歯周病とアルツハイマー病
歯周病がアルツハイマー病に関係するってニュースを見たんだけれども…。どんな悪影響を及ぼすの?
そうなんです!
最近の研究結果(2019年)で、
- 歯周病菌がアルツハイマー病の方の脳から多く見つかっていること
- 歯周病菌が産生する毒素がアルツハイマー病のメカニズムと関連していること
が分かりました。
また、この研究では、歯周病から産生された毒素をブロックする物質を投与することにより、脳の神経細胞の減少を抑制することも分かりました。
今後研究を重ねていくことが必要ではありますが、歯周病がアルツハイマーの原因である、ということが明らかになるかもしれません。
今回はこの、「歯周病とアルツハイマー」との関係に関して説明していきますね!
歯周病原菌とアルツハイマー病との関係が「science advances (サイエンスアドバンシーズ)」に取り上げられる
歯周病原菌とアルツハイマー表との関係についての論文ですが、これは
サイエンスアドバンシーズ(Science advances) というオープンアクセスジャーナルで発表されました。
題名は
Porphyromonas gingivalis in Alzheimer’s disease brains: Evidence for disease causation and treatment with small-molecule inhibitors
です。
2019年の1月23日に掲載されています。
サイエンスアドバンシーズとは、生命科学、物理学、環境科学、数学、工学、情報科学、社会科学などあらゆる科学分野を取り扱う学術ジャーナルです。
姉妹誌に科学分野の雑誌で有名な(Science)があります。
Scienceは印刷されている雑誌なので掲載に限界があり、良質な論文なのに掲載しきれないという問題と、誰でも自由に閲覧できる場所に論文が掲載されてほしいというニーズにより設立されました。
インパクトファクター、という論文を図る指標では11.511ととても高い数値です。
(歯科関係の雑誌のインパクトファクターは3.58〜0.52くらいです。)
「オープンアクセス」というスタイルを取っており、インターネット上で、誰でも制限なしで自由に閲覧可能です。
アルツハイマー病ってどんな病気?
そもそも「アルツハイマー病」ってどのような病気なのでしょうか?
アルツハイマー病は、「認知症」の原因の一つです。
「認知症」というのは、「病気」を指すのではなく、
- 認識
- 記憶
- 判断
する力が何らかの原因で障害を受けて、社会生活に支障をきたす状態のことです。
「アルツハイマー病」では、脳の中にβアミロイドという蛋白が見られ、この蛋白がたまりだすことが病気の原因だと言われています。
「アルツハイマー病」になると、脳に「老人斑」と言われる染みができ、脳の神経細胞の萎縮、海馬の萎縮、脳の神経細胞の神経原繊維変化が見られます。
それに伴い、記憶障害、見当識障害などが出てきて、生活に支障が出てきます。いわゆる認知症の症状です。
また、進行していくと、身体的機能も障害されていきます。
進行のスピードは個人差があり、数年で身体的障害が出る人もいれば非常にゆっくりと進む人もいます。
アルツハイマー病には治療薬があり、
- ドネペジル(アリセプト® ドネペジル®)
- リバスチグミン(イクセロンパッチ® リバスタッチパッチ®)
- ガランタミン(レミニール®)
- メマンチン(メマリー®)
などが、アルツハイマーの進行度に合わせて使用されています。
今回わかったアルツハイマー病と関連する歯周病原菌は「ポルフィロモナスジンジバリス」
今回研究で明らかになったアルツハイマー病と関連のある歯周病原菌は
「ポルフィロモナスジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)」
と言います。
歯周病原菌には何種類かあるのですが、この「ポリフィロモナスジンジバリス」は慢性の歯周病で、最もよく見られる菌です。
グラム陰性菌という分類の菌で、空気を嫌うため、歯と歯茎の間の歯周ポケットでも、酸素が少ない深い部分(歯周ポケットの長さで言えば4mm以上)の部分に住み着いています。
この菌があることにより、歯周病は悪化し、悪臭を伴い、歯の抜ける原因になります。
なぜ、歯周病が悪化し、悪臭を伴い、歯の抜ける原因になるかというと。。。
この菌が餌にするのはタンパク質で、タンパク質や歯周組織を分解する酵素を放出し、歯茎の骨(歯周組織)を溶かすからです。
その為、タンパク質の代謝物のために悪臭が出て、歯がグラグラになり、抜けてしまう原因になります。
この、歯周組織に悪影響を及ぼす酵素は、ジンジパインと呼ばれています。
この歯周病菌とジンジパインが・・・
(以下論文の抜粋です。)
Porphyromonas gingivalis, the keystone pathogen in chronic periodontitis, was identified in the brain of Alzheimer’s disease patients. Toxic proteases from the bacterium called gingipains were also identified in the brain of Alzheimer’s patients, and levels correlated with tau and ubiquitin pathology.(慢性歯周病の病原菌であるポルフィロモナスジンジバリスがアルツハイマー病の患者の脳から見つかった。細菌由来のジンジパインと言われる毒性のあるプロテアーゼもタウ蛋白やユビキチン蛋白と量が相関して、アルツハイマー病の患者から見つかった。)
(訳は私が行ったので、拙い部分もありますがご容赦ください。)
- アルツハイマーの患者さんの脳から見つかり、
- ジンジパインは、タウ蛋白、やユビキチン蛋白、というアルツハイマー病に関連のあるタンパク質と量が比例して存在していることが見つかった
ということが明らかになったのです!
ここからはネズミを用いた実験なのですが、
- ネズミの口から感染させても脳でポルフィロモナスジンジバリスの感染が見つかり、脳でβアミロイドが増えている事が確認成功。
- ジンジパインは「タウ蛋白」という神経が正常に機能するために必要なタンパクに有害な作用を及ぼした。
ということも明らかになりました。
これらの結果をつなぎ合わせると、
口から感染した脳にポルフィロモナスジンジバリスが住み着いて、ポルフィロモナスジンジバリスの産生したジンジパインが神経を正常に動かすタウ蛋白を壊してしまい、アルツハイマーが起こる、というポルフィロモナスジンジパイン→アルツハイマーに影響、という道筋が示されたといえます。
本当に、ポルフィロモナスジンジバリスがアルツハイマーの原因だ、と言い切るには、もっと研究を重ねなければ行けないように思いますが、
ポルフィロモナスジンジバリスはアルツハイマー病に関連のあることはかなり濃厚に示唆されたのではと思います。
歯周病は歯科医院に行けば治療可能
(全身と歯周病の関係:臨床歯周病学会からお借りしました)
アルツハイマー病もそうですが、歯周病は、歯茎だけにとどまらず、破れた歯肉から血中に入ったり、直接身体の中に入って
- 脳梗塞
- 心筋梗塞
- 心内膜炎
- 動脈硬化
- 誤嚥性肺炎
- 糖尿病
- 低体重児出産
- 早産
など、深刻な身体の疾患を引き起こします。
しかし、知らない間に進んでいることが多いです。
自分が歯周病かもしれない、と思っている方はどれくらいいるのでしょうか?自分は違う、と思っている人のほうが多いというのが実情です。
でも、実は成人の80%が歯周病だというのは現状です。
歯周病のセルフチェックなどを利用して、一度自分が歯周病かどうかぜひチェックしてみることをおすすめします。
幸運なことに歯周病は歯科医院で治療できる病気です。
もしかして、と思う人はぜひ一度歯医者さんに行ってみてください。!
いかがでしたか?歯周病とアルツハイマー病の関係について、少しでも知識のお役に立てれば幸いです!
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