差し歯の土台:保険でできる白く歯に優しい素材・ファイバーポスト

保険診療の歯の土台ファイバーポストについて説明を受けているイメージ図 補綴(歯を補う)

差し歯の土台も歯の持ちやかぶせた歯の色調に関係があるって聞いたんだけど‥歯の土台って何なの?土台も保険で色々選べるの?

歯の治療の際、神経の治療も行った歯は、歯にある神経の入っていた空洞の部分を補うために「土台」(ポストコア)を歯の中に埋め込む処置をします。

この処置は、歯の基礎工事として大事な処置で、土台によって、その後の歯の寿命や歯の色調などの出来上がりを左右されます。

この土台は従来は金属でできたものを使用するのが主流でしたが、近年歯科材料の研究が進み、歯の強度や色調を考慮した歯により良い性質を持つ白い材料(ファイバーポスト)が開発されました。

少し前まではこの白い歯の土台の材料(ファイバーポスト)は保険で出来ず自費(全額自己負担)だったのですが、平成28年1月より保険適用されることになりました。

この記事では、そもそも白い新しい材料でできた土台、ファイバーポストとはどのようなものなのか、従来の土台との違いや治療の流れ、費用などについて詳しく解説していきます。

 

※差し歯というのは正式にはかぶせ物と土台が一体化しているもの(ポストクラウン)のことを言いますが、現在はあまりありません。

土台とかぶせ物の関係

上の図のように土台を先に作って、その上にかぶせ物を作るという方法が主流です。土台を入れる歯を差し歯と思われている方が多いので、この記事ではあえて土台+かぶせ物の処置を差し歯と呼んでいます。

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平成28年(2016年)1月から白い材料でできた差し歯の土台(ファイバーポスト)が保険で出来るようになりました

 

Dr.Den
Dr.Den

従来の差し歯の土台は歯が割れやすくなるという問題がありましたが近年「ファイバーポスト」という歯にやさしい、白い材料でできた土台が開発されました。

しばらくは保険診療では使用できなかったのですが、平成28年1月から保険適用になり、土台を作る処置に選択のバリエーションが増えました。

では、その新しく保険適用されることになった「ファイバーポスト」とはどのような素材なのでしょうか?

そもそも差し歯の土台ってどんなもの?なぜ必要なの?

以前過去記事「差し歯の土台とは?作り方や素材(金属・ファイバーコア)を詳細解説」

で、詳細に記事にさせていただきました↓

差し歯・銀歯の土台とは?作り方や材料について解説します
銀歯、差し歯は土台の材質でその後の見た目や歯の持ちが変わる事があります。土台の種類やそれぞれの土台の欠点、利点、費用などについて歯科医師が解説します。

 

詳細はこの記事を読んでいただくとさらに分かりやすいと思いますので、ここでは要点を簡潔に記載させていただきます。

虫歯の治療や歯の根っこの治療(根管治療)で歯の中が空洞になる

虫歯の治療を行う時、実は虫歯の程度によって治療の処置や回数が変わってきます。

歯の構造

これは歯の断面図です。歯の内部の赤い色で示された部分は歯の神経(歯髄)が入っているスペース(歯髄腔)です。

歯髄まで虫歯が感染していたら、歯の神経はそのままにしてはおけないので神経を除去し、神経の入っているスペースも虫歯の感染部位を取り除き、何回か消毒を繰り返し、根の先のほうに薬を詰めます。

この治療が完了した後は

根管充填終了後

このようになっています。

ピンクの部分は根の先に詰めている薬です。しかし、それ以外の部分はがらんどうになっています。

歯の中の空洞を何らかの形で補わなければならない

この治療によってできた歯の中の空洞はそのままの状態で放置するわけには行けません。

歯は物を食べるときにとても大きい力がかかります。

ですのである程度の強度を持った材料で補ってあげないと残っている歯や歯の根っこが割れてきてしまいます。

これがすなわちここでお話になっている『土台(ポストコア)』です。

※ポストとは土台の根の部分のことを指し、コアとは土台上部の根から上の部分を指します。

ポストとコアは部位別の名前ですが、鋳造されたものは一体化しています。

また、樹脂でできたものも接着されているので最終的には一体化しています。

ポストとコアが一体化しているものをひとまとめにして「コア」と呼ぶこともあります。

 

従来の保険の差し歯の土台(メタルコア・レジンコア)はどのようなもの?

では従来の保険の土台とはどのようなものなのでしょうか?

材質としては金属で出来ている『メタルコア』と呼ばれているもの、根の部分が既成の金属、大きい空洞の部分をレジンというプラスチックで充填している『レジンコア』と呼ばれているものの2種類があります。

金属でできているメタルコアは歯の空洞の部分の形に合わせて鋳造された金属です。

鋳造するために歯の内部の空洞の形の歯型が必要になります。

 

歯型が必要になるという事は、型取りが必要になります。

型取りで精密な型が取れるようにするためには型取り材がきれいに注入でき、外れるような形でなければいけないので、便宜的に削らないといけない部分が多くなります。

レジンコアは、レジンというプラスチックと既成の金属の棒と併用した土台になります。

土台の多くの部分が金属ですが、自分の歯の残っている部分の少ない根の先の部分には金属が使われているというデメリットがあります。

新しい白い素材の差し歯(ファイバーポスト)の土台とは

昔は虫歯や治療で失った、歯の内部の部分を補うために使用されていた材料は金属一択でした。

金属は歯の硬さよりも硬くしなりがないため、そのため噛む力が残っている歯と金属で伝わり方が異なります。

そのため結果として金属が歯に力を伝えてしまうために、経年利用すると歯が割れてしまうという現象が高頻度で起こってしまうことが分かっていました。

 

それらの欠点を改善する材料の研究が行われ、現在「ファイバーポスト」という根の部分に使用する土台を開発されました。

小さい虫歯を治す時に使用する樹脂である、『レジン』という材料があったのですが、レジンの硬さやしなり具合では歯の内部、特に歯の根っこの内部の空洞の強度を保つほどの性能はありませんでした。

そこで、『レジン』という材料に『グラスファイバー』と呼ばれるガラスの繊維を混ぜて焼き固めるといった処置を施すことで、歯の根っこの部分の空洞を補うにふさわしい強度としなりを持つことが可能になりました。

ファイバーコア

これがファイバーポストです。このような形状をしていますこれを歯の根っこの空洞に使用します。

ファイバーポストコア断面図

根っこの太さ、長さに合わせてファイバーポストを選びます。

ポストの長さは作製したい歯の歯茎ら出ている部分の長さと同じにするか、もしくは歯の根っこの長さの3分の2とします。

それくらいの長さがないとかぶせ物が取れてしまったり、根に均等に力が分散されないからです。

ファイバーコア手順1

根の治療が終わりこのようになっている歯に

ファイバーポスト手順2

一番合っている長さのファイバーポストが挿入できるよう専用のドリルで根の先の形を整え

ファイバーポスト手順3

レジンというプラスチックの樹脂と接着剤を用いて歯に接着します。

ファイバーポスト手順4

その後はかぶせ物がセット出来る形状にするため、さらに歯茎から上の出ている部分に土台を作製します。

新しい白い素材の差し歯(ファイバーポスト)の土台の利点

今まで記載してきましたが、このファイバーポストには今までの土台にはなかったいくつかの利点があります。

適度なしなりがあるので歯の割れ(破折)が起こりにくい

一番の利点はこれでしょう。

ファイバーポストは金属のポスト(土台)と異なり歯の強度、しなり具合に近しく設計されています。

ですので今まで土台を入れた歯で問題になっていた経年使用することによって生じる歯が割れてしまうといったトラブルが起こる可能性が減ります。

歯の透け感が再現しやすい

これも非常に有効な点です。

(クラレノリタケさんからお借りしました)

今は保険でもCAD/CAM冠のような歯に近しい透明感のある素材のかぶせ物が出来るようになりました。

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ファイバーポストはそのような透け感のあるかぶせ物との相性がとても良いです。

上の3つの図はそれぞれのポスト(土台)を用いた比較ですが、金属のポストのもの光が当たるとはどうしても金属の色が出てきてしまい、黒っぽく見えます。

メタルタトゥーや金属アレルギーなど、金属を使用して生じるトラブルが起こらない

また、金属を用いた土台はメタルタトゥーと言って溶けだすことにより歯に黒ずみが生じたり、人によっては用いた土台の金属によって金属アレルギーが起こることがあります。

ファイバーポストは金属が用いられていないので、このような金属に関連するトラブルが起きる可能性がありません。

白い素材の差し歯の土台(ファイバーポスト)の弱点、注意点

このように良い事の多いファイバーポストですが、弱点や注意点はあります。

使用できる歯に制限がある

このファイバーポストを使用する時は、プラスチックを接着するための接着剤を使用します。

ですので、今までの金属の土台を接着する時よりも、より乾燥状態を保たなければいけません。

とはいえ、お口の中は唾液や呼気など乾燥状態を保ちにくい環境です。

例えば、歯の残っている部分が少なく歯のない部分が歯茎の下にある、という状態であったら乾燥状態が保てないので使用することができません。

それ以外にもあまりにも残っている歯が少なく薄いものなども使用できません。

保険と自費(全額自己負担)は併用できない

かぶせ物を作るときのルールで、途中まで保険でその後は自費(全額自己負担)、という事は出来ないようになっています。

例えば「前歯をファイバーポストまで保険で行ってそのあとのかぶせ物はオールセラミックで」というのは保険のルール上できません。

大臼歯の一部や小臼歯は現在CAD/CAM冠という保険で出来る白いかぶせ物が使用できますが、前歯は『レジン前装冠』という裏打ちは金属で見えるところだけ白い材料を用いているものしか現在ありません。

そのため、保険でファイバーポストの透け感を活かした前歯のかぶせ物は出来ません。

保険で出来る白い素材の差し歯の土台の費用は?

気になる土台の費用ですが、直接お口の中で作製する方法と、型取りをして作製する方法で費用が変わってきます。

(保険点数で記載していきます1点=10円です)

直接お口の中で作製する場合、

作製にかかる技術料:その他コア(1歯につき)の126点

これに材料代が掛かります。ファイバーポストは歯の状態に合わせて最大2本まで使用できます。

材料代:大臼歯は27点+ファイバーポスト89点×使用本数、小臼歯・前歯は15点+ファイバーポスト89点×使用本数。(1本使用時=89点、2本使用時=178点)

型取りをする場合はこれに型取りの費用

支台築造印象26点

が加算されます。

ですので、例えば前歯1本に直接白い土台を入れるときは

126(技術料)+15+89=230(点)

これを10倍にしたのが費用ですので、3割負担の方は

2300(円)×0.3=690円 位になります。

保険で出来る白い差し歯の土台の種類とメーカー(平成28年6月現在)

これは患者さんにはあまり関係のない話なのですが、自分の備忘録として現在保険で出来る白い材料の土台にどのようなものがあるのか、平成28年6月現在分かっているものを記載しておきます。

  • ジーシー ファイバーポスト(ジーシー)
  • ジーシー ファイバーポスト N(ジーシー)
  • MI コア ファイバーポスト(ジーシー)
  • ファイバークリア ポスト4X・テーパータイプ(ペントロン ジャパン)
  • ホワイトポスト(デントレード)
  • ビューティコア ファイバーポスト(松風)
  • トクヤマ FRポスト(トクヤマデンタル)
  • グラシスアドバンス(歯愛メディカル)
  • リライエックス ファイバーポスト(スリーエムジャパン)

保険のファイバーポストと自費(完全自己負担)のファイバーポストの違い

この度保険適用されるにあたり、国民の皆様に安価に使用していただけるようにファイバーポストの価格が従来の価格よりもとても低い価格で抑えられています。

感覚としては、材料だけ見ても、自費(全額自己負担)で使用されていたものと比べて3分の1以下くらいなのではないのでしょうか。

スケールメリットによって価格が抑えられたという事もあるのでしょうが、やはり、開発のコンセプトとしては最大限のパフォーマンスを追求するというよりは、必要最低限の条件を満たしている方向に設計されているのではと思います。

これは土台だけでなく日本における治療全般に言えることです。

保険診療というものは政府は「必要最低限を満たす」所を目標にしていて、それ以上のクオリティにおいては各歯科医師の良心に丸投げ任されています。

ですので、本当により良いものを、思われている方は保険診療以外の選択肢も考えてみるのも良いかもしれませんね。

 

Dr.Den
Dr.Den

いかがでしたか?保険の白い材料の土台(ファイバーポスト)について、疑問は解決したでしょうか?少しでもお役に立てたら幸いです!

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