最近眠っても疲れが取れなくて、日中もなんだか眠たい感じがする・・。家の人からいびきをかいて、たまに呼吸も止まっていると言われたんだけど、ひょっとして・・・?
上のような事に思い当たる節のある方、
一度「睡眠時無呼吸症候群」について考えてみてもいいかもしれません。
「睡眠時無呼吸症候群」という病気について最近メディアでも取り上げられ、以前より目にする事が多くなったのではないでしょうか?
この病気は日中の眠気を引き起こす為、大事な場面での居眠りや、場合によっては事故を引き起こす原因にもなってしまうので見過ごしてはいけない病気だという認識になってきています。
また、実はこの病気を治すには、歯科でのマウスピース治療も有効なんです。
今回は、このような歯科にも関連の深い睡眠時無呼吸症候群について、どのようなものなのか、そして、治療の一つであるマウスピース治療について詳しく解説していきたいと思います。
睡眠時無呼吸症候群とは
「夜ぐっすり眠れない、寝ても疲れが取れない‥」
などで日中の生活にも支障をきたしてしまう「睡眠障害」。
かつてはメンタル面の障害であるとみなされていて、精神科が対応、治療を行ってきた分野でした。
しかし、近年、睡眠中「呼吸が止まっている」ことによって睡眠を妨げられている場合があることが分かってきました。
この「呼吸が止まっている」という状態は顎や気道の位置関係が関連してくるので、耳鼻咽喉科や循環器科の対象であり、その部分にアプローチする必要があります。
よって今までの「睡眠障害」から「睡眠呼吸障害」というカテゴリーで睡眠に焦点があてられるようになりました。
睡眠時無呼吸症候群の定義(Sleep Apnea Syndrome:SAS)
では、寝ている間に呼吸が止まり、良質な睡眠がとれない病気である、睡眠時無呼吸症候群とは、どのような病気なのでしょうか?
学会のガイドラインでは
一晩(7時間)の睡眠中に30回以上の無呼吸(10秒以上の呼吸気流の停止)があり、そのいくつかはnon-REM期にも出現するものをSASと定義します。1時間あたりでは、無呼吸回数が5回以上(AI≧5)でSASとみなされます。
という形で定義されています。分かりやすく言うと、
・睡眠中に30回以上息をしていない(10秒以上無呼吸)。
・ぐっすり眠っている睡眠(non-REM睡眠中)にも無呼吸がある。
・1時間あたりでは無呼吸が5回以上ある。
という事を満たしていると、「睡眠時無呼吸症候群」であると診断されます。
睡眠中30回息をしているかカウントしたり、ぐっすり眠っている睡眠中に無呼吸があるかどうかをカウントするためには専門的な機械が必要です。
なので、睡眠時無呼吸症候群の診断はこのようなしかるべき検査を行う機械をそろえている病院で実施可能であると言えます。
睡眠時無呼吸症候群はなぜ起こるのか
では睡眠時無呼吸症候群はなぜ起こるのでしょうか?
それは、空気の通り道になっている上気道が、何らかの原因でふさがれて狭くなっているためです。
原因には以下のようなものが考えられます。
1)軟部組織によるもの
◦肥満
◦扁桃が大きい
◦舌が大きい
◦上気道に炎症がある(アレルギー性鼻炎,慢性副鼻腔炎,咽頭炎など)
2)頭蓋や顔面の骨の位置によるもの
◦上顎骨が後ろに下がっている
◦下顎骨が後ろに下がっている
◦下顎骨が小さい
3)その他
◦あおむけ寝
◦頸部が曲がっている
例えば、1)のように肥満により首の周りに脂肪が多くついていたり、扁桃腺や舌が大きかったりすると、それらの組織が気道を押しつぶすような形になり、狭くなります。
また2)のように顎の形が寝た時にぐっと後ろに下がりやすいような形だった場合、やはり、上気道をふさいでしまいます。
図で表すとこのような感じです。
原因は一つでもなることもあれば複数重なっていることもあります。
原因はどのようであれ、図のように空気の通り道をふさいでしまっているという所が問題になります。
睡眠時無呼吸症候群の症状
では、睡眠時無呼吸症候群ではどのような症状が現れるのでしょうか?
就寝中の症状
この病気があると、睡眠中に気道がふさがれるために十分に呼吸が出来ないので、以下のような症状を感じます。
- 呼吸をしていない‥物理的に気道がふさがるので呼吸が止まります。
- 息苦しさを感じる‥呼吸が止まることにより、息苦しさを感じます。
- いびき‥気道が狭いので、呼吸をしているときも「いびき」という形で音がなります。
- 血中酸素飽和度が低い‥十分に呼吸が出来ないため、血液中の酸素の濃度が低くなります。
- 眠りが浅い‥呼吸が少ないため十分な酸素が足らず、睡眠が浅くなります。
起床時の症状
睡眠時無呼吸症候群があると、睡眠が十分にとれないことと、睡眠時に体内の酸素の供給が不足しますので、それに伴う症状が出てきます。
- 頭が痛い
- 疲れが取れていない
- 根足りない感じ
起きている間の症状
起きている間も、十分な睡眠がとれていないのと、睡眠時に回復すべき疲労が回復していないので、以下のような症状を感じます。
- 強い眠気、睡眠不足感
- 倦怠感
- 疲労感
- 集中力が持続しない
また、このような状態で仕事や学業を行うと、交通事故や産業災害、学業不振など、日常生活が滞る影響を及ぼします。
睡眠時無呼吸症候群と関連のある疾患
また、睡眠時無呼吸症候群を持っていることにより、色々と他の疾患も引き起こしやすくなる事が分かってきました。
- 高血圧
- 不整脈
- 脳血管障害
- 虚血性心疾患
- 糖尿病
- 逆流性食道炎
これらの疾患は、命を落とす原因になったり、日常生活に多大な支障を及ぼす疾患です。このような疾患を予防する意味合いとしても睡眠時無呼吸症候群の治療は重要であると言えます。
睡眠時無呼吸症候群の検査
では、睡眠時無呼吸症候群はどのような検査を行うのでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群は、睡眠時無呼吸症候群かどうかを調べる簡易検査と、
より詳細に検査する精密検査の2種類の検査があります。
睡眠時無呼吸症候群はどのような病院で診てもらえるの?医療機関は?
睡眠時無呼吸症候群かも、と思うけど、実際どの病院で診てもらえるのか分からない‥。
と思っている方は多いのではないでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群は主に耳鼻科、呼吸器科で診ていることが多いです。
この病気は専門的な機械を用いた検査が必要になるので、その検査機器を取り扱っている病院が診る事が出来る病院となります。
専門的な機械には何社かメーカーから販売されていますが、
日本ではテイジンが精力的に睡眠時無呼吸症候群に使用できる簡易検査機を取り扱っており、おそらくほぼ全ての睡眠時無呼吸症候群を診断、治療している病院にはこの会社の簡易検査機が導入されているのではないかと思います。
テイジンのホームページで睡眠時無呼吸症候群の医療機関を検索できるようになっているのでそちらで探すのが良いかと思います。
このような病院で睡眠時無呼吸症候群に関しての問診や睡眠時無呼吸症候群に関しての説明を受け、次の段階、検査に入ります。
睡眠時無呼吸症候群の簡易検査
「睡眠時無呼吸症候群かも」と思って、病院に言ったら、多くの人がまずお勧めされるのが、アプノモニターを用いた睡眠時無呼吸症候群の簡易検査です。
この検査は、睡眠時の「呼吸」「いびき」「SpO2」「脈拍」の4項目を測定します。
簡易検査ですので、入院することなく、自宅で一晩(うまく取れなかった場合は二晩)機械をセットし、睡眠することによって睡眠時無呼吸症候群をある程度判定できる検査データが取れます。
機械はこのような感じです。
これを腕に付け、
鼻に呼吸を測定するチューブ、指に血液中の酸素飽和度を測定する器具を付け、
このような状態で睡眠し、データを取ります。
簡易検査のメリット
簡易検査のメリットとしては、「入院する必要がない」ということです。
また、この簡易検査機械一式も自宅に郵送され、測定した後は送り返すので、機械を病院に持ち運びする必要がありません。
測定して1週間から10日ほどで結果が出ます。
簡易検査の結果からの診断を用いて、マウスピース治療やCPAP治療など、しかるべき治療を保険診療の範囲内で受ける事が可能です。
簡易検査の費用
簡易検査の費用はおよそ3000円ほどになるかと思います。
睡眠時無呼吸症候群の精密検査
このように、簡易検査の結果からも睡眠時無呼吸症候群の治療は受けられます。
しかし、簡易検査だけでは、例えば深い睡眠(non-REM睡眠)時に呼吸をしているか、など、詳細な検査が出来ません。
そうなると、たとえば他の疾患が疑わしくても区別が出来ません。
また、治療に使用するCPAPの機械の設定を決めるためにもこの検査が必要になることがあります。
詳細な検査が必要な時は一泊入院し、脳波を取りながら睡眠時の無呼吸のデータを取る「ポリソムノグラフィー検査」を行う必要があります。
簡易検査は「呼吸」「いびき」「SpO2」「脈拍」の4項目でしたが、それに加えて多くのセンサーを配置し、睡眠時無呼吸症候群の確定診断が出来る検査データを取ります。
睡眠時無呼吸症候群の治療
これらの簡易検査、精密検査の結果をもとに、睡眠時無呼吸症候群かどうか、重症度はどうかを診断して、睡眠時無呼吸症候群の治療に移ります。
睡眠時無呼吸症候群の治療はこれらのものがあります。
睡眠時無呼吸症候群の精密検査の費用
この精密検査にかかる費用は3割負担の方でおよそ一万円、プラス入院にかかる費用が掛かります。
シーパップ(CPAP):持続陽圧呼吸療法
睡眠時無呼吸症候群の原因は
「呼吸の通り道(上気道)がふさがれている事によって生じている」ので、
では、空気の通り道を何らかの形で確保してあげればよい、という事になります。
その方法の一つがCPAPです。
呼吸の通り道を開けるために、機械を用いて空気を送り込んであげるという方法があります。これがシーパップ(CPAP)です。
シーパップはこのような鼻に付けるマスクを睡眠中に装着し、
このように枕元に機械を置いて就寝します。
今まで睡眠中の酸素が供給不足だった方は、この機械を装着することによってぐっすりと睡眠することが出来ます。
CPAPにかかる費用
CPAPの機械は購入することはできず、レンタルのみになります。
保険で3割負担の人でおおよそ4300円ほどの負担になります。
マウスピース治療はどこで受けられるの?
そして、歯科と睡眠時無呼吸症候群が最も関連する治療がこれ、マウスピース治療です。
今回最も書きたかった項目です。
マウスピース治療は睡眠時無呼吸症候群の診断をした病院が歯科に紹介して、歯科で作製が行われます。
一般の歯科医院でも行われているところもありますが、一番多いのは歯科口腔外科ではないでしょうか。
ここまでで随分と分量が多くなってしまったので、次回睡眠時無呼吸症候群のマウスピース治療に焦点を絞って記事にしていきたいと思います。
参考文献:
成人の睡眠時無呼吸症候群 診断と治療のためのガイドライン 2007(日本呼吸器学会)
循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン(日本循環器学会)
コメント