子供が乳歯から永久歯に生え変わる時期なんだけど…、なかなか抜けなくて、乳歯の外側に永久歯も生えてきて…。なにか歯に悪いところでもあるのかしら、歯医者さんに行った方がいいの?
幼稚園から小学生くらいのお子さんは歯が乳歯から永久歯に生え変わる時期ですよね。
順調に生え変わってくれたらいいのですが、時としてなかなか乳歯が抜けなかったり、抜けない乳歯の後ろから永久歯が生えてくることがあります。(専門用語で乳歯晩期残存といいます。)
このまま永久歯が生えてこないんじゃないか、何か異常でも・・と不安になるかもしれません。
しかし、適切な対応がわかれば不安もやわらぐかと思いますので、永久歯が抜けなくて不安になっている保護者の方々はこの記事を読んで参考にしていただければと思います。
乳歯が永久歯に生え変わる時期
そもそも乳歯が永久歯に生え変わる時期はいつ頃なのか、目安を表にしてみました。
乳歯が抜けなくて…と思っていらっしゃる方、その原因の一つは生え変わりの時期に来ていないからかもし
れません。
下に永久歯に生える時期の目安の表を記載しています。
永久歯は乳歯が抜けて生え変わるので、ほぼこれと同じか少し前の時期に抜けると思っていいでしょう。
見ていただいてお分かりいただけるかと思うのですが、歯が生えてくるのは個人差が大きく、歯の種類によっては個人差が2年ほど開いているものもあります。
ですので、お近くの同じ月齢のお子さんが歯が抜けているのにうちはまだ・・と思っても、それは個人差だった、という場合もあります。
乳歯が抜けない(乳歯晩期残存)理由とは?
では、時期的な原因以外で乳歯が抜けない理由はどのようなものがあるのでしょうか?よくある原因を挙げていきますね。
乳歯の根の下に永久歯がなく根が吸収されない
そもそも、乳歯はどうして時期が来たら抜けるのでしょうか?
この図は永久歯に生え変わる時の顎の断面図です。
乳歯が抜けた後に生える永久歯(後続永久歯)は抜ける乳歯の下にスタンバイしています。
時期が来たら、顎の下の方から今ある乳歯のところまで位置が上がってきます。(①)
永久歯が乳歯の根の先に来ると、乳歯の根の先は溶けて短くなってきます。(専門用語では根吸収と呼びます。)
永久歯の位置がどんどん上がってくると、根がどんどん溶けて短くなり、ついには支える所がなくなり、抜けるのです。
乳歯の根の吸収は乳歯の下に永久歯がある事によって起こります。
しかし、場合によっては永久歯が乳歯の根の下になく、少しずれた位置に生えてくる事があります。
このような場合、根の吸収が進まないことがあります。
例えば下の前歯、永久歯が乳歯より舌側に生えている場合、揺れずに残るなどが見られます。
乳歯の根が通常よりも湾曲していて抜けにくい位置関係になっている
また、乳歯の根の形が抜けにくさに影響する場合があります。
上のイラストの「D」と書いてある歯の根の先を見てみてください。
乳歯の大きい奥歯(臼歯)の根は永久歯より湾曲が大きく、細く長くなっています。
根の形にはバリエーションがありますが、時として永久歯の頭(歯冠)の部分をつかむような形に湾曲している場合があります。
このようになると、根が永久歯に挟まって、引っかかってしまっているような状態になって正常に根が吸収されず、抜けにくくなります。
乳歯の次に生えてくる永久歯がない
乳歯が揺れない原因に
「乳歯の次に生えてくる永久歯がない」ということも見られます。
乳歯の次に生えてくる永久歯が無い、ことを「先天欠損歯」と言います。
どれくらいの頻度かというと、
第三大臼歯を除く永久歯の先天性欠如者の発現頻度は10.09%であり,男子が9.13%,女子が10.98%であった。上顎では4.37%,下顎では7.58%に認められた。上顎および下顎における左右の頻度の差は0.11%,0.14%であり左右差は小さかった。歯種別では,下顎第二小臼歯(下の前から5番目)に最も多く認められ,次いで下顎側切歯(下の前から2番目),上顎第二小臼歯(上の前から5番目),上顎側切歯(上の前から2番め)の順であった。
(小児歯科学雑誌 2010 年 48 巻 1 号 p. 29-39「日本人小児の永久歯先天性欠如に関する疫学調査」より
と、永久歯がもともとない人はおよそ10%と、少なくは無い頻度で起こります。
乳歯の次に生えてくる永久歯がない場合、その歯は大人になっても抜けず、永久歯に代わりに使用することになります。
抜けない乳歯、どうすればいいの?
子供の歯は自然に抜けるもの、なのに、歯科医院に行ってもいいのかな?
と、歯科医院に行くのを躊躇している人もいるかもしれません。
しかし、抜けない理由や歯医者さんが抜いた方がいいかどうか、ということは歯医者さん以外はわからないことですので、抜けない・・・と思った場合はためらわずに歯医者さんに来てください。
乳歯が抜けない原因はどうやって診断するの?
乳歯には色々と抜ける原因がありますが、どのように診断するのでしょうか?
乳歯が抜けない場合、乳歯がどのような原因で抜けないのかを把握しておくことが大事です。
特に次に生えてくる永久歯(後続永久歯)があるかないかということは、抜けない乳歯を抜歯するか保存するかという点で大きく診療方針が変わってきます。
これを診断するには、レントゲン撮影(パノラマ撮影)が有効です。
歯科では「パノラマ」というレントゲンの撮影方法があり、この撮影方法では、顎の中の様子もよく見ることができます。
抜けない乳歯はどうするの?歯科医院での治療法
では、実際に抜けない乳歯に対して歯科医院で何を行うのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
グラグラしているけど抜けない乳歯の場合
グラグラしているけど、抜けない…こういう場合もありますよね。
グラグラしているけれども抜けない場合は、もう、乳歯の根っこは溶けて(吸収されて)いるけれども歯茎にくっついていて抜けないケースが多いです。
様子見で構いませんが、「噛んでいたい」など日常の生活に支障が出ていたら歯医者さんに行って抜いてもらいましょう。
このような場合は抜く時は歯茎から乳歯を引き剥がすだけなので、表面麻酔のみで注射の麻酔もいらない事が多いです。
抜くのには、鉗子(かんし)と呼ばれるペンチのような器具で抜きます
※写真は大人用なので、乳歯用はもっと小さい器具です。
あっという間に済むことが多いです。
グラグラしていない乳歯の場合
特にグラグラしていない乳歯の場合は、レントゲンの結果や、抜けた後、抜けたスペースが歯並びに影響しないかなどを検討した上、抜いたほうがいいと判断した場合抜歯処置を行います。
グラグラしていない場合は、根っこがしっかり残っており顎の骨ともくっついている場合が多いので、抜く時にしっかりと麻酔を効かせないと痛いので、表面麻酔 と 注射の麻酔(浸潤麻酔)をします。
表面麻酔
表面麻酔は、注射の麻酔をする時の針の「チクッ」とする感覚を無くすために行います。
針をさす部位に塗ってしばらく置いておくのですが、写真のように、味の付いている物が多く(写真の表面麻酔はバナナ味です)、不快感が無いように工夫されています。
注射の麻酔(浸潤麻酔)
表面麻酔がしっかり効いたら注射での麻酔を行います。
表面麻酔が聞いていたら針の「チクッ」とした痛みはかなり軽減されるはずです。
必要な部位に注射さえできれば後の抜歯は痛くありません。
抜歯
抜歯に使う器具はグラグラしている抜歯にも使う「鉗子」と、根っこが湾曲して引っかかって抜けない場合は、「タービン」という歯を削る機械を使って歯を抜きます。
(上の図、鉗子での抜歯 下の図、タービンを用いた治療:どちらもイメージです。)
抜歯の後は?
お薬は必要?
抜歯の後は、場合によるのですが、抗生物質と痛み止め(鎮痛剤)を処方される事があります。
抗生物質と痛み止めはどちらも小児用のものが使用されます。
子供の抜歯、次の日消毒は必要?
子供の抜歯は次の日消毒が必要ない場合も多いのですが、抜歯の後の穴が大きく、治っているかどうかの経過観察が必要な場合は消毒する場合もあります。
乳歯の抜歯の費用は?
費用は保険3割負担だったら、抜歯のみでしたら390円です。これにレントゲン撮影やお薬の費用がプラスされるともう少しかかってきます。
↓抜歯にかかる費用をまとめてみました。
乳歯を永久歯の代わりに使用する場合
乳歯の次に生えてくる永久歯が無いということがわかった場合は、「乳歯を永久歯の代わりに使う」ようにすることが多いです。これは、前から5番目の歯の場合が多いです。
その時は、乳歯が虫歯にならないようにケアをしながら長持ちさせる、という方法をとります。
しかし、乳歯は永久歯より根も短く弱いので、いずれは抜けてしまうと考えて置かなければいけません。
そうなったときは大人が失った歯を補う方法と同様に補う必要があります。
関連記事↓抜歯後の歯を補う方法について(ブリッジ、入れ歯、インプラント)
従来はこのような考え方が主流だったのですが、最近は「乳歯を抜き、矯正を行うことによって抜けた部分のスペースを詰める」という選択肢もあるようです。
この場合は矯正ですので、全額自己負担(自費)になります。
いかがでしたか?抜けない乳歯について、疑問は解決したでしょうか?少しでもお役に立てれば幸いです!
★★抜けた乳歯は乳歯ケースに保存するのもおもいでになっていいですね★★
治療とはあまり関係ないのですがあまりにいっぱい可愛いケースがあるので、個人的に「可愛い!」とおもうものをピックアップしてみました!
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