
入れ歯洗浄剤ってポリデントとか色々あるけど、違いが分からない。成分見てもわからないし・・。何に気を付けて選んだらいいんだろう。選び方ってあるのかな?
こう思われている方、たくさんいらっしゃると思います。
ドラッグストアの棚を見るとたくさんの会社から入れ歯洗浄剤が並んでいます。
箱の裏を見れば、入れ歯洗浄剤によっていろいろな成分や種類がありますが、それらの成分にどのような違いがあるのかは一見しても分からないのではないでしょうか?
歯医者さんでも、歯医者さんにあるものをお勧めされることはあっても、それ以外の成分との違いまで説明を受けることは少ないと思います。
今回はそのような皆さんの疑問を解決するために、入れ歯洗浄剤の成分と成分別の特徴、それを踏まえた入れ歯洗浄剤の選び方について説明したいと思います!
入れ歯洗浄剤を使用する目的
入れ歯の汚れは身体の病気の原因になります
「入れ歯は歯ではないし、虫歯や歯周病を気にしなくても良いのだったら入れ歯に汚れが付いていても特に困ることはないのでは?」
と思うかもしれませんが、そんなことはありません。
入れ歯の汚れをそのままにしておくと、入れ歯で細菌や微生物が繁殖しやすい状態になります。そして、入れ歯に繁殖した細菌や微生物は「デンチャープラーク」と呼ばれる細菌や微生物の塊になります。
その塊の中にはなんと、1g中、1000億から1兆もの微生物が住むと言われています!
この微生物はさまざまな病気を引き起こします。
例えば、お口周りに関しては
・入れ歯の床の下の粘膜に口内炎(義歯性口内炎)
・口の端が切れる、口角炎、舌の炎症の舌炎
の原因になりますし、
残った歯がある場合はその歯が虫歯、歯周炎になる原因にもなります。
身体の疾患では
・誤嚥性肺炎
・腸管内感染
・胃潰瘍
等の原因にもなります。
入れ歯の汚れの性質を考えると入れ歯洗浄剤を使用するほうが良い
入れ歯の汚れはたんぱく質や取れにくいもので構成されているので、水洗いだけではなかなか取れにくいです。
また、「歯磨きをする時に歯磨き粉と歯ブラシで一緒に磨いているよ」という人もいるかもしれませんが、それは入れ歯にとってあまりよくありません。
なぜならば、入れ歯は「硬質レジン」という樹脂でできており、歯磨き粉の研磨剤や歯を磨く歯ブラシで洗うと細かな傷がついてしまうからです。
細かな傷がつくと、そこに細菌や微生物が住み着きやすくなり、さらに入れ歯が細菌の温床になってしまうという悪循環があります。
そういう事もあるので、入れ歯は
・専用のブラシでこすりながら水洗いをした後
・水洗いだけでは取れにくい汚れを入れ歯洗浄剤を使って落とす
という方法がベストなのです。
入れ歯につく汚れの種類
入れ歯には、先ほど挙げた細菌や微生物の塊(デンチャープラーク)以外にもさまざまな汚れが付きます。
- 食べカス
- デンチャープラーク
- 歯石
- 着色
などです。
入れ歯につく汚れすべてに有効な入れ歯洗浄剤はない
このように、「入れ歯につく汚れ」と一言で言っても、色々な種類の汚れが付きます。
例えば、食べカスや細菌、カンジダ菌だったらたんぱく汚れなので酵素などが有効ですし、歯石汚れはカルシウムを溶かすための酸が有効です。また、着色だったら漂白作用のある成分が有効です。
一つ一つの汚れに効果のある成分はありますが、効果が強いもの同士は一緒に配合しても効果を発揮しないので、全てに効くがマイルドな効果か、特定の汚れをしっかりとるか、どちらかになります。
入れ歯洗浄剤はどのようなにはどんな成分があるの?
では、それぞれの汚れにどのような成分が対応しているのでしょうか?
現在の入れ歯洗浄剤は大きく下の4種類のうちのどれかに分類できます
- 酵素系
- 過酸化物系
- 次亜塩素酸系
- 酸
- 生薬系
これをベースに
- 過酸化物に酵素を添加したもの
- 銀系無機抗菌剤
- 界面活性剤
- 二酸化チタン
が添加されています。
また、入れ歯で最も取り除きたい微生物はカンジダ菌です。カンジダ菌は義歯性口内炎などの一番の原因であると言われています。
ですので、カンジダ菌を除菌する作用を持った義歯洗浄剤も販売されています。
酵素系
「酵素系」と言われている入れ歯洗浄剤にはたんぱく質分解酵素が配合されています。
酵素が作用し、主にたんぱく汚れを溶解します。入れ歯の汚れはたんぱく質汚れが主なのでこの成分は入れ歯洗浄剤には必須です。
酵素は体温ほどの温度で一番効果が高くなるので、酵素が配合されている入れ歯洗浄剤を使用する時は40度ほどのぬるま湯で使用するのが良いでしょう。
過酸化物系
過硫酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウムなどが良く用いられます。
水に溶解して出てくる活性酸素(過酸化水素)の発泡作用により義歯表面の汚れを物理的に落とすことにより、洗浄が行われます。また、活性酸素の効果で漂白殺菌作用を発揮します。
反応はマイルドなので、強力な効果は発揮しない反面入れ歯を痛めません。
次亜塩素酸系漂白剤
次亜塩素酸の作用により漂白と殺菌が行われます。漂白作用が高いので、茶渋など、着色には非常に効果があります。
亜塩素酸は使用方法によっては金属の変色をもたらしてしまいますので、毎回の洗浄には向きません。
酸
入れ歯にも歯石が付着する事があります。歯石はカルシウムの沈着物ですので、歯石を除去するには酸が有効になります。
歯石を除去するための入れ歯洗浄剤の成分が、酸になります。
主にリン酸が用いられますが、pHが低く取り扱いに注意が必要なので歯科医院で入れ歯の歯石を除去するといった目的で用いられることが多いです。
一部歯科医院で市販されている家庭用のものもあります。
生薬
除菌作用や爽快感をもたらす香味があります。マイルドな成分です。
入れ歯が痛く柔らかい裏打ち(軟性裏層材)をしている入れ歯は影響の強い成分が配合されたものを使用すると痛んでしまう恐れがあるので、そのような入れ歯には生薬と酵素が配合された入れ歯洗浄剤が使われます。
界面活性剤
界面活性剤とは、入れ歯の表面と油やたんぱくのような汚れの間に作用してくっつかないようにする成分です。界面活性剤は入れ歯の表面からデンチャープラークを取り除くのに有効です。
商品別入れ歯洗浄剤の主成分と特徴
では、現在販売されている商品にはこれらの成分がどのように配合されて、どのような特徴を持っているのでしょうか?いかにそれぞれの入れ歯洗浄剤の主成分と特徴をご紹介します。
ポリデント
ポリデントはTAEDの効果で漂白と除菌が可能。
ポリデントは酵素系の入れ歯洗浄剤です。
酸素系の漂白剤、過ホウ酸ナトリウム、過硫酸ナトリウムを配合しています。
特徴としてはTAED(テトラセチルエチレンジアミン)という成分です。
この成分は
- 漂白剤の作用を助けるという効果
- 低温でも除菌できるという効果
を持っており、これにより、使用した後99%除菌できるという効果を持っています。
所感
入れ歯洗浄剤を取扱説明書通りに使っている方は少ないのではないのでしょうか?
用法容量を守らなくてもある程度の効果が期待できるという消費者の方にやさしい商品設計になっているのが感じられます。
「除菌」とあるのですが、除菌は殺菌とは異なりますのでデンチャーの奥深くにいるカンジダ菌などの殺菌が出来ている、という訳ではないです。
配合されている成分はどちらかと言えばマイルドなので、毎日手軽に使用して、入れ歯を痛めず程々に除菌、汚れ、臭いを除去したいという方には良いと思います。
タフデント パーシャルデント(小林製薬)
部分入れ歯の金属にやさしい商品設計
タフデントは総入れ歯、パーシャルデントは部分入れ歯に使用する義歯洗浄剤です。
どちらも基本成分は、酵素、酸素系漂白剤(過硫酸塩、過ホウ酸炎)です。
TAEDを配合しており、こちらも99.9%の高い除菌率を誇ります。
部分用入れ歯洗浄剤であるパーシャルデントは特に、入れ歯の金具(クラスプ)の変色や防錆に配慮した処方設計をしています。
所感
ポリデントとほぼ同じ処方設計のように思えますが、入れ歯の金属に関して優しい処方を目指しているように感じます。
ピカ(ロート製薬)
1つの箱に2種類の洗浄剤を同封 青ピカはカンジダに、赤ピカは着色に効果あり
ピカには1つの箱に2種類の洗浄剤が同封されています。
毎日使用する青い袋の青ピカと、週に一回使用する赤い袋の赤ピカです。
青ピカはカンジダ菌を溶菌除去する酵素とたんぱく質を溶解する酵素の2種類が入っています。
このカンジダ菌を溶菌除去する酵素はかなり効果があり、実際の使用でもデンチャープラークの改善率は91.3%、真菌も96.1%は検出されなくなると、確実な結果を出しています。
赤ピカは次亜塩素酸ナトリウムを配合しており、タバコのヤニや茶渋に高い漂白効果を発揮しています。こちらは週一回の使用になります。
徹底的に洗浄したい!という方にはおすすめ
除菌は除菌の青ピカ、漂白は漂泊の赤ピカと、ポリデントやタフデントのようにお手軽に除菌と漂白、という訳にはいきませんが、分けてあるからこそ徹底的な効果を発揮します。
入れ歯洗浄剤に高い効果を求める方にはコチラがおススメです。
キラリ(フィジオクリーン)
これは、歯科専売品で、市販品ではないのですが、特徴があるので挙げてみました。
キラリの特徴としては二酸化チタンが配合されていることです。二酸化チタンによりカンジダ菌のバイオフィルムの除去効果をもたらします。
また、酸素系漂白剤と界面活性剤のバランスよい配合により、2時間の洗浄で一晩漬け置きの60%~80%の高い洗浄力を発揮します。
また、pHも中性なので入れ歯の金具も痛めません。
所感
成分配合のバランスにより洗浄力が高いようです。2時間で除菌効果を示すので、漬け置きが難しい人には良いかもしれません。
歯石クリン(フィジオクリーン)
これも歯科専売品で市販品ではないのですが、歯石に特化しているので挙げてみました。
入れ歯に付いた歯石で困っている人に 家庭でも歯石を除去できる入れ歯洗浄剤
歯石くりんは入れ歯に付いた歯石に困っている方のための入れ歯洗浄剤です。
酸性成分(pH2.5)が配合されており、酸の成分で歯石を穏やかに溶解することによって歯石を除去します。毎日使用することにより、しっかり付着した大きな歯石も除去可能です。
所感
歯石に特化した入れ歯洗浄剤です。歯石の付きやすさには個人差があります。付きやすい人は本当に良く付着します。
「入れ歯に硬い汚れがついて取れない」とお悩みの方には良いかと思います。
pHが低いので取り扱いには注意が必要かと思います。使用上の注意は良く守ってください。

いかがでしたか?入れ歯洗浄剤の成分について疑問は解消できたでしょうか?少しでもお役に立てれば嬉しいです!
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