
歯学部ってどんな学部か、前回でどんなことを学ぶのかとか、入りやすさとか学費はわかったけど、実際入学したらどのような学生生活をおくるのか、やっぱりあんまりイメージできない・・・。

こんにちは!そんなあなたのために、今回は、歯学部でどんな学生生活を送るのか、学年ごとのカリキュラムにそってご説明していきたいと思います!
歯学部に入学してから卒業するまで、どんな勉強をするの?
↓シリーズ1回目、「歯学部ってどんな学部①何を学ぶの?学費・難易度・学生生活について」は以下のリンクから★

「歯学部ってどんな学部?」シリーズ2回めになります今回は、カリキュラムについてです。
歯学部って、実際にどんな授業や実習があるんだろう?患者さんの歯を実際に削ったりするのかな、と私も歯学部に入学する前は全然知らず、疑問でいっぱいでした。
入学を志している人もそうでない人も、私と同じような疑問を抱いている人も多いかと思います。
そこで今回、記憶を振り返りながら歯学部での授業、実習を中心とした6年間を振り返ってみたいと思います。
N=1のお話ではありますが、よろしければ歯学部生活をイメージする一助としてください!
1回、2回生・・・一般教養が主で歯科の概論が少し
晴れて入学して、はじめの1年は、どの学校もまずは「一般教養」と言われる、授業が大半を占めます。
「一般教養」とは、大学生が最低限身に付けておいてほしい基本的な知識を習得するための授業、ということで行われていますが、内容に関しては、結構高度です。
どんなものかというと、
第1外国語(英語)、第2外国語(ドイツ語、フランス語などなど)、統計学、解析学、力学、情報科学、人文科学、健康、スポーツ・・・
などなどです。
どれも高校から一歩進んだ内容だったので、理解するのに必死でした。
これらの授業の熱の入れ具合は大学によって異なるのでは?と思います。
ちなみに私の卒業した大学は一般教養の科目はガチに落としにかかる大学で、一般教養で留年生が続出するという、血も涙もない真面目な校風でした。
一般教養が大半の日々ですが、一週間に一回ほど、歯科学の序論の授業がありました。きっと、歯科に対してのモチベーションが下がらないようにするためなのでしょう。
たしかに何学部か一瞬忘れそうな日々です。
なんとか毎回出席し(何回か欠席するとテストが受けられない)、なんとかテストをクリアすると、歯学部の専門科目に進むことが出来ます。。
その時は、こんなに厳しいのはきっと一般教養だけだろう、と思っていたら、甘かった。。
2回生から3回生前半
2回生になったら、専門科目が始まります。
専門の中でも、まずは「基礎」の部分です。
歯学部でいうところの「基礎科目」ってどんな科目?
歯学部で専門とするのは歯と歯の周辺の組織、お口や顎などです。
ですので、「歯」だけでなく、歯の周辺の身体の仕組みについても学びます。それが「基礎科目」に当たります。
具体的には、生化学、生理学、組織学、解剖学、細菌学、病理学、薬理学、歯科理工学、
などがあります。
まずはこのような幅広い分野を学び、一通り学習した後、歯とお口周りに特化した項目も学びました。
「基礎科目」は座学だけでなく実習もあり!
これらの科目は座学だけでなく、実習や実験もみっちりありました。

印象深いものとしては「解剖実習」がありました。
歯学部はお口周りの事を診る歯科医師を養成する学部です。
お口の機能を理解するためには頭頸部の解剖に熟知しておかねばならないのはもちろんですし、
例えば口腔外科だと、がんで失った部分を他の部位で補わねばいけない(専門用語で皮弁と言います。)ので、手足の解剖についても詳しくなければいけません。
そのために、医学部でも行っているような、ご献体を解剖させて頂く実習も行います。

また、組織標本や歯などの「スケッチ」が多いのも印象的でした。
歯学部に入ってはじめに驚いたのは、「スケッチが多い」ということでした。(しかし、この時期以降はほとんどありませんでしたが。。)
組織学、という学問は、お口を構成する「組織」の正常な状態を知るための学問、病理学、というのはお口を構成する「組織」が異常になった状態を知る学問です。
最近のドラマなどで「病理医」がよく取り上げられていますが、そのドラマで出てくるような「組織標本」を顕微鏡でみて判断します。
実際に見ないとわからない分野ですし、見えている組織のことが本当に分かっているのかどうかを学ぶためにも、顕微鏡で見てひたすらスケッチする、という実習があるんです。

また、歯牙解剖学という授業の実習では「歯の形」のスケッチもありました。

そうそう、そういえば、石膏で歯の彫刻もしましたね・・。
こんな所でデッサン力を問われるとは思っていませんでした。。
苦手な人は苦手でしょうが、「上手い下手を競う」わけではありませんので、ポイントを押さえていさえすれば乗り越えられると思います。
と、このように、毎日スケッチ三昧かと思えば次は解剖三昧だったり、となかなか変化に飛んだ日々でした。
プレポリクリ(2回生秋冬)
このように2回生は歯科と近いような遠いような日々を過ごしていますが、
2回生の秋には「プレポリクリ」があります。
これは、数週間かけて附属病院で見学と実習を行うというものです。
一学年が何班かに分かれてローテーションして、病院内の診療科で見学&実習を行います。
実習は相互実習で血圧の測定や注射などです。
臨床はまだ遠い先、と思っていた頃の実習ですので、気が引き締まりました。
基礎配属実習(3回生 9月〜11月)
その後2回生後半になると、臨床の授業である、歯科衛生学や歯科予防学なども始まります。
そして、3回生の9月から11月にかけては基礎科目の総仕上げ、
「基礎配属実習」があります。
これは、今まで授業を受けた基礎科目の研究室のどこか1つに配属して、2ヶ月間研究を行うというものです。
大学の基礎研究の実際を肌で感じることが出来ます。
人によっては、その基礎配属実習で得られた研究成果をまとめて学会で発表、ということもありました。

基礎配属は自分が研究が好きかどうかを知るいいきっかけになるとおもいます。
基礎科目の試験は?
私の卒業した大学は、中間テストと期末テストで評価されていました。
一昔前だったということもあり、歯科医師国家試験については念頭に置かれておらず、それぞれの教室の先生がオリジナルの記述問題を出してくるので難渋しました。
オリジナルなので、過去問をどれだけ集められるかにかかっています。
とはいえ、対して人数もいないクラスなので、過去問を集めるのには苦労しなかったように思います。
これら基礎科目の試験を(ヘロヘロになりながら)受けました。
ここもガチで先生が落としにかかるので、クラスの6分の1がほどが入れ替わるという恐ろしい結果だったように思います。
3回生後半から4回生前半
やっとの思いで試験をパスすると、ここからは臨床専門科目になります。
はじめはメジャーな専門科目です。
呼び名は大学によって異なりますが、
クラウン・ブリッジ、義歯、保存、歯周病、口腔外科という科目をまずは習いました。
かんたんに説明すると
- クラウン・ブリッジ→被せ物について学ぶ
- 義歯(部分床義歯、全部床義歯)→入れ歯について学ぶ
- 保存(CR、インレー、根管治療)→詰め物や歯の根の治療について学ぶ
- 歯周病→歯周病について学ぶ
- 口腔外科→歯とお口周りに関しての外科について学ぶ
となります。
模型を使った実習(ファントーム)
これらの科目も座学だけではありません。
ファントームと言われる模型を使った実習があります。

分量的な印象としては、座学が5割、ファントームが5割、と言った感じです。
ここで初めて実際に歯を削る機械(タービン、コントラ)を用います。
歯を削る実習は、はじめは大きい模型を用い、ついで小さい模型、そして人がチェアに横たわっている姿を模した人形相手に歯を削りました。

うまくなるまで削るのかな、と思いきや、一通り習ったらおしまいでしたので、この学習量で次は人か?と思ったらビビりました。
(後で知りましたが、人で削る前に抜去歯牙などを用いて自主練など行いますのでご安心ください)

また、入れ歯の診療科の実習は、入れ歯を実際に作製しました。
部分入れ歯と総入れ歯を各1つずつ、これもなかなか手先の器用さが要求されるので、苦手な人は困るかもしれませんが、ライター(各班ごとに指導してくれる先生)に聞きまくるなどして乗り越えていきましょう。

総じてこの時期はとにかく学ぶ分量が多くとてもハードでした。
これらの専門科目は4回生の後半あたりで終了し、次の段階に上がれるかどうかの進級判定が行われます。
これらの専門科目のテストも結構キツイのですが、基礎科目ほどは落とされなかったように思います。
4回生後半から5回生前半
一旦メジャーな専門科目に一区切りが付き、次はそれ以外の専門科目です。
小児歯科、歯科放射学、歯科矯正、障害者歯科、検査、歯科麻酔などです。
これらも座学とファントームと両方ありましたが、ファントームの分量は前期に比べて控えめ。
次のフェーズである臨床実習の前の癒やしのひとときとなっていました。

また、これは座学なのですが、歯学部に必要が医学的な知識についても授業があります。
内科、外科、整形外科、隣接臨床医学(小児科、皮膚科、眼科、精神科、耳鼻咽喉科)などです。
この時に習った内容は多岐に渡り、たまに今でも話題になるとその時の知識が活用できるので、歯科医師免許の取得とは関係なく、「受けてて良かったなー」と思う授業です。
また、これらの授業は外から先生をお招きしての授業だったので、今までの授業と比べて比較的評価も厳しくなく、余裕を持って聞けたので、精神的にすこし楽な一時でした。
共用試験(CBT、OSCE)(5年生 8月)
このような癒やしの一時、の間に平行して行わなければならないことがあります。
共用試験(CBT,OSCE)の勉強です。
歯学部は5回生の後半から、「臨床実習」といって、実際に患者さんを治療させて頂くといった実習があります。
その実習に入る前に、実習にふさわしいだけの知識と患者さんへの対応ができるのか、ということを全国共通の試験で問われます。
それがCBT、OSCEです。
CBT、というのは、コンピューターを用いた試験で、今まで受けたすべての科目の内容が出されます。
OSCEは、患者さんに行う処置や説明を模擬的に行う試験です。
どちらもある一定の合格ラインをクリアしないと、次の臨床実習にはすすめません。
専門の問題集などを用いて各自勉強します。
これも、広範な範囲を苦労しながら覚えた記憶があります。
臨床実習(5回生後半)
夏休み前に試験を受け、めでたく合格を頂いたら、次は臨床実習です。
今まで修めた知識と経験を使って病院で実習します。
昔は実習中に親知らず10本抜いた・・とかあったようですが、現在は、見学がメインで、実際に患者さんに治療する数は減ってきているようです。
どのように実習するか、と言うと、
主に、
- 自分が配当された患者さんの治療を行う、
- 自分が行わなかったとしても指導医の先生についてアシストを行う
といった内容になります。
このように、各自自分の患者さんを追っかけていくので、基本自分で実習の予定を埋めていきます。
いろんな診療科で並行して患者さんを見ていくので、もんのすごくスケジュール管理が大変です。

この時期はとにかくスケジュール帳が手離せませんでした。
スケジュール管理が甘くダブルブッキングでもしようものなら、指導医にぶっ殺されます患者さんに迷惑がかかるし今まで行ってきた診療が認められません。
診療と診療の間も余裕を見ておかないと、前の診療が押したりして大変なことになります。
また、合間を縫って、病院内の仕事が「当番」として回ってくるので、これもこなすのが大変です。
そして診療時間が終了すると、そこから、治療計画やレポートを書いたり、指導医に口頭試問を受けたり、入れ歯や詰め物といった技工物を作製しないといけないので本当に多忙を極めました。
他病院の見学
この時期にはそろそろ進路も決めなければいけません。このまま大学に残るのか、他病院に行くのか。
この時期はみんな本当に悩む時期です。自分が何に興味があるのか、何になりたいのか・・・。
自分の大学で学びたいものがあるのか・・・。
仲間同士で話しても、聞くごとに変わってる、そんな時期です。
他病院に行きたい人は、このような忙しい時間の合間を縫って病院見学に行きます。
行って、また行った内容をみんなと情報共有して悩むんですよね・・・。
マッチング(6回生6月夏)
まだまだ臨床試験は続いていますが、どこで研修医を受けるのかは6回生の夏、秋頃には決めなければいけません。
決めるのには、マッチングという制度を利用します。
マッチング、とは、このシステムに登録した歯学部6回生と臨床研修先がお互いに第1希望、第2希望・・・と出していって、お互いの希望があったら採用される、といったシステムです。
6月に参加登録開始、7月後半に参加登録締め切りとなります。
この登録以外にも、それぞれ行きたい研修先とコンタクトを取り、面接や試験などを夏〜9月頃に受けます。

この試験勉強も地味に大変です。
そして、9月に希望順位を登録、10月1日に締め切り、10月22日にマッチング結果発表となります。
6回生後半
このようなスケジュールもこなしつつ、そしてもちろん国家試験の勉強もこなしつつ、6回生の秋頃から卒業試験が始まります。
大学や私の受けた時代にもよるのでしょうが、私の卒業した大学は本当に国家試験に考慮がなくて、診療科が好きに卒業試験問題を作成するので、国試勉強と卒試勉強の両立にめちゃめちゃ苦心しました。
やっとの思いで卒業試験が終わると、後は歯科医師国家試験に全力を尽くすのみです。

過去にいろんな試験を受けましたが、歯科医師国家試験をパスしなければいけないプレッシャーは群を抜いて強かったです。。
1日16時間くらいひたすら勉強してました。
そして2月に歯科医師国家試験を終え、3月末に卒業です。
これまた今までいろんな学校を卒業しましたが、こんなに卒業時に「やりきった感」を感じたことはありませんでした。
授業はハードだし、人生でこんなに日々追い込まれたことはありませんでした。
そのような厳しい日々でありながらクラスメイトにも恵まれ、キツイながらも楽しく充実した日々を送れたのも、歯学部に入学できたからだと思います。
今歯学部を卒業して何年も経ちますが、結構何があっても大丈夫と思えるのは、歯学部での生活(プラス研修医)を過ごしたからなんじゃないかと思っています。
世間の人は歯学部についてあれこれ憶測をしがちですが、私にとっては今後の人生を実りあるものにしてくれる経験を与えてくれた学部だと思っています。
これから歯学部生活を送る皆さん、送ろうかな、と考えている皆さん、そうでない皆さんにも、考考えている人がいるんだな、っていうことを知ってくださったら幸いです!
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