よくコマーシャルで「歯周病の歯磨き粉」って宣伝されているけれども、歯周病って歯磨きしたら治るの?
毎日のように「歯周病」のための歯磨き粉のコマーシャルがテレビで流れています。
歯周病に効果のある成分を使用しているのだったら、続けて使用すれば治るのでは・・
と思うかもしれませんが、
歯周病に効果のある歯磨き粉を使っても、その歯磨き粉で「歯周病を治す」ことは残念ながらできません。
では、歯周病の歯磨き粉はどのような効果を持つのでしょう?
今回は、歯周病の歯磨き粉の果たす約和英について、そもそも歯周病とは、歯周病の歯磨き粉に入っている有効成分や効果についてご説明していこうと思います!
歯周病とは?
よくコマーシャルで流れている「歯周病」という病気なのですが、どのような病気なのでしょうか?
歯周病とは、歯周病原菌が歯と歯茎の間の「歯周ポケット」という溝に住み着く事によって起こる病気です。
これは、歯の断面図です。歯の周りのピンクの部分が歯ぐき、白い部分が「歯槽骨(しそうこつ)」と言われる歯を支える骨です。
歯周病原菌が歯と歯ぐきの骨の間の隙間(歯周ポケットと言われています)に住み着くと、その周りの歯ぐきに炎症を引き起こします。
そのために、歯ぐきにはれや出血が起きます。これが歯周病の初期症状である「歯肉炎」の状態です。
「歯肉炎」の状態がずっと続くと、その炎症が骨にまで波及し、骨が溶けていきます。
この状態は、歯周病の進んだ状態である「歯周炎」です。
歯周炎を放置しておくと、そのまま骨がどんどん溶けていき、最終的に歯ぐきの骨が歯を支えられなくなってしまい、歯が抜けます。
これが歯周病です。
このイラストのように、健康な状態から徐々に進みます。
この病気の恐ろしいのは、歯ぐきの腫れや出血など不快な症状はあるものの、大きな痛みなどは感じず、気がついたら歯を抜くしかない状態になっているところが多いところです。
過去記事↓自分が歯周病かどうかセルフチェックできます。
このように、知らずに進行してしまうところが災いして、歯を失う原因の第一位でもあります。
でも、自分はきっと違うよ。グラグラしている歯なんてないし
と思っていても、
実は、日本の成人の80%が歯周病なので、自分とは関係のない話という人はほとんどいないのが現状です。
歯周病は原因を取りきらないと治らない。歯周病を治すためには歯科医院での歯周病の「正しい診断」と「治療」が必須
えーっ!ではどうしたら歯周病を治せるの?
歯周病を治すには、歯科医院で今の状況を正しく検査、診断してもらって、その上で治療を受ける必要があります。
歯周病はご説明したとおり、「歯周病原菌が歯と歯茎の隙間、いわゆる歯周ポケットの奥の方にとどまり、炎症を起こす」病気です。
根本的に治すには、歯周ポケットの奥に住む歯周病菌を掻き出して除去するしかありません。
正しく除去し、除去した後に治ったかどうかを判断するためにも、歯科医院での正しい検査と診断が必要不可欠です。
自分で歯周病原菌を駆除することってできないの?
と思われるかもしれませんが、ある程度(歯周ポケット3mm以上)進行した歯周病の場合は不可能です。
歯ぐきに悪さをしている歯周病菌の住む「歯周ポケット」は、健康な人で3ミリ未満、歯周病の人で3ミリ以上の深さです。その奥に歯周病原菌がいます。
また、菌は浮遊した状態で存在しているわけではなく、「バイオフィルム」や「歯石」といった、塊の状態で存在しており、ガチッと強固にくっついています。
歯科医院で除去する際でも「超音波スケーラー」といった超音波振動を利用した除去器を用いたり、「キュレット」と言った歯周ポケットに使用する特別な刃物を用いて除去します。
ですので、歯周ポケットの奥にいる歯周病原菌は、歯ブラシや薬などで自力でなんとかしようとしても、家庭での治療では絶対に取れません。
これらの治療を通じて、歯周病原菌を除去していくと、歯ぐきが引き締まり、歯周ポケットが浅くなり、歯周病が改善していきます。
歯周病の「予防」や「再びかからないようにするため」に一番効果的なのは「歯ぐきの縁の細菌の汚れ(縁上プラーク)」を除去すること
歯周病は歯医者さんに行って治療しないと治らないんだったら歯磨きは重要じゃないの?してもしなくても一緒?
いえいえ、そんなことはありません。
むしろ、歯科医院では、歯科医院での治療と同じくらい「歯磨き」を重要視しています。
何故かといえば、せっかく歯周ポケットの奥の歯周病原菌をきれいに取り除いても、歯磨きが不十分で日々のお口の汚れが取り切れず、歯と歯茎の境目に汚れ(プラーク)が溜まったままになっていると、
結局また歯周ポケットの奥に歯周病原菌が住み着き、再び歯周病になってしまうからです。
ですので、歯科医院では、歯周病の治療の一環として「TBI(Tooth brushing instruction)」と言われる歯磨き指導を絶対行います。
歯磨き指導によって歯ぐきの縁の汚れがきちんと取れるようになると、その部分の汚れによって生じた歯ぐきの腫れや赤みは解消します。
歯周病の軽度の状態の「歯肉炎」は顕著に改善します。
そして、歯磨きさえきちんとできていたら、今健康なところはずっと健康な状態をキープできます。
歯磨きは「歯周病の予防」にとても効果的なのです。
ですので歯周病の治療では、今後も再発防止や予防のためには「歯磨き」はとても重要視しているんです。
歯周病には歯磨きは不可欠。歯周病の歯磨き粉には「歯周病の予防」をするための機能を持つ成分が配合されている。
ここまでのお話をまとめますと。。
「歯周病」と「歯磨き」というのは
- 歯磨きだけでは、歯周病を治すことができない。
- 歯磨きは歯周病の再発防止と予防には必要不可欠
という関係なんです。
「歯周病の歯磨き粉」は決して歯周病を治療するものではない。
ですので、「歯磨き」を助ける「歯磨き粉」は「歯周病の薬」ではなく、治療をする効果は持ちません。
(過去記事↓市販の「歯槽膿漏薬」も決して歯周病を根本的に治療するものではありません!)
「歯周病の歯磨き粉」は「歯周病の予防」を行う手助けをする成分が配合されている
では、歯周病の歯磨き粉は何に有効なのでしょうか?
歯周病の歯磨き粉は「歯周病の予防」が有効にできるように成分を配合して設計されています。
歯周病での歯磨きは、歯と歯ぐきのきわに汚れがたまらないようにする事が重要です。
歯と歯茎のきわの汚れはプラークと言われ、細菌の塊なので、細菌の増殖を抑えるための成分が入っています。
これは、あるメーカーが示した結果なのですが、
からお借りしました。
歯周病に効果のある成分を配合した歯周病予防の歯磨き(液体歯磨き)を3ヶ月使用した人と配合されていない歯磨き(液体歯磨き)を3ヶ月使用した人を比較すると、
成分を配合した人のほうが、プラークがつきにくく、歯ぐきの腫れも収まっています。
このように、プラークが溜まりにくく、歯ぐきが腫れにくい成分の手助けを借りて、同じ磨くのであればより歯周病になりにくい状態になるように作られているのが歯周病予防の歯磨き粉です。
「歯周病の予防」の歯磨き粉に入っている薬用成分
「歯周病予防」の歯磨き粉に入っている薬用成分は分類すると
- 殺菌剤
- 抗炎症剤
- 収れん剤
- 止血剤
以上の4つです。歯周病のもとである菌を抑制する成分に加えて、歯周病に伴う炎症、歯茎の腫れ、出血など諸症状の緩和をもたらす成分も歯周病予防の歯磨きには配合されています。
殺菌剤
殺菌剤で配合されているのは以下のものです。
- 塩化セチルピリジニウム
- 塩化ベンゼトニウム
- クロルヘキシジン
- チモール
- イソプロピルメチルアルコール
- トリクロサン
塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジンは浮遊菌に効果があります。クロルヘキシジンや塩化セチルピリジニウムは歯面に付着する事により歯の表面の抗菌作用に一役買っています。
クロルヘキシジンは以前は効果の高い抗菌作用を持っていたのですが、アナフィラキシーが生じ、お口の中で使用できる濃度がとても低くなったので、今は抗菌作用としてはあまり強くありません。
チモール、イソプロピルメチルアルコールはバイオフィルムの中にも浸透する効果があります。
抗炎症剤
歯周病で生じる歯ぐきの炎症を抑える作用です。以下のようなものがあります。
- βーグリチルリチン酸
- グリチルリチン酸
- アミノカプロン酸
- 塩化リゾチーム
- サリチルメチル酸
- シネオール
収れん剤
歯ぐきを引き締める効果があります。塩化ナトリウム
止血剤
トラネキサム酸
歯ぐきの腫れ、炎症、出血に関しては、原因はプラークなので、結局のところそれに対応する薬効成分が補補助的なものなのかな・・と思います。
各メーカーの歯周病予防歯磨き粉
歯周病歯磨き粉に関しては各メーカーが販売しています。
今のところ、私が調べて&使用してみてよかったものについて挙げて行こうと思います。
まだまだ知らない製品もあると思いますので、今後もアップデートしていきたいと思います。
Gumデンタルリンス
サンスターはCPCの配合が得意(CPCは配合が難しい成分なので、うまく処方しないと効果を発揮しません)なのと、先程挙げたデータなど、臨床試験で結果を出しているので信頼性が高いです。(私の中では)
薬効成分はペーストの歯磨きより液体に配合するほうが効果が高いので、薬効を期待するのであれば、デンタルリンスを口に含んで歯磨き、もしくは歯磨きしたあと口に含むと言った用法で行うと良いと思います。
泡が出ないので、ブラッシングもしやすいです。
アルコールタイプは刺激が強いので、合わない方はガム デンタルリンス ノンアルコールもあります。
Gum歯周プロケアペースト
液体歯磨きは効果は高いのですが、難点としては、長期間液体歯磨きのみを使用すると、研磨剤が配合されていないので、歯面が着色します。
ですので、ペーストの歯磨きも使用するほうが良いかと思います。
また、この歯磨きの利点はフッ素も高濃度配合されている点です。
歯周病の方は歯の根っこが露出し、虫歯になりやすい状態になっていますので、高濃度のフッ素を使用して虫歯予防も重ねて行えるのは魅力です。
(関連記事↓大人の虫歯とフッ素が効果的です)
リステリンハグキケア
リステリンはジョンソンエンドジョンソンの商品で海外では昔から使用されています。
1,8-シネオール、チモール、サリチル酸メチル、ℓ-メントール
といった独自の香料の組み合わせで歯肉へのプラーク付着や炎症を抑えるというデータを昔から取っているので定評があります。
しかし、かなり刺激が強いです。
システマSP−T ジェル
SP-Tジェルはイソプロピルメチルアルコール(IPMP)を抗菌剤としています。ジェル状の材形で発泡は少なく、歯科医院で行うブラッシング指導にとても使用しやすい歯磨きジェルです。
追記1:「歯周病の予防」の歯磨き粉が効果を発揮するのはあくまで歯科医院で適切な歯周病の治療を行ったとき
大事なので最後にもう一度繰り返しますが、いくら歯磨き粉の性能が高くても、
歯磨き粉だけでは歯磨き粉だけでは絶対に歯周病は良くなりません。
しかし、歯科医院に行って、適切な治療を行って、ブラッシング治療を受けると、歯磨きの効果が確実にアップします。
ですので、みなさんぜひ歯科医院に行って今のお口の状態を把握し、それを踏まえて日々の歯磨きをよりブラッシュアップしてくださいね!
追記2★おすすめの歯ブラシ
私は歯ブラシの性能も歯磨きの出来に左右する、とおもっていますので、一緒にご紹介させていただいています★
バトラー#217
(小さめヘッドは#117)
歯ブラシでおススメと言えば最近はこれです。PTTブレンド毛+ウルトラテーパー毛、というあまりない組わせです。腰があるのにすべすべとしたさわり心地で歯ぐきの痛い方にも優しいです。
テペセレクトコンパクト
TEPEも本場北欧で最も使用されている歯ブラシで、密度の高く使用感の良い毛束です。
CURAPROX(キュラクロップス)
最近日本でも販売され始めました。植毛が5460本と見たことないくらいの本数です。歯ぐきに当てた感じ、「何かで拭き取っているのか?」と思うくらいみっちり当たっている感覚があります。
あまり強い力で磨くことを想定していないので、力のコントロールは注意しないといけなさそうです。
持ち手が八角形で日本のスタンダードの形ではありませんが、持ちやすく、細かい角度で動かしやすいです。
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