取り込む技術と、パソコン上で簡単に設計が出来るようになったこと、そしてかぶせ物を削り出す機械の性能の向上により飛躍的に早い時間で作成が完了できるようになりました。
これは早く治療を済ましたい患者さんにとって一番のメリットではないかと思います。
実際の削り出しの時間は、早いものだとインレーで5分、クラウンで10分です。
お口の中をスキャンニングした後、院内で患者さんに少しお待ちいただく位の時間でセットすることが可能です。医院によって異なりますが、型取り後1時間位でクラウンが出来あがる医院が多いのではないかと思います。
CEREC治療のメリット
ではこのCEREC治療、どのようなメリットがあるのでしょうか?いかに挙げていきます。
保険診療の枠にとらわれない治療ができる 最短一日で白い歯が出来る
CERECでの治療は保険診療の範囲外ですので、期間や材料に関して自由に選択できます。
保険診療では虫歯治療、型取りからかぶせ物のセットまで複数回こなければいけない決まりになっていますが、
CERECでしたら一日で治療が終了、ということができますので、何度も治療に通いたくない人にとっては大きなメリットだと思います。
通常の型取り(印象)の必要がない
3Dスキャナで撮影するので、通常のクラウンやインレーを作製する時に行う型取りの必要がありません。
「粘土のような型取りの材料がお口の中に入るたびにウエッとなる」方には、気持ちの悪い思いをしなくても良くなるのでとてもあっていると思います。
※歯の削り方によっては稀に型取りが必要になることもあります。
精密な詰め物が出来る
CERECでは3Dスキャナで直接お口の形をスキャンして、そのデータでクラウンやインレーを作製します。
通常でしたら、型取りをして、その型取りに石こうを流して、固まった模型を技工士さんに渡して…
と、クラウンやインレーが出来るまでに間接的な工程がたくさん必要です。
このような工程が入れば入るほど模型の狂いや操作ミスが発生しやすく、出来上がりの精度が落ちてしまう可能性が高くなります。
その点CERECはスキャンした後はすべてコンピューター上の操作なので精度が落ちる工程がほとんどありません。ですので、精密な詰め物ができます。

クラウン、インレーにとって精度はとても重要です。
なぜなら精度の甘いクラウンやインレーは隙間が出来、その間から虫歯菌が入ることによってふたたび虫歯が出来ることになるからです。
ですので、精度のいいクラウン、インレーというのは歯が再び虫歯にならないという歯の健康にも大きく貢献します。
見た目が良い
CERECで作製するクラウン、インレーは、ジルコニア、オールセラミック、ハイブリッドセラミックといった歯の色、材質に近しい材料でできています。

装着した後にとても自然な仕上がりになるので見た目が良いです。
「銀歯が入っている‥」という事にためらいを持っている方にはとても良い選択です。
材料の特性上プラークが付きにくい
一般にCERECで使用される材料は、金属と比較して表面に細菌の塊である「プラーク」が付着しにくいです。ですので、かぶせ物の周囲をきれいに保つことが比較的に容易になります。
金属が使用されていないので、金属であることによって生じるトラブルが発生しない
CERECでは金属は用いられません。金属は良い材料ではあるのですが、お口の中のようないつも水分のある状態の場所では溶けだしてくることと、それにより金属アレルギーやメタルタトゥーなど、お口の中にトラブルを引き起こすリスクがありました。
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CERECで治療した歯はこれらの歯のトラブルに関して考える必要がありません。
CEREC治療で気を付けなければならないこと
このようにメリットの多いCERECでの治療ですが、以下の点に関しては気を付けなければいけません。
保険診療範囲外
CERECでの治療はおおむね「保険適用外」です。(特定の歯のハイブリッドクラウンに関しては適用されますが、保険のルールに則った診療になります。)

費用は、通常の金属のクラウンを入れるときよりも高額になります。
金属よりも厚く削らないといけない
CERECの材料は噛み合わせに耐えることが出来る強度は持っていますが、金属よりはどうしても強度が劣ります。

金属でクラウンやインレーを作る場合と比較したら多く削らないといけない場合が出てきます。
神経のある歯は治療の後、しみる場合もある
上記の事と関連して、神経のある歯の場合は削ることによってしみる場合があります。

もし、しみる度合いが我慢できないくらいの場合は神経を抜く処置を行わないといけない場合があります。
人の手で作成されたセラミックの詰め物、かぶせ物よりやや審美性に劣る
CERECで出来たクラウンは非常にきれいな歯の色をしているのですが、個人個人の歯の色はもっと複雑な色や色調をしていることが多いです。
ですので、本当に自分の歯にそっくりに作ろう、と思っている場合は、手作業で作って彩色も筆で行うような、プロのセラミスト(セラミックのクラウンやインレーを作製する技工士)さんに依頼するほうが納得のいくものが出来ると思います。
インレー、クラウンの丈夫さと、歯茎、歯の根っこのトラブルは別問題
これも大原則なのですが、「かぶせ物が丈夫だと歯の寿命が絶対に延びる」という訳ではありません。
インレー、クラウンの精度の高さや丈夫さは、「かぶせ物のふちからくる虫歯」を予防するのには大きく貢献します。
しかし、元から状態の悪い歯、例えばもともと根っこが割れてきそうな歯だったり、その歯の周りが歯周病があったりする場合、白い被せ物を入れたとしても歯の寿命が伸びるわけではありません。
または歯磨きなどかぶせたあとのお家でのお手入れを怠っていると、虫歯が出来て歯のトラブルの元になりますし、寿命に大いに関係してきます。

「かぶせ物を入れたら終わり」ではないことは心にとめておいていただけたらと思います。
「CEREC(セレック)」治療はこんな人におすすめ
以上のことを考えるとCEREC治療はこのような人:
- 手軽に白い歯を手に入れたい
- 歯科医院に通う時間を短くしたい
- 型取りの時の不快感を避けたい
- 後々のことも考えて健康に良い材料のかぶせ物を選びたい
におすすめなのではないかと思います。
気になるCEREC治療でのセラミッククラウン、インレーの費用は?
では気になるCEREC治療にかかる費用はどれくらいになるのでしょうか?
実際のところは各医院がおのおので費用を設定しているので一概には言えないが、従来の歯科技工所に依頼して作製するセラミックより安価な場合がほとんど
実際のところ、各医院がおのおので費用を設定しているので一概には、言えません。
しかし、歯科技工所に依頼して製作するよりコストの面で抑えられるので安く抑えられている所が多いのではないかと思います。
インターネットでざっと見た所、CERECでないセラミッククラウンの場合は10万円以上のところが多いのですが、CERECの場合は費用が安い所は3万円台からあるようです。
導入している歯科医院も、美容に特化したところではなく、一般的な歯科医院が患者さんのニーズを満たすためのオプションとして導入しているところが多いように思います。
ですので、あまり気負うことなく相談しやすいのではないでしょうか。
気になる歯科医院があったら一度相談してみるのもいいかもしれませんね。

いかがでしたか?CERECによるオールセラミックの治療について、疑問は解消されましたでしょうか?少しでもお役に立てると幸いです!
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